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大日乃光






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2017年10月19日大日乃光第2190号
大相撲との深い縁に結ばれた 奥之院大祭「柴燈大護摩祈祷」

「お陰様」は世界に広めたい美しい日本語
 
奥之院大祭を前に、すっかり秋も深まってまいりました。全国の信者の皆さんには、いかがお過ごしでしょうか?先日の中秋の名月(十月四日、満月は六日)をご覧になったでしょうか?
 
私達は月の事を「お月様」と言いますが、月や太陽に「お」を付けて、さらに「様」まで付けて大切に呼ぶ民族は私達日本人以外に果たして世界中にいるのでしょうか?
 
さらに言えば「お陰様」という言い方も、たいへん奥の深い言葉だと思います。良い時も悪い時にも、何か「お陰」としか言えない不思議なお恵みに守られている事への感謝の思いの詰まった素晴らしい日本語だと思います。
 
かつてノーベル平和賞を受賞されたケニア人女性の故ワンガリ・マータイさんが世界に広めて下さった「もったいない」に続けて、この「お陰様」も私達日本人の力で世界の人々に広めたい素晴らしい言葉だと思います。
 
さて、名月にお供えをしてその光を受けながら愛でるお月見は、収穫への感謝と共に天地自然への感謝の思いを形に表す、私達の遠い遠いご先祖様から引き継いだ素晴らしい催しだと思います。
 
大祭前行の「功徳行」で信者と共に満月に浸りたい
 
月と言えば、私は日食と月食に合わせて「求聞持行」という修行をこれまで九回行いました。第一回目は先代の遷化以来三年間の籠山が明けた平成七年に、虚空蔵菩薩をご本尊として百日間で修し、以来三回、「虚空蔵菩薩求聞持行」を伝統的な作法で修行しました。
 
その後は三回の求聞時行の中で授かった「皇円大菩薩求聞持行」を続けました。その中で月食に合わせて修した時、地球と重なって赤銅色に輝く皆既月食の、得も言われぬ光に包まれた時の感動は今でも忘れられません。
 
独特な色の月の光が全身を照らし、私の細胞の隙間を縫って体の中に入ってくるような感覚の中で、自分自身がその月と一体になったような恍惚とした感動に全身が満たされていたのが、つい最近のようにありありと思い起こされます。
 
さて、今年は奥之院大祭の翌日が満月となる予定です。皆さんと修する大祭の前行としての功徳行の中で、五重の御堂の最上階の回廊から煌々と輝く十三夜の月を拝むことが出来ることでしょう。功徳行を終えた清々しさの中で、一人でも多くの全国の信者の皆さんと共に、このお月様の光に身を浸したいものです。
 
横綱稀勢の里関の師匠、故鳴戸親方との深い深い縁
 
今年の大祭には、十九年ぶりの日本出身の横綱、稀勢の里関が参詣されます。思えば昭和五十四年に力士として初めて当山に参詣された、元横綱の故隆の里関の直弟子が稀勢の里関です。
 
師匠の隆の里関は、初めて当山に参詣された時、その頃の番付は関脇でしたが、先代の真如大僧正様から「貴方は必ず横綱になれる!」との励ましを受けていたのです。その後、ご本人が「その頃限界を感じていた私が、あの励ましのお陰で更に精進することが出来、遂にはあのお言葉通りに横綱になれました。私の恩人です!」と何度も話しておられました。
 
その後、鳴戸親方を襲名された頃、先代から「私の寺の庫裡(本院の信者会館)を総青森ヒバにして、これから建立する五重塔も青森ヒバで造る予定です。貴方は青森出身でもあるので、稽古場にはこの素晴らしい青森ヒバを使ってはどうですか?」と話しておられました。
 
その後、鳴戸部屋の部屋開きに先代の名代として私が出席した時、まさにあの青森ヒバの香りの立ち込める中で土俵開きが執り行われました。新横綱稀勢の里も大関高安も、彼らの親方田子の浦親方も、この青森ヒバの香りの中で稽古に励んだのです。
 
また、鳴戸親方は私と同い年でもあり、多くの親方の中で殊更近しくお付き合いをさせて頂きましたので、今年の奉納土俵入りには感慨無量のものがあります。
 
熊本玉名の奥之院大祭に横綱土俵入りを奉納頂く意義
 
そもそも奥之院開創法要での奉納土俵入りは、原則として九州場所前にその年に昇進された新横綱に土俵入りして頂く事になっています。しかし、この十年ほど新横綱が二人しか出ていませんので、この原則通りになっていませんでした。そんな中で久々の日本出身の新横綱に横綱土俵入りを奉納して頂く事は誠に目出度く、有り難いことであります。
 
横綱の土俵入りの作法は現在「雲龍型」と「不知火型」で行われています。雲龍関は現在の福岡県柳川市の出身で、不知火関は現在の熊本県菊池郡大津町の出身です。加えて三十一年前まで横綱に免状を出し、土俵入りの作法などを伝授していたのは、「相撲の神様」と謳われた熊本の吉田司家でありました。
 
そもそも横綱の廻しには御幣が付けられている事からも想像できるように、横綱は人間の力士が神様になることなのです。吉田司家は八百年前に後鳥羽天皇から相撲に関わる全権を委ねられ、京都で朝廷の神事、節会相撲の行事官を務めていました。その後、四百年ほど前に細川家の招聘で熊本に移転して来ました。
 
吉田司家の当主が神官として神道の作法を伝授し、免状を与える事によって正式な横綱になれたのです。因みに最後にこの吉田司家から免状を受けた横綱が、先の隆の里関なのであります。
 
しかし残念ながら、何らかの理由でこの伝統は途絶えてしまいました。そんな中で長年日本相撲協会からも慣例として認められている奥之院での「奉納土俵入り」は、九州・熊本と大相撲のご縁を繋ぐ大切な役割を担っているということも出来るのです。その意味でも新横綱が九州場所の前にここ熊本玉名で横綱土俵入りを奉納されるのは、歴史に基づく必然と思っております。
 
「強い横綱が活躍すると社会は安定し、発展する」と昔から言われてきました。国難の時代と言われる現在の日本で、十九年ぶりに日本出身の新横綱が出て、しかも古来の歴史に習って土俵入りを奉納して頂くことは私達日本人に力と勇気を与えてくれるに違いありません。これを良き機会と受け止めて、しっかりと国難に立ち向かう覚悟を皆で持ちましょう。
 
この横綱一行が開創法要、詩碑除幕式、柴燈大護摩祈祷と参列される事は、神道と佛教が共同して国家の安泰と世界の平和、加えて全国の信者の皆さんの家内安全、開運長久、諸願成就などに大きな力となるに違いありません。
 
十一月三日は柴燈大護摩道場で新横綱と共に熱祷を捧げよう
 
本大祭で最も多くの方々が参列される柴燈大護摩祈祷こそ、古代の伝統的な日本人の宗教である神道と、佛教の高度に発展した護摩祈祷が絶妙に融合した、日本独特な祈祷法であります。
 
昭和五十三年の開創大法要以来、一度も欠かす事なく、この柴燈大護摩祈祷は続けてまいりました。柴燈大護摩道場は、これまで何十万人もの人々が熱い願いを込めてきた浄地であります。この同じ道場で横綱稀勢の里関が五穀豊穣、国家安泰の意を込めて、横綱土俵入りを奉納して下さいます。
 
一人でも多くの信者の皆さんが、更に友人や知人の方々と共にお参りされる事を切に念願いたします。そして一人でも多くの人々が日本国家の安泰と世界平和の祈りと合わせて、お一人お一人の願いを叶えて下さい。 合掌




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