2003年2月21日第186号
幸福ニュース

【内観法を体験してみて】

 『内観』とは、身近な人々、母または母親代わりの人、父または父親代わりの人、配偶者などに対する本当の自分を見つめるために、

@していただいたことAしてさしあげたことB迷惑かけたこと、

について、具体的な事実を過去から現在まで調ベる中で、色々な気付きや発見により、悩みの解決ができ、より良い人生を過ごせるようになる方法です。

 また人だけでなく、物に対しても同じように3つのことを調べることができます。例えば、自分の胃や足について、また、太陽や空気について調べると何を発見するでしょうか。是非、お試し下さい。今回は奥様がご病気の方の内観感想文です。

【内観法を体験してみて(35才男性)】

 仕事がありましたので、木曜日の夜遅く蓮華院誕生寺の奥之院に入りました。内観法とは何か、どのような事をするのか、家内は知っていましたが、私はあえて何も知らず、「行っておいで」との事でしたので、何もわからず玉名の山奥へと向かいました。バッグ2つ抱えて、一人で外泊する事すらもう何十年ぶりだろうと少々落ちつかない気持で寺務所の戸を開きました。

 修行誓約書へ目をとおしたあたりから、少し体が堅くなっていくのを感じ、その内観の方法を聞いた時、多少驚きましたが、なるほどと思いつつも、初日はすぐ床につきました。

 次の朝、5時半起床でしたが、とてもすがすがしく目が覚め、なんと気持の良い目覚めだろうと感じ、大梵鐘をついてお参りする中、すべてが初めてでしたが、この体験だけで、個人的にすごく感動していました。

 さてさっそく内観1日目、まずは、母のことからと言われ、妻のことばかり考えていたので、そんな思い出せるのかと思いながら、内観を始めました。

 ところがです。それはリアルに思い出すのです。1時間おきの面接で、その思い出す事を口に出すだけで、その面接直後、何もしてやれていないという気持が時間を追うごとに強くなり、現在とシンクロさせながら一人で泣いておりました。

 自分のわがままに気付き、してもらった事はいくらでも思い出せるのに、その逆はあまり思い出せない。これはショックだったのであります。

 そして2日目、父のことでの内観だったのですが、私はあまり父とは会話をした記憶が特に高校くらいまではなかったので、ちゃんと内観できるのだろうかとその朝まで思っておりました。

 しかし、その日の朝のお参りの時のことです。いつものように大梵鐘を最初にお参りした後、護摩堂でお参りしている時、手を合わせ目をつむると、私の目の裏に、その中にすわっていらっしゃる菩薩様の細い目がバシッと焼きついたのです。とっさに錯覚かなと思い再び目をとじると、やはり目の裏にその目線がうつるのです。まるで、「お前のすべてはわかっているぞ」と自分自身をみすかされたような感じでした。

 それから父の内観をはじめる時には、えらく落ち着いている自分に気付き、たくさんではないが、一つ一つ父の事を思い出せたのです。前日の母への思いと重なり、やはり、自分はあたたかい中にいるなと思うのでした。

 さて、3日目、妻への内観です。今回一番集中したかった事であり、結婚してから10年間、いろいろ思い出しました。今では私のせいで病気になり、かなり苦しんでいる妻を内観することは、それは自分の弱さを認めるということであり、ひとつひとつ申し訳ない気持でいっぱいになるのでした。

 そして夕刻、おふろをいただいた後の面接で、「乗り越える力がある二人だからこそ、神様はあなたがたを夫婦としたのです。」の言葉に、一日目からの母から父、そして妻の3人への思い出がごっちゃまぜになり、面接終了後、毛布で顔をおおい、声を出して泣いてしまいました。

 そしてその夜、夢の中で私は大変うなされてしまい、奥之院全体がひどく音をたてて、泊まっている部屋がミシミシとひびき、私の眠っている真上で、黒い玉のようなものが、私の体へ落ちてまいりました。そこで、私はハッと目を覚まし、起床時刻まで眠れず、考え込んでおりました。「しっかりしろ!」そう全体からおしかりをうけたようで、4日目を迎えました。

 4日目は弟への内観です。実は2日目の父より苦手に思い、そんな一日かけて内観して何か思い出せるだろうか・・・・。そのくらい弟にかけて、一人自由にしていた兄なのです。ところが、勝手自由にしてきたと思うと、その兄を見ていた弟の気持を考えたら、いろいろ思い出したのでした。不思議ですね。すごく楽に思い出せました。

 そしてよくイジメたりケンカしていた弟に対して思い出したのは、母の言葉でした。「たった一人の弟でしょう。なんでそんなにイジメるの」フッと思い出した言葉でしたが、その一言は、今回内観した人すべてがそうなのだということに気付かされました。家に帰れば12才の娘がいます。そう、皆すべてたった一人なのです。全てがたった一人の私のためなのです。

 4日間、いろんな事を感じ、思い出しましたが、してもらった事、して返した事、迷惑かけた事は、全て私のたった一人のためなのです。まだ、今回のことは全てを妻へ話していませんが、これからゆっくりと話し合い、家族で頑張っていこうと思います。本当にありがとうございました。

 (追記:毎日3度の食事、とてもとてもおいしゅうございました。ありがとうございました。)

【坂村真民詩集】

《 殻 》

殻を脱ぐ

それはかにもやる

とんぼやせみもやる

人間もこれをやらねばならぬ

木は年輪を持つ

竹は節を持つ

人間もこれを持たねばならぬ

うどの大木では

かにやとんぼや木や竹に笑われる

生れたままでは

万物の霊長とは言われぬ

殻を脱ごう

年輪や節を持とう

新しい自分を作るため

新しい世界を開くため

【仏語集】

 心と心の食い違いは、まことに恐ろしい不幸をもたらすものである。わずかの誤解も、ついには大きな災いとなる。家庭の生活において、このことは特に注意をしなければならない。(パーリ、本生経)

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