現在、お寺によく相談に来られたり内観に来られる方々の中で、パチンコ依存症と借金問題が増えています。
たかがパチンコ、誰でもやっていることではないかと思うかも知れませんが、ギャンブル依存症の場合は、必ずお金の問題を伴うのが特徴で、家庭崩壊につながることもあります。また、子供にも悪影響が大きく、不登校や非行、また、大人になってから親と同じ依存症になったりするケースもあります。
最初は家のお金を盗ったり、物を質に入れたりするのですが、そのうちに会社のお金を使い込んだり、サラ金で大きな借金をしたりして、会社や家族に発覚するケースが多いようです。お寺に来る時には借金が500万円から時には1000万円以上になっていたりします。
この場合、最悪なのは、親が全額を返済してしまうケースで、必ずまた再発します。不思議と、全部白状しないで一部小額を隠すのです。ですから、2〜3年たつとまた大きな額にふくれあがってしまい、どうにも手がつけられなくなってしまいます。
このように、仕事や家庭など日常生活に、パチンコなどギャンブルが原因でよく支障が起こる場合は、ギャンブル依存症を疑ってみる必要があります。
それから、依存症には現実逃避の一面があります。仕事や家庭生活がうまくいかず、自我に対する評価が低いのも特徴です。ところが、自分に対する期待感や理想は高く、それが達成できないので、その矛盾に苦しむという傾向がみられます。等身大の自分を受け入れられないのです。
依存症者は、ストレス発散がうまくできず、パチンコや買物や薬物(覚せい剤)やお酒やセックスやギャンブルや仕事に逃げ込み、それらををやっている時だけが、至福の時なのです。でもその後、またひどい自己幻滅感にとらわれ、悩み、また繰り返します。
また、複合型や混合型の依存症があります。アルコール依存症(アル中)とギャンブル依存症を併発したり、ギャンブル依存症が治ったと思って安心していたら、アルコール依存症になったりする人もいます。
一番大事なのは、家族や本人がパチンコ依存症を『心の病気』だと認識することです。依存症専門の精神科医など専門家と相談し、ギャンブラーの自助会(ギャンブラーズ・アノニマスなど)に毎月顔を出しつづけることなどが、治癒するためには重要です。
そして、アル中患者と同じで、たった一回のパチンコがまた命取りになるということが多く、一生涯充分ギャンブルから遠ざかる生活を守る必要があります。
また、依存症者の家庭には、共依存者の存在がよく指摘されます。「私がいなくてはこの人はダメになる。」と世話をやきすぎ、かばい、支えすぎて、かえって依存症者の回復をさまたげる結果となっている人のことです。この場合、共依存者も依存症者に依存しているという、相互依存関係にあります。ですから、共依存者も他に自分の目標や趣味などを持ち、共依存関係から抜け出ることが大事です。
また、親が依存症者の家庭に育った子供は、アダルト・チルドレン(大人になりきれない子供のような大人)や、親と同じく依存症者になりやすいという傾向がみられます。そして、親のようにはなりたくないと思いながら、無意識のうちに親と同じような相手を配偶者として選んでしまうのです。まさに、因果はめぐるとしか言いようがありません。気付いた人のところで、何とか、この因縁を断ち切ってほしいと願うしだいです。
パチンコ依存症など依存症者は一般的によく嘘をつきますし、自分が依存症者であることを認めようとしません。否認する傾向が強いのも特徴です。この否認を取り除くことが治療の上では重要です。そのためには、家族がかばわないで、本人に問題に直面させ、痛みや辛さを依存症者自身でしばしば体験してもらうことが、治療意欲を持ってもらうために重要です。ただし、精神的に問題のある患者には、直面化は注意して行う必要があります。
依存症者を抱えた家庭では、疲れや悩みから家族の方が病気になる場合がよくあります。病気は何でも早期治療が大事ですから、世間体よりも、専門家に一刻も早く相談し、依存症者の治療に取り掛かることが大事です。ひとつの方法として、地元の保健所や県の精神保健福祉センターに相談するやり方もあります。
また、心療内科医や精神科医にもご相談ください。この場合大事なのは、嗜癖(しへき)問題や依存症に詳しいお医者さんを選ぶことが大切です。
<パチンコ依存症者への対応法>
家族がパチンコ依存症者に接する場合、基本となる考え方は、パチンコ依存症者の直面化(自らパチンコ問題に正面から対処すること)を促進することです。家族にとって、社会的信用や仕事や家庭を失わないようにするための精一杯の努力が、直面化を妨げている場合が多く、依存症者は一向に痛みを感じないですむので、治そうという考えがおこらないのです。
1)後始末をしない。
(依存症者をかばうために、肩代わりや言い訳や嘘をつくなどの尻拭いをしない。ただし、親名義で借金したり、家庭が崩壊するような場合は、早く返済するが、依存症者にも責任を持たせながら、返済計画をたてる。)
2)世間体を気にしない。世間にオープンにする。
(でないと、嘘をついて、いろんな人・所からお金を借り、パチンコをやって、治るのがますます遅れる。)
3)暴力からは逃げる。
それから、軽症の場合は自助グループが有効です。パチンコ依存症およびギャンブル依存症を対象にした自助グループをギャンブラーズ・アノニマス(Gamblers Anonymus)といい、全国の会場で定期的に会合(GAミーティング)をもっています。
GA日本(ギャンブラーズ・アノニマス日本)
郵便:〒246−8799横浜市瀬谷郵便局留 「GA日本インフォメーションセンター」宛
FAX番号:045−303−2827 (電話での対応はしていません)
また、「内観」を治療に併用している病院でも、各種依存症に効果的な治療を行っていますので、是非ご相談ください。当寺のホームページにリンク集があります。また、家族の方々も内観をされると効果的です。内観研修所・関連病院・相談室のリスト及びリンク
最後に、パチンコ依存症者を抱える家庭や職場の方々に是非よんでいただきたい本があります。今回の幸福ニュースは、私どもの体験と、この本をもとにして書かれました。『(今の私は仮の姿) 平成パチンコ症候群』(精神科医 岩崎正人著、集英社)
パチンコ依存症などギャンブル依存症は再発しやすい『心の病気』です。一生涯、賭け事から遠ざかる必要があります。じっくりと気長に治療すれば立ち直ることができますので、専門家と相談しながら、希望を持ってあきらめずに治療されることをお勧めします。依存症の治療ではよく「継続は力なり」と言われますが、ギャンブルへの誘惑との闘いを一生涯続けることが何よりも大事なのです。(終)
人には、迷いと苦しみのもとである煩悩がある。この煩悩のきずなから逃れるには五つの方法がある。
第一には、ものの見方を正しくして、その原因と結果とをよくわきまえる。すべての苦しみのもとは、心の中の煩悩である。
第二には、欲をおさえしずめることによって、煩悩を静める。
第三には、物を用いるに当たって、考えを正しくする。
第四には、何事も耐え忍ぶことである。
第五には、危険から遠ざかることである。賢い人が、荒馬や狂犬の危険に近づかないように、行ってはならない所、交わってはならない友は遠ざける。このようにすれば、煩悩の炎は消え去るのである。(パーリ、中部2、一切漏経)
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