会長 川原英照
秋の柔らかな陽射しの中で寺内を散歩していた時のことです。私は、先日(11月3日)除幕されたばかりの、新しい三つの詩碑と共にこれまで建立された九年分の詩碑二十八基をしみじみと一つ一つ拝むような気持ちで読んでみました。それぞれの詩の背後にはその詩を書いた子供さんに豊かな愛情を注いでおられる「お父さん」「お母さん」の姿を見ることができました。
なかにはすでにお母さんを亡くした女の子、またはお父さんと離れて暮らしている男の子の詩もありました。そして悲しい事にすでに亡くなった女の子も居ます。それでも彼らの心の中には、今も亡きお母さん・お父さんの姿が鮮やかに生きておられるのでしよう。それが私の心にしみ入る大きな力となっているのでしょう。
私はここまで子供達の詩を読んで来て、ふっとある事を思い出しました。それは十数年前に私自身が体験した「内観」での感動でした。内観とは、吉本伊信という方が創り出された自分の心を見つめるための方法です。
具体的には先ず始めに、
1、お母さんにしていただいたこと。
2、お母さんにご迷惑をおかけしたこと。
3、お母さんにしてあげたこと。
これまで生きてきた年代順にこれら三つのことをじっくりと思い出すのです。いわばお母さんという最も身近で大切な人を鏡にして、そこに映った自分と向き合うのです。
日を重ねるうちに自分がいかに迷惑をかけていたか、母の愛をいかに多く受けていたかということが次々に思い出され、いつの間にか涙がとめどもなくあふれて来て止まらなくなりました。そしてそれでもなお、こうして生かされている自分に気付き、今度は言いしれぬ有難さにまた涙が流れて来たのです。以来私は私自身の子供や家族に対して、どんな親であったかを反省させられ、それまでとは少し違う生き方に努めるようになりました。
この詩集を手にされた皆さん、どうか子供達の詩の中から、かってのあなた自身の姿、そして自分もこうありたいと思う親の姿を見つけて頂き、自分自身と向き合って下さい。そこから湧き出た生命への感動と感謝の心を、親と子の心の交り合いに生かして頂ければ望外の幸せと存ずる次第であります。合掌
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