大 日 乃 光

平成23年10月21日1992号
貫主権大僧正様御親教
(10月13日御法話より)

御本尊様の慈悲のお光に溢れる
奥之院大祭

『祈りの力 行動する智慧』への
嬉しい書評

 今回は十一月大祭の直前ですが、たいへん嬉しいことがありましたので、その事をお伝えいたします。

 それは、六年前に運命的に巡り会った東京工業大学の准教授で文化人類学者の上田紀行先生に、南大門の落慶記念に発刊した『祈りの力 行動する智慧』(春秋社刊)の書評を書いて頂いたことです。その書評は、去る十月二日に地元紙の『熊本日日新聞』と、真言宗の機関紙『六大新報』の十月五日号に掲載されました。その全文を別掲(裏面)に紹介いたします。

上田先生とのご縁繋ぎは
国際協力の大先達

 上田先生との交流のきっかけは、まず八年前に上田先生が書かれた『頑張れ仏教―お寺ルネサンスの時代』(NHKブックス/平成十六年刊)という著書を通じてでした。

 その中に、佛教者が行う国際協力のあり方を、私に教示して頂いた、故有馬実成先生のことが著されていました。上田先生は有馬先生をはじめ、幾人かの先進的な活動を行なわれている僧侶の方々との出会いから、現代における佛教の可能性と佛教思想の深さや、社会との関わりについて、文化人類学者として大いに啓発されるものがあったようです。

 私が初めて上田先生ご本人と巡り会ったのは、ダライ・ラマ法王猊下を成田空港までお見送りに行ったその日でした。それは私にとって、決して忘れることの出来ない日となりました。

宗派を 超えて広がる同志の輪

その後、上田先生が主催されている「佛教ルネッサンス塾」にも何度か参加し、意識の高い僧侶の方々との出会いもありました。

 三年前の五月二十四日には、上田先生の励ましとご協力を得て「宗派を超えてチベットの平和を祈念し行動する僧侶・在家の会」(略称「スーパーサンガ」)の設立に至りました。こうして、これまでにない行動力と高い意識を持つ僧侶の方々と、宗派を超えた同志となりました。

 三年前の十一月大祭には、他の宗派の仲間の僧侶が何人も参加して下さり、南大門の落慶法要にも何人もの同志が駆けつけて下さったのでした。

 また五年前には、ダライ・ラマ法王猊下の深い思いやチベット人の窮状を、日本の僧侶の方々にもっと知って頂きたくて、上田先生にダライ・ラマ法王猊下と対談して頂いて、先の『頑張れ仏教』のような本にしてもらいたいと思っていました。その思いを実現するために、上田先生と一緒に法王猊下に拝謁しました。その結果が『目覚めよ仏教!―ダライ・ラマとの対話―』となって、四年前に出版されました。

仕事への誇りと使命感が
充実と生き甲斐を生む

 上田先生は、数年前から佛教各宗派の研修会に、よく講師として招かれるようになられました。そんな中で、別掲の書評の冒頭部分のような、意識のあまり高くない僧侶の実態に、ある部分では失望しておられます。

 その原因は、そのような僧侶の多くが自分の仕事に誇りと使命感を持っていないからではないでしょうか。職種が何であれ、仕事に誇りと使命感を持っている人は、自ずと仕事に対する工夫をし、努力もします。しかし、その仕事が好きではない場合は、単なる生活の糧を得るための手段になってしまうでしょう。家業としての仕事を継いだ人も、そうでない人も、その仕事(ここでは僧侶としての修行と社会浄化)に全身全霊を傾けていけば、必ず生き甲斐や達成感などを得られるはずです。

真剣な祈りが生み出す行動は
皇円大菩薩様のお導き

 前段の、現代の僧侶に対する上田先生の批判はさておき、著書への評価の部分は、著者である私としてはあまりに高すぎる評価でした。何とも面映い限りです。

 文章自体は全て、かつて『大日新聞』に私自身が書いてきた内容ですから、別段驚くことではありませんが、「この思想と行動のあり方は、社会と仏教を結ぶ曼荼羅とも言えるものだ。活動一つ一つの小世界が大きな現実世界と精神世界に対応しており、…中略…そしてその曼荼羅の向こう側から、慈悲と利他という大きな光が照らされていることに、私たちは気づかされるのである…後略」と、何とも想定以上に大きなスケールの評価には気恥ずかしい限りでした。

 しかし、これを私自身への評価としてではなく、私を動かしながら私を使って社会との関わりを持たせて頂いている、御本尊皇円大菩薩様そのお方への評価として読む時、 「ああ…そうだったのか。皇円大菩薩様はこのように社会や世界との関わり方をせよと、上田先生の表現を通じて私に教えて頂いているのだ…」との考えに至った時、私の心からは気恥ずかしさが消え、さらなる使命感が涌き出してきました。そして本誌を『大日乃光』と改められた意味を、改めて深く悟ることができたのでした。

皇円大菩薩様の御霊導が育む
蓮華院信仰の使命

 本誌と蓮華院、そして私自身の使命は「慈悲と利他の大きな光」を発しておられる皇円大菩薩様のお働きを具体的に信者の皆さんと社会に対して実践することであると、改めて気づかされたのでした。

 来たる十一月三日の大祭も、まさに皇円大菩薩様の「慈悲のお光」を、一人でも多くの信者の皆さんが実感して頂き、その体と心と唱えるお経の中で、しっかりと受けとって頂ける大祭にしたいものです。合掌

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