1999年9月1日第74号
幸福ニュース

【 九州内観懇話会より 】

今回は、8月29日に鹿児島市で開催された第11回九州内観懇話会で行われた、日本内観学会会長、竹元隆洋先生の講演内容の要約を中心にお送りさせていただきます。

A:竹元先生講演{内観の基礎------非行、学級崩壊などの事例}

近代科学の発達は心の面を切り捨てて発展してきたともいえ、物質文明の爛熟により、一方でますます精神面の荒廃がすすみつつあるのが現代社会である。

子供の価値観は、両親の価値観に影響された子供本人の良心により形成されるわけであるが、先が見えない現代において、両親の価値観がフラフラしているため、子供の価値観もフラフラしており、していいことといけないことの区別がつかず、問題をおこす原因のひとつとなっている。

欲求を行動に移せない不満や葛藤が、いわゆるストレスであり、胃が痛いなどの身体化や、ノイローゼなどの精神的症状があらわれる情動化、行動障害を伴う行動化などが、外部にあらわれることがある。

大人であれば、酒、タバコ、ギャンブル、スポーツ、芸術、趣味等、ストレス発散の方法が多いのであるが、未成年が行うと非行になるなど制限されているので、青少年にも心の葛藤が起こりやすいのが、現代社会であるともいえる。

家庭問題をかかえたまま大人になり、うまく社会適応ができない人のことをアダルト・チルドレンというが、これは、正式には Adult Children of Alcoholic の略であり、ACOD(Adult Children Of Disfunctional family 機能不全家族で育った大人)とも言われる。

親がアル中であったりして、家庭内の良くない対人関係の影響をもったまま実社会にでた人で、圧倒的に女性に起こりやすい。30才そこそこで、赤ちゃん一人抱えたお母さんがかって自分が受けたことを無意識に子供にやってしまい、この悪循環を自分のところで断ち切らねばと思いながらできないで、悩むケースが多い。

さて、内観とは、自分の内側を観て本質をつかみ、もっとより良く生きていこうというものです。

内観では、(1)してもらったこと、(2)して返したこと、(3)迷惑かけたことの三つを調べます。(1)を調べることにより、忘れていた、お世話になった数々の具体的事実を思い出し、自分に注がれた大きな{愛}を再認識し、人間への基本的な信頼感を取り戻します。即ち、自己肯定、自己尊厳の復活がおこなわれるのです。

次に、(2)により、お返しがあまりにも少ないことに愕然とし、未熟な自己中心の自分に気付きます。さらに(3)により、多くの人や物に迷惑をかけている自分を発見し、その罪悪感から、{これではいけない}という向上しようとする意欲がわいてきます。

このように内観はたった三つのことをしらべることにより、本人の内部から、自発的な自己実現へのエネルギーを復活させ、行動へと導くものです。

竹元先生は内観の中で【愛】の再発見の重要性を強調されました。この後、学校での事例に移り、二人の中学生の内観体験テープを聞きましたが、非行や学級崩壊の原因児が内観により、変化していくさまがよくわかりました。万引きを毎日している子でも自分が悪いとは少しも思っておらず、人間の自己認識は時として、とんでもなく誤ったものになるものであり、我々自身も気をつけなければいけないと感じたしだいです。

B:事例発表(学校での内観例)では先生の学級内観への取り組み方の姿勢により、内観の効果が違うことが、データから明確にうかがえた。1000人の大規模校と全校生徒15人の小規模な分校の事例が発表され、毎日わずか5分間の内観でも効果がでた生徒が多かった。竹元先生の{今の時代は、わあわあ言いながら授業をするのがナウイ授業と思ったほうが楽ですよ}と、先生方にアドバイスされていたのがショッキングだった。

C:シンポジウム:
{悩みがある}のではなく、{私が悩んでいる}のであり、ちょっと角度を変えてみると{私は悩まなくなる}、即ち{悩みはなくなる。} それと同様に、{病気という悩みがあるのではない}、{病気でも悩みはなくなる}のである。

我々は通常{外観三項目}をしており、摩擦がたえない。
1.してもろてない。
2.してやった。
3.迷惑かけられた。
我欲が摩擦をおこしている。上記3つを内観3項目(1)してもらったこと、(2)お返ししたこと、(3)迷惑かけたことに置き換えることが、幸せになる秘訣である。

