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大日乃光






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2019年04月03日大日乃光第2236号
輝かしい新元号と共に新学年を迎える子供達のために

子孫の幸せを共に祈念する春彼岸の先祖追善護摩供養
 
今、この原稿を書いているのは本年の春彼岸供養を始めたばかりで、この頃はいつもより一時間ほど早く起きて、通常の祈願に続けて彼岸供養を勤めております。
 
最近は当山の霊園、「蓮華院御廟」からの「永代供養」のお申し込みが随分と増えて来ました。ここにも少子高齢化の影響が出ているのかも知れません。平成四年にこの永代供養を始めた頃は、全国でも比叡山の霊園だけがこの様な供養を行っていました。
 
当山の永代供養は当初は「永代供養墓」が中心でしたが、近年は既に蓮華院御廟でお墓を建立された方が、既設の墓所に追加で永代供養をお願いされる事が増えて来ました。
 
「正月供養」「春彼岸供養」「お盆供養」「秋彼岸供養」の年に四回、この永代供養を申し込まれた方々にも四度供養を致しております。と申しましても、生前墓として建立された方もおられますので、その方々の為には開運祈願として祈っております。
 
この様に四度供養と共に永代供養を勤めながら思うことは、過去から連綿と伝わる命のリレーの中で、今のこの時代を生きている方々がそのご先祖様の安寧を祈られると同時に、今現在とこれから先の子孫についても「子孫繁栄」と「幸多かれかし!」との思いをこの供養に込めておられる事を実感しながら、至心に祈っています。
 
子孫の幸福は人類普遍の祈り
 
全ての人がご自分の幸せと子孫の幸せを心から願っておられます。私自身も三人の娘とそれぞれの婿さん、そして八人の孫たちが集まった時などには、しみじみと一人一人の健康と共に「それぞれに幸せに生きていくんだよー」と願わずにはおれません。
 
一人の例外も無く、子や孫の幸せを願っておられるはずです。これはともすると自分自身の幸せを祈る思いよりも、より切実で深い思いなのかもしれません。
 
ここから身内を超えて、友人知人、さらにはご縁の深い方々、そして広くは地域社会にまで願いが広がっていける人は、なお一層幸せな人生であるに違いありません。なぜならより広く心を広げて祈ることの出来る人は、神佛により近づけるからに他なりません。
 
この本誌が皆さんのお手元に届く頃には新元号が発表されます。それは必ずや、未来に対する明るく前向きな意味合いを持った元号であるに違いありません。この様な新元号によって新年度を迎えることは、誠に有難いことであります。いつもの新年度とは違い、日本国中の人々が明るく前向きな心構えで新年度を歩み出されることでしょう。
 
さて、いつもこの時期にお伝えしていることですが、今年は二人の孫が小学校に入学するので、私にとってことさら思い入れの深い新年度になりそうです。この新年度にあたって、子供達を送り出す両親と祖父母が新入学や進級する子供達にどのようなアドバイスを与える事ができるのでしょうか?
 
子供達に教えて欲しい国家・社会の恩としての教育
 
思えば三十数年前、長女が地元の小学校の入学式を迎えた時、私は小学校まで一諸に歩いて行き、その後保護者代表として式の中で挨拶する事になっていました。
 
その前に、私は先代真如大僧正様(父)に入学式でどんな話をすれば良いのかを尋ねました。というのも父は佐賀にいた頃、私達の小中学校の時代に何度もPTAの会長を務めたり、子供会の役員をしたり、自ら寺の中に「少年研修館」を設立したりと、青少年育成にはことさら力を尽くしておられたからです。
 
そんな先代から、先ず、「担任の先生を知っていても知らなくても、必ずその先生は素晴らしい先生だと子供に伝えなさい」
 
次に、「今から行く学校は素晴らしい伝統と実績を持つ立派な学校である事を伝えなさい」
 
そして今一つ、「小学校では児童一人当たり四十万円以上、中学校では五十万円以上の税金が使われている事を子供達に教えなさい」といったアドバイスを下さいました。
 
現在は小学生一人当たり、何と八十九万四千円、中学生になると百二万二千円にも及ぶ税金が使われているのです。この金額を知って、皆さんはどう思われましたか?
 
