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2018年03月08日大日乃光第2202号
子や孫達に地域と日本の未来を託す家庭教育を高めよう!!

維新の元勲を生み出した二つの教育の仕組み
 
一番寒い時期を過ぎて、これから日に日に暖かくなってまいります。そんな中、本日(二月二十三日)は皇太子殿下の誕生日ですから再来年は天皇誕生日になるという事で、準ご縁日が祭日になるのは非常に有り難い事です。
 
一方で十二月二十三日が現在は天皇誕生日ですので、平成七年からは、その日に合わせて八千枚護摩行を結願するように修してまいりました。二十三日が祭日でなくなったらどうしようかと思っているところであります。
 
さてほとんどの日本人は関心をなくしていますが、昨日は「竹島の日」でした。その同じ日が「世界友情の日」となっています。主旨は全く違いますが、「竹島の日」があまり知られていないように「世界友情の日」もあまり知られていません。
 
「世界友情の日」は、国境を越えて世界の人々と手をつないで平和で明るい社会を作る日とされています。健やかな子どもを育成する世界的な社会教育運動とされるボーイスカウトの創始者ベーデン・パウエル卿の誕生日に因み、一九六三年のボーイスカウト世界会議で二月二十二日に制定されました。
 
かつて百五十五年前にイギリスと薩摩が戦いました。薩英戦争です。明治維新以前の話です。結果はイギリスの勝利で薩摩が賠償金を支払い講和となりました。しかしイギリスは「薩摩はなんて強いのだ。あんな武器でよく戦うな」と、薩摩について研究する事になりその中で「郷中教育」を知ったそうです。
 
今NHK大河ドラマで『せごどん』をやっていますが、西郷隆盛や大久保利通、それに大山巖など、そういう人達は皆同じ地域で育ちました。玉名で言えば「築地下区」みたいなものです。
 
狭い範囲の中で子供達が成長して行き、「わかにせ」と言って次の子供達の世話をする。相撲をしたり勉強を教えたりする。そういう仕組みが薩摩ではずっと続いていたわけです。それをイギリスの人達が知って考案したのがボーイスカウトであるという説を、かつて私は人から何かで読んだことがありました。(この説を調べてみると、史実ではなかったようです)
 
日本の教育制度である鹿児島の「郷中教育」が世界のボーイスカウトに影響を及ぼしていたわけではありませんでしたが、郷中教育の価値が下がるわけではありません。
 
今の日本にはそういう仕組みがほとんどありません。今は同年代としか遊ばないようです。おそらく兄弟姉妹の少ない家庭においては、ますますそういう関係は必要ではないかと思います。そういった意味では、かつて先代が子供会活動などを熱心にやっていた事は非常に意味があったと思います。
 
もう一つ、長州藩で偉人を多く輩出した吉田松陰の松下村塾は、そこから錚々たる人物が出ていますので注目されています。これはそもそも中心となる人物がいて、熱烈な理念を子供達に植え付けていった。これが長州の偉人を沢山生み出した原動力になった事は間違いありません。
 
私は日本の将来の事を考えた時に、過去に素晴らしい実績を出した郷中教育と松下村塾を、もう一回見直してみる必要があるのではないかと思っています。
 
子どもは地域の宝だった
 
私は時々家内をデイケアに送って行きます。その送る朝の事です。途中で二つの小学校の側を通るのですが、子供達が集団登校しています。五人とか十人くらいで、まさに隣近所の子供達が年齢もバラバラにお兄ちゃんやお姉ちゃんと小さい子が並んで行く姿を見て、「将来この子達が日本を背負っていくんだな」としみじみと思います。
 
ですからそれを見る度に、「今日も元気でね」と声をかけるのです。大体皆応えてくれます。家内は言葉が出ない代わりに「にこっ」と笑って手を振ります。ちょうど皇后陛下が車内から手を振られるような感じです(笑)。子供達はあの二人は何だろうかと思っているかも分かりませんし、顔を覚えてくれているかも分かりませんが、週に三日四日すれ違います。
 
今私達の周りにいる子供達を、かつては「子宝」と言ってきました。それこそ隣近所のおじさんやおばさん達も子供達を大事に見守り、時には叱りました。昔は「地域の子供」「自分達の子宝」という感覚が、地方にははっきりあったと思います。そういうのが最近は非常に薄れてきています。
 
子供を見守るための仕組みとしてPTAなどはありますが、子供のいない人や子育ての終わった人が、次の世代の子供達を地域で見守る眼差しというものが、今とても必要だと思います。
 