参加した元アルコール依存症で今ではりっぱに立ち直っていらっしゃる方が、{内観を信じて実行してゆけば、幸せな人生がくることを信じています。}と語られたのが印象的でした。

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【43才女性の内観体験記】

内観を終わって、今まで抱えていた問題の解決の糸口を見つけることができました。深い内観ではなかったと思いますが、一人一人順番に、母、父、夫、母、夫、息子と調べていくうちに、息子の起した問題は、私の心を如実に映した結果なのだと思いました。

息子に対しては、人からささえられて生きているのだから、感謝の気持ちを忘れないようにと、日頃言っていました。しかし、私自身、本当のところ、その気持ちがわかっていませんでした。

私は、両親から深く支えられていました。母から受けた愛情、信頼のおかげで、私の心はのびのび育ちました。父から受けた愛情、信頼、大きく私を包み込んでくださったことで、私は安心感の中で育ちました。

私が両親から受けた愛情、信頼をわが子にも、私から注がねばならぬと思いました。それができなかったのは、夫婦仲の問題が原因でした。

結婚後、夫は数年のうちに鬱病を患い、数年おきにその病気を繰り返し、社会生活に適応できなくなりました。内観を終えた今は、病人には休養してもらい、看護するのは当たり前だと思います。

しかし、以前の私は、夫の長年の病気の繰り返しで、正常な家庭生活の欠如、経済状態の悪化、三人の子供の養育でくたびれ果て、夫の病気は性格が元々悪いからではないかと思っていました。別れたら、さぞサッパリするだろうと考えた時期もありました。

内観を終えて、病気で一番苦しんでいるのは、夫本人であると思いあたりました。苦しんでいる上に、妻が理解しなかったのですから、さぞ、きつかったことでしょう。

{あなたが病気ばっかりなるから、リストラされたし、職はないし、私まで働かなけりゃ、子供三人養っていけないじゃない、どうしてくれるの。}と、直接言いはしませんけれども、腹の中で考えながら、食事を作ったり、洗濯したりしていました。

言わなくても、考えていることは、態度の端々に出ていたかもしれません。夫も感じていたでしょうし、子供達にもわかっていたかもしれません。恐ろしいことです。

病気は病気です。糖尿病や高血圧症のように病気なのですから、鬱も起きたときは起きたときです。あるがまま受け入れようと思います。経済状態もさらに悪化するかもしれませんが、家族五人で力を合わせ、何とか乗り切っていきます。

私が、夫の病気を受け入れ、夫婦関係が修復すれば、子供達のことを、愛情と信頼の気持ちで見ることができると思います。

今度の内観で、私のいたらなさを気付かせていただき、とてもありがたく思います。この気持ちを持続できるよう努力し、あたたかい家庭を作っていきます。本当にありがとうございました。

【坂村真民詩集】

《 いかなる罪も 》

いかなる罪も
責むるなと
くちなしの花
教うなり

すがしく薫る
白い花
疲れて帰り
そばに立つ

《 ねがい 》

どうにもならない

血をもって生まれ

どうにもならない

運命を背負い

みんな悲しいんだ

みんな苦しいんだ

だからお互い

もっといたわりあい

なぐさめあって

暮らしてゆこう

小さい蟻たちさえ

あんなに力を合わせて

生きているんだ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

{ただ、花の開落を見て、人の是非を言わず}(菊池寛)

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【仏語集】

悪魔の領土は欲であり、闇であり、争いであり、剣であり、血であり、戦いである。そねみ、ねたみ、憎しみ、欺き、ヘつらい、おもねり、隠し、そしることである。

いまそこに、智慧が輝き、慈悲が潤い、信仰の根が張り、歓喜の花が開き、悪魔の領土は、一瞬にして仏の国となる。

教えのしかれている世界では、人びとの心が素直になる。この素直な心は、同時に深い心、道にかなう心、施す心、戒を守る心、忍ぶ心、励む心、静かな心、智慧の心、慈悲の心となり、また方便をめぐらして、人びとに道を得させる心ともなるから、ここに仏の国が、立派にうち建てられる。(中陰経、維摩経)(The Teaching of Buddha)

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