これは夏休みなどの長期の休みや土日祝祭日の休みの日も変わる事なく、全ての学校教育に使われている国税、住民税の総額を生徒数で割った金額なのです。これから入学する小中学生にこれだけの金額が使われる事になるのです。この金額を多いと思われるか、それとも少ないと思われますか?これはつまり親も含めた社会からの恩恵なのです。
 
新入学の小学生にはこの話は難しいと思いますが、中学生には充分理解できる話であるに違いありません。
 
一方で私達が納めている税金は一人当たり約三百万円だそうです。「とてもそんなに税金は納めていない」と思われる方がほとんどだと思います。これは様々な会社や高額納税者がおられるお陰なのです。
 
社会の恩恵と、社会の多くの人々の助け合いの中で学校が運営されている事を、この際しっかりと教えてください。この事は、子供たちが地域社会や国家の恩恵を考えたり感じたりする一つのきっかけになるはずです。
 
子供の教育に最も大切な事
 
先代は、何と言っても、「教育には信頼と尊敬が欠かせない事」を強く訴えておられました。
保護者自身が先生を尊敬して信頼している事、そしてその姿を子供達にしっかりと伝え教えることがまず一番大切な事であると、ここで改めて皆様にもお伝え致します。
 
子供は、親が尊敬している先生から教わる時、素直に先生の言われる事を守り、そして真剣に授業を聞く事ができるのです。そこから教育の効果が表れるのです。
 
これもかつて父から聞いた話ですが、父が旧制玉名中学(大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』の主人公、金栗四三さんも卒業)に入学した時、兄である伯父から「英語の先生は誰?」と聞かれて「○○先生」と答えると、伯父は「えーあの○○か!あの先生はつまらん!お前は運が悪いな!」と言われたそうです。そのせいか、父の英語の成績は振るわなかったと言っておられました。
 
教育の基礎に、かつてはごく当たり前だったこの尊敬と信頼を取り戻さなければ、教育効果は上がらないと確信します。
 
「国家」とは人と人の繋がりの総体
 
そして今一つ大切なことは、「国家・社会への感謝の心」であります。ともすると、国家への感謝などと言えば、「民主主義にそぐわない」とか「国家主義的で教育にはそぐわない」などと言われそうですが、ここで言う「国家」とは「家族や地域社会、更には日本全国の故郷の集合体」であり、過去から未来に向かう多くのご先祖様や子孫も含めた全ての人々の総意としての、大きな生命体と捉えてはいかがでしょう?
この様に考え、この様に感じられた時、国家と個人は決して対立するものでは無く、国家と個人は互いに補い合い混じり合う、大切な絆の総称となるのではないでしょうか?この様な国家意識を取り戻す時、私達のこの日本は世界の中で輝く国としての役割を果たす事が出来ると信じます。
 
ご先祖様から未来の子孫への命の連鎖を自覚して共に歩もう
 
先に私はお彼岸での先祖供養の中で、ご先祖様から自分、そして子孫までを含めた命の繋がりの中で、皆さんが先祖供養をしておられるのを実感したと述べました。これは国家・社会の恩を教育の中で感じる事と、多くの共通点があるように感じます。
 
このご先祖様を思う心がそのまま子孫に伝わり、更には地域社会から国家にまで同じ思いが広がる時、
「自分自身の使命がどこにあるのか?」
「何のために生きるのか?」
「何のために学ぶのか?」
この答えが一つながりに繋がっていくのではないでしょうか?
 
間もなく新元号を迎える中で新たに学びを始める子供達のために、私達一人一人が何のために生き何のために学ぶのかを、どうか今一度見つめて頂き、共に前向きに明るく歩み出して行きたいものであります。合掌




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