全国将棋寺子屋合宿

『笑顔の「ただいま!」』

(将棋の里玉名実行委員会事務局 石原)

 去る7月25日から27日までの二泊三日に亘って当山の奥之院で、第7回全国将棋寺子屋合宿が行われました。

 全国から集まる子供達の数は71人、遠くは新潟や栃木からの参加もあり、講師の先生方が10人、関係者や裏方を含めると100人を越える人達が一堂に会し、研修場となった奥之院の信徒会館は、終日子供達の声が聞こえていました。

 合宿はちょうど台風9号と11号の間隙を縫って行われ、集まる人帰る人の交通機関の心配をしながら、準備・後片づけをしていましたが、御佛様のお計らいで何の支障もなく無事に終えることが出来ました。

 先日、合宿の事務整理をしていますと、今回参加の親御さんから次のような手紙をいただきました。

「拝啓、
 将棋寺子屋合宿の折には、住職様はじめ皆々様に大変お世話になりました。本当に感謝しております。
 『ただいま!』と、とても元気に、そしてすてきな笑顔で帰って来た時、『あーいい経験して来たのだな』と感じました。
 その後は、『住職様からこんなお話を聞いたよ。こんな事あったよ…』等々、話は尽きませんでした。食事をいただく事からはじまり、親がしっかりと躾をしなくてはならないのにお恥ずかしい限りでございます。
 良き出会いお導きに感謝をし、筆を置かせていただきます。
                                      かしこ」

 合宿の主旨からすると「将棋を覚えたい」、「強くなりたい」、更には未来の大名人を育てるための子供たちのための勉強ですが、ただ単に強ければいいと言うのではなく、一人の人間としての躾や精神修養も視野に入れた合宿です。

 三度の食事の際には必ず膳の上にある命に感謝して、心を込めて「いただきます」と、食事の作法を行います。これは、米一粒・魚・肉・野菜などの命をいただいて、私達が生きる糧としていることに感謝をする為です。

 おじいちゃん・おばあちゃんたちと一緒に三世代が生活をしていた時代は、そうした躾を自然に受けることが出来ていましたが、今は子供に教える側の親の方も知らない人が多いように見受けられます。

 地道ではありますが、こうした夏の全国将棋寺子屋合宿や春の一休さん修行会で育った子供達が、「お母さん、昨日はこんなことを習ったよ」と、一家団らんの食卓で会話があった事に喜びを感じました。

 合宿三日目の朝、五重塔四層の子供達の坐禅修行の中に、佐藤康光王将、藤原直哉六段、山崎隆之五段らのお顔がありました。プロの先生方はどちらかと言えば夜型の生活で、早朝の坐禅はとても無理なはずなのに、何かを期しての挑戦だとお見うけ致しました。

 そして驚いた事に、自ら進んで合掌をして警策(けいさく)を肩にパシッパシッと受けておられました。将棋盤という小宇宙の中で最善手を探すプロの根性を垣間見る思いがしました。

 佐藤王将の講演の中で、「将棋は、白い画用紙に線を自由に画くことが出来る」とお話しされていました。子供達を何もそまっていない真っ白いキャンバスだとすると、食事の作法や言葉使い、はきものをそろえるといった、人としての躾を少しばかり手助けをして、子供たち自身が色を付けていき、一枚の立派な絵画になれば私達の裏方としての役割も意義あるものとなるでしょう。

日本将棋連盟玉名支部道場

第7回全国将棋寺子屋合宿写真集1

第7回全国将棋寺子屋合宿写真集2

日本将棋連盟ホームページ