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大日乃光






大日乃光

2018年12月27日大日乃光第2228号
「教育の充実を図る活動」

認定NPO法人 れんげ国際ボランティア会 
専務理事 川原光祐

 
信者の皆様、明けましておめでとうございます。
昨年は皇円大菩薩様の御入定八百五十年大遠忌法要と多宝塔落慶法要に、多くの信者様方と共にお参り出来ました事を心より感謝いたしております。
 
ミャンマーの現状
 
昨年の十一月に私は認定NPO法人れんげ国際ボランティア会(ARTIC=アルティック)の専務理事として、久家事務局長と共にミャンマーに出来た、教師を教育するための研修センターの落成式に行ってまいりました。
 
その時、ミャンマーをめぐる情勢が大きく変わってきている事を感じました。まずは世界で四番目に難民が多い国である事です。国連の調査では、百四十一万人がバングラデシュなどの他国に難民として流出しているとの事です。
 
中でも最近よくとりざたされているのがロヒンギャ難民問題です。過去に隣国のバングラデシュより、ロヒンギャと呼ばれる民族が移り住みました。当時国籍も無く、民族も宗教も違う人々です。そしてロヒンギャの人々には一夫多妻の習慣があるために人口が一気に増えた事が原因となり、ミャンマー国軍と戦闘が起こり難民となっているのです。
 
世界の評価を見れば、ミャンマーは人種差別や虐待を行っている残酷な国、とニュースでは取り上げられています。周りの国から見るとその様に映るのでしょうが、ミャンマー国民に言わせれば、ロヒンギャは外国から侵入して来て、ラカイン州の人口比率が先住のビルマ人より多くなってきているとの危機感から起きた弾圧であると聞かされました。
 
この問題は政治的にも民族的にも、また宗教的にも複雑な事情を抱えているようです。
外部の私達はミャンマーの平和と民族融和を祈りつつ、今行わなければならない文化教育支援に邁進しなければならないと思います。
 
学校建設で自立を
 
当会は、今年六月までには八十校の学校建設を終えます。そして八十地域での様々な農村の開発事業を進めています。これまでも何回となく『大日乃光』にも書いておりますが、当会の事業の進め方は大変変わっています。一般的な学校建設事業では、日本からお金を全額出資して、ただ学校を建てることが目的とされています。
 
しかし当会の支援は、たとえ貧困な地域であっても建設費の四分の一を自ら集めるほどに学校建設への情熱と意欲があり、教育の必要性を十分に理解している地域である事が重要なのです。そして地域で集めた四分の一のお金は、学校建設後に学校を継続して運営する為や、地域を発展させる為の農村開発事業費として使用されます。学校を建設する為の委員会や、農村開発を行う委員会が自ら議論し、企画を立てて推進して行く事が、地域の自助自立に繋がるのです。
 
前述のように八十校建設したそれぞれの地域では、それぞれの農村開発の事業が進んでいます。そこで、当会では年に二度のセミナーを開催しています。自分達の活動を発表する機会を設ける事で、評価の低い地域の方々には良い刺激となり、より良い活動を行う意欲を起こして頂き、高く評価された地域の方々には自信を深めて頂き、ますます充実した活動を進める事ができるようになるのです。
 
ミャンマーの教育を変え、国を変える
 
学校建設を進めて行く中で、生徒を教育する教師の質も課題になってきました。ミャンマーでは一九六〇年代から五十年以上も軍事政権が続きました。
 
その間、医師を育てる医学学校や軍人を教育する防衛大学には立派な教育が施されてきましたが、一般的な文系や理工系などの大学では「教養を身に付け過ぎると、民主化運動や政府に反対する人間が増える」との理由で殆ど授業が行われる事も無いままに、卒業証書と教員免許を授与されてきたそうです。したがって、多くの教師が「仕事が無いので教師でもしようか」程度の思いしか無い様で、教師としての自覚が薄いのです。
 
今回落成した研修センターは、若い教師の意識の向上を目指す為の施設です。一週間の研修を一年に六回行う予定で、一度に三十人が受けられます。
 
教師を育成するという事は、一人の教師から影響を受ける児童は大変な人数になりますので、大変意義深い事になると思います。教師が在籍する学校だけに止まらず、イラワジ管区から、ひいてはミャンマー全土にまで影響が広がれば、当会が行う事業が一つの国をも変えてしまう一石になると思います。
 
昨年十一月の十七日には、第一期生の研修と落成式を共に行いました。落成式にはイラワジ管区のカレン民族担当大臣をはじめ、教育長さんなど多くの要人が参加されました。特に驚いたのは、研修の講師を務めて下さる方の中に、師範学校の元校長先生が五名もおられた事です。この元校長先生達は教育現場の事情を良く理解されていて、この研修に大きな期待を寄せ、自身も講師として参加されています。
 
また、研修に参加された三十名の先生方も、各地の教育委員会から推薦を受けた方々で、大変積極的に前向きに取り組んでいる様子が伝わり、「ここで学んだ事を地元の学校に持ち帰り、授業に反映させて子供達に教えたい」と話されていました。
 
研修で教えている事は次の六項目です。
一、教育者としての自覚を持った教師を育てる
二、尊敬される教師を育てる
三、生徒の事を考えられる教師を育てる
四、自分で考える事を学ばせる(従来、ミャンマーでは暗記する教育しか無かった)
五、協力する事を学ばせる(ミャンマーではクラスなどで協力する事が少ない)
六、体を動かす授業をする(ミャンマーでは体育や音楽の授業が無い)
など、日本の教育現場では当たり前の事を行なわなければならないのです。
 
これから二年の目標
 
学校建設事業では、これから二年間でさらに二十校建設して、合わせて百校になるイラワジ管区で、子供達により良い教育を与え、出来るだけ途中でドロップアウトさせないように高学年まで教育を受けられる様にする事。
 
農村開発も百ヶ所で行い、地域の人々が自分達で立案実施して、自分達の村を自分達の力で変えて行ける様な、人に頼らない自立心の高い地域の創出が出来れば理想です。
 
また教育センターについては、第一回の研修生を受け入れたばかりですが、今後カリキュラムの充実を図り、多くの研修生を輩出出来ればと願っております。
 
ミャンマーの首都ネピドーやヤンゴンなどには、国が設立した教育センターが三ヶ所あります。当会の教育センターでのカリキュラムが認められ、国の教育センターで採用されるようになる事を願っています。
 
この他にもインドのチベット難民に対して、ある関係筋から大きな事業を企画してもらえないかとの依頼が、昨年舞い込みました。そこで新年早々にインドに渡航して、チベット亡命政府の教育省や内務省と会談して、事業を進めて行きたいと思っております。
 
信者の皆様方、これからも認定NPO法人れんげ国際ボランティア会へのますますのご理解とご支援を、心よりお願い申し上げます。合掌




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