The Teaching of Buddha
いつくしみと願い

 仏の心とは大慈悲である。あらゆる手だてによって、 すべての人びとを救う大慈の心、人とともに病み、人ととも に悩む大悲の心である。

 ちょうど子を思う母のように、しばらくの間も捨て去るこ となく、守り、育て、救い取るのが仏の心である。「おまえ の悩みはわたしの悩み、おまえの楽しみはわたしの楽しみ。」 と、かたときも捨てることがない。

 仏の大悲は人によって起こり、この大悲に触れて信ずる心 が生まれ、信ずる心によってさとりが得られる。それは、子 を愛することによって母であることを自覚し、母の心に触れ て子の心が安らかとなるようなものである。

 ところが、人びとはこの仏の心を知らず、その無知からとら われを起こして苦しみ、煩悩のままにふるまって悩む。罪業の 重荷を負って、あえぎつつ、迷いの山から山を駆けめぐる。

(観無量寿経、維摩経、首りょう厳経、大涅槃経)

説話前号