一篤志家が育てた金メダリスト
 
今回のオリンピックではいくつも感動しました。皆さんも感動したでしょう。今日もカーリングを楽しみたいと思いますが、まさにカーリングの選手は「村」の人達です。小さな地域で切磋琢磨し、周りの人びとが支援してオリンピックに出るという、一つの地域による教育力の結晶なのかもしれません。
 
見守るという事では、あるお医者さんはスピードスケート女子五百メートルで金メダルをとった小平奈緒さんのスポンサーとして、年間一千万円ほどを援助してきたそうです。そのお陰で彼女は存分に海外研修が出来て、実業団にも所属せずに、県内の大学のリンクを使いながら研鑽を積む事が出来たという話を聞きました。
 
今の世の中にも志のある篤志家がまだまだおられるという事を知り、嬉しくなりました。貧富の格差がさらに拡がりつつある現状を思えばなおさらの事です。
 
地域の企業ではなくても、そういう人達はかつては結構おられました。優秀な子供を村の皆で育てようとして、その代表として村のお金持ちがお金を出しました。日本各地の村々に奨学金を出してきた人が沢山いたのです。そういう仕組みがかつてはありました。私達はそれを辛うじて知っています。
 
「真如基金」第一号奨学生の今
 
蓮華院の「真如基金」を、今後どのように活用して行くのか、まだ明確な方向が出ていません。出来たら立派な僧侶になる人を育てたい、立派な宗教活動の出来る人を育てたいと、それを中心に考えていますが、それだけでいいのだろうか…。資金は無限にあるわけではありませんが、なんらかの形で次の世代を見守り、資金的に応援して行くものにしたいのです。
 
ここ数年、「真如基金」から支援している人が一人います。その青年は現在インドで研究をしています。彼は自分で様々な奨学金を獲得するので、これまであまり資金を出さなくて済んでいるのです。
 
現在は博士課程ですが、彼には「あと二、三年で博士号をとりなさい」と、私はプレッシャーをかけています。若い頃に博士号をとった方が、その後の人生が遥かに変わるから、何を措いても博士論文を書いて博士号をとりなさいと励ましているところです。
 
真如基金はそれほど大々的に呼びかけてはいません。国際協力のように毎月二回食事を断って「一食布施」をするとか、毎回ここでお供えとは別に「慈悲行」として募金頂いている、そういう形ではやっていません。
 
ほとんどが先代の御葬儀とか初七日、一周忌、三回忌などそういう時に頂いたものを全部集めたものが基金の基礎になっています。そこにお寺から少しずつ足して充実させていきたいと思っています。
 
今インドに行っているその青年は、男三人兄弟の末っ子です。兄弟皆、大学に入る前に本院で「内観」をしています。ご両親が熱心な信者さんなので小さい頃から「龍火くだり」にも来ていました。そのご両親の特別指導の時、私はこう言ったのです。「あなた達には三人息子がいるので、一人お寺に頂戴」と。するとご両親は、「はい、分かりました。しかし大学を出るまでの授業料は私達に出させて下さい」と言われました。
 
ところが大学院に進学しても、彼は様々な奨学金をもらい続けるのです。あまり公にはなっていませんが、天皇陛下の奨学金があるんです。今回は選に漏れたようですが、別の奨学金でインドに行っております。そこで今、博士論文のための研究をしている所です。
 
今後は第二第三の「真如基金」の奨学生を育てて行きたいと思っているところです。皆さん達の中に、孫や子供を僧侶にしたい、佛教の研究者にしたいと思う方がおられましたら遠慮なく申し込んでください。場合によっては修行道場での修行の費用の一年分とか、何らかの支援が出来るかもしれません。
 
信念を持って子育てに精進しよう
 
これから春の芽吹きの時期に当たり、次の世代を育てるという事を私達は意識しなければいけないのではないかと思います。
 
皆さんの家庭でも、子や孫にどういう祖父母や父母の後ろ姿を残していけるか、家庭教育はとても大きいと思うのです。それぞれに自分の家のルール、家訓というのをはっきり残していく。それを後の世代の人が時代に合せて修正して行けばいいのです。
 
ボーイスカウトはこれを参考にしたのではないかと言われたものに、もう一つ会津白虎隊を生んだ「什」の思想があります。こちらにもいくつか決まり事があるのです。
 
「弱い者いじめをしてはならない」とか、「ならぬものはならぬ」などです。これは世の中には人として理屈抜きで守らなければいけない事があるという事を頑固なお爺さんお婆さんや両親が、「これはダメなんだ」と自信を持って伝えないといけないというのを、各家庭でそれぞれ精進しながら作り上げていって頂きたいと思います。合掌




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