ホーム > 大日乃光 > 大日乃光一覧

大日乃光






大日乃光

2012年01月01日1998号
歴史を変えた先人に感謝を捧げ三つの生活習慣と三信条で未来を開こう

辰年は皇円大菩薩様の年

 

 全国の信者の皆様、新年明けましておめでとうございます。私は今、この文章を八千枚護摩行の前行の中で書いておりますが、新しい年を迎えた気持ちに成りきって、二、三の事をお伝えしたいと思います。
 

 さて、今年は辰年です。辰年生まれの私にとっては、今年の中頃に還暦を迎えることになります。「辰」は龍に通じ、龍神となって末世衆生を救うために七百六十年の苦難の修行をなされたご本尊皇円大菩薩様の年でもあります。また龍は「昇龍」とか「登龍門」とも申しますように、高みに昇る勢いを象徴しています。私達もこの辰年にあやかり、皇円大菩薩様の御加護によって、元気に前向きに過ごしましょう。
 

 また『易』では、本年は天が万物を支配し、健やかな活動を支える意味を持った年です。更には成長発展を為し終えて収穫の準備を迎え、将来に備えて積極的に働く必要性を示しています。昨年の南大門再建によって中興を終え、いよいよ更なる天命に基づく働きで、蓮華院の再出発の年に相応しい年にしなければならないと、決意も新たにしているところであります。

 

激動の時代を描いた『坂の上の雲』

 

 ところで、昨年(二十三年)まで三年連読でNHKの年末特別番組として『坂の上の雲』が放映されました。ご覧になった方は多いと思います。原作となった同名の小説は、大きな反響で当時の人びとに勇気や気概を与えた画期的な長編小説でした。後に作者の司馬遼太郎氏の名を冠して「司馬史観」と呼ばれる程でした。
 

 百五十年前、西欧列強の国々が世界中を着々と植民化し、アジアでも日本とタイ以外のほとんどの国が植民地か、または半植民地となっていた当時の状況の中で、日本はわずかな内戦を経て、明治維新という国家の大転換を成し遂げました。
 

 先のドラマでは、その新国家建設からわずか三十六年後に世界一の大陸軍国であったロシアを相手に悲壮な覚悟で戦争に入って行く日本の姿が描かれました。結果はもちろん、日本の勝利に終わったのですが、何と言っても海軍が完全なる勝利を収めた事が、世界の有色人種を含めた多くの国々、多くの人びとに驚きと感激をもって受け止められました。

 

人類史の流れを変えた日露戦争

 

 ここで、もしあの戦争に日本が敗れていたら世界は一体どうなったであろうかと考えてみて下さい…。
 

 百年前は、世界では人種差別が当然の事でした。白人国家に異議申し立てを行えた有色人種の国は、世界中で日本以外には存在しなかったのです。ある方の仮説に「世界は未だにアパルトヘイト(人種隔離政策)だったに違いない」というものがありました。
 

 皆さんも少し考えてみて下さい。もし日本が日露戦争で敗けていたら、今頃私達はひょっとすると〇〇スキーと名乗っているかもしれませんし、天皇や皇室も無くなっているかもしれません。更に朝鮮半島は全てロシアのものになっているでしょうし、中国も北半分はロシア、南はフランスやイギリスのものになっている可能性が高いでしょう。
 

 陸軍の場合は四十年前のベトナム戦争のように、近代化が進んでいない後発国側が、ゲリラ戦術によって勝つ事はあります。しかし産業基盤と技術力がものを言う、近代の科学力を駆使した海軍同士で戦われる海戦でも日本が勝利した事が、その後の歴史に大きな影響を及ぼしたのです。
 

 現代の若い人びとには、日本海海戦の司令長官の東郷平八郎の名を知る人はほとんどいません。しかし当時、東郷元帥は世界各国で特別待遇を受けた大英雄だったのです。日露戦争以前から親日的だったトルコでは、道路にトーゴー通りと名付けたり、子供にトーゴーと名付ける親が多かったそうです。
 

 日露戦争は二十世紀初頭の世界において、人種の平等や民族の独立などに向けて、人類の歴史を大転換させる程大きな意味を持つものだったのです。

 

歴史を正しく見つめ直す事で明るい未来が開かれる

 

 新年早々戦争にまつわる話ばかり致しましたが、私が何を言いたいかと言えば、日本人が過去に人類史上の大きな役割を立派に果たしたという事をお伝えしたかったのです。
 

 前回の本誌で「過去は変えられる」とお伝えしました。過去の自分にとって都合の悪い記憶や感情も、自己を深く掘り下げる「内観」によって、身近な人から良い事、有難い事、お世話になった事に本当に心の底から気付けばこれからの人生が変わる、という事をお伝えしました。
 

 それに反して、私達の先祖の歩んで来られた歴史を必要以上に悪く見たり、誇るべき事績を教えなければ、子孫である私達や子供たちは明るく胸を張って生きる事が出来なくなるのです。個々人が過去を悪い方向に思い詰めるのと同じように、民族の輝かしい実績や誇るべき歴史をあえて悪く解釈して行けば、決して明るい未来は開けません。現代日本の閉塞感は、歴史を暗黒に塗り潰した結果でもあるように思えてなりません。
 

 六十七年前に終結した先の大戦も、六十年以上の歴史を経て、その後の三十年、四十年間に国内で一般に流布されていた認識を根本から覆す歴史的な史料が数多く発見されました。その結果、以前とは随分違う歴史解釈がなされるようになって来ました。
 

 ところがこの様な日本にとって有意義な史料が発見されても、それを真摯に受け止めてこれまでの通説を覆す歴史教育があまりなされていません。「戦前の日本は悪い国だった」と断罪し続けている人びとの行ないは、個人の精神状態に置き換えれば、決して未来に幸福をもたらす認識とは言えません。先にも申し上げたように過去を暗黒に塗りつぶす事は、未来への飛躍の足を引っ張る方向にしかなりません。

 

苦難の下で輝いた日本人のDNA

 

 昨年の三月十一日の東日本大震災の時、被災された多くの人びとが示された、雄々しくも忍耐強く、そして整然とあの大災害に立ち向かわれた姿は世界の人びとから絶賛され、日本人の国民性の素晴らしさが脚光を浴びました。このように世界から驚きを以て賞賛された私達日本人の行動も、決して一朝一夕に作られた訳ではありません。過去の、世界史に特筆されるような役割を果たして頂いた先人の思いや生活習慣が、現在の私達にも脈々と受け継がれ、DNAとして、秘めた特性として内包されてきたからこそ、あの大震災でも本来持っていた長所の数々が発揮されたに違いありません。
 

 人は困難や危機に遭遇した時初めてその真価が現われ、本来の人格が現れると思います。国家や国民性においても同じように、思いもかけぬ不幸や災難に遭った時、初めてその民族の特性が出現するのです。
 

 この事は六十七年前の大敗戦から「奇跡の復興」と世界から絶賛された事で、すでに証明済みです。私達は日本民族の素晴らしさや、先祖の方々の雄々しさを、もっと誇りに思って良いのではないでしょうか?私達はその子孫としてどの様に生きるかを考えた時、未来に対する明るい見通しと前向きな行動が始められると思います。
 

 人の生き方を決定づけるのは、この様に過去をしっかりと肯定するのと同時に、過去の歴史を感謝と尊敬の思いで受け入れた時、今これから何を為すべきかも見えてくるのではないでしょうか?

 

真如大僧正様の遺訓『三つの生活習慣』

 

 先代の真如大僧正様は、新年の法話で日常生活の中の具体的な事柄を、以下の三点に絞って話されていました。個人の人格にはその内面の思想や心の持ち方も大切ですが、思いの深さ強さ以上に、その人がどんな日々の習慣を実行しているかによって、更に確実な生き方となります。
 

 その三つとは、
 

一、朝から家族で互いに挨拶し合う。

 家庭でも職場でも、先ず挨拶し合う事から一日が気持ちよく始まります。家庭ではご先祖様への挨拶として、佛檀に向かって朝のお参りを致します。
 

二、三度の食事の時、必ず「いただきます」と「ごちそうさま」を言う。

 この「いただきます」は、食べ物の全てが元々生きて命のあったものです。この命に対して「あなたの命をいただき、その命を使って私の活力にさせて頂きます」という意味です。「ごちそうさま」は『馳走』といって、走り回ってこの食物を集めた人、調理して頂いた人に感謝するという意味です。現代の日本の食糧自給率は四十パーセントとも三十パーセントとも言われています。「ごちそうさま」と言う時、世界各地で様々な食物を作って頂いた方、それを運んで頂いた方にも思いを馳せて頂きたいものです。
 

三、履き物を揃える。

 家の玄関の履き物がキチッと揃えられている家は、意外と少ないのではないでしょうか? 家庭の中の一人が家から出る時、帰った時、他の履き物も必ず揃えるようにしていれば、二~三ケ月もしないうちに家族全員の履き物が揃うはずです。履き物を揃える事で家族の心が揃う前提になります。また、この履き物を揃えるという事は、玄関で一度、足元を見つめ、心を落ち着かせる事にもなります。この事が家族の心を落ち着かせ、互いに助け合う習慣が根付いてくるのです。
 

 新しい年を迎えるに当たって、個人においては先の三つの生活習慣を是非実行して下さい。また広くは先人の築かれた輝かしい歴史や、人類史に残る実績をしっかりと評価し、感謝した上で、今度は私達自身が次の世代に良き生き方、良き習慣を伝える決意をして頂ければ有難いと思います。
 

 この良き習慣を伝える時に、「反省」「感謝」「奉仕」の三信条をしっかりと心の中に収めていかれると、生き生きとした命が次の世代にしっかり繋がると共に、さらに良き家庭生活になっていくのであります。




お申し込みはこちら 大日新聞(月3回発行)を購読されたい方は、
右の「お申し込みはこちら」からお申し込みいただくか、
郵送料(年1,500円)を添えて下記宛お申し込みください。
お問い合わせ 〒865-8533 熊本県玉名市築地玉名局私書箱第5号蓮華院誕生寺
TEL:0968-72-3300