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2012年02月21日2002号(1)
「苦難との向き合い方が魂のステージを高める(1)」
寒中に届いた一冊の本
先月末に一冊の本が贈られてきました。著者は藤本猛夫さんで、書名は『生きるための遺書』です。何と強烈なメッセージ性を持った題名でしょう。そして古い信者さんの中には、この著者の名を憶えておられる方が多いかと思います。
平成二年から先代が始められた「親を大切にする子供を育てる会」と熊本朝日放送の共催による、熊本県下の小・中学生を対象にした「子供の詩コンクール」の第一回目の最優秀賞を受賞された、あの藤本猛夫さんです。
また、二年前の本誌三月一日号「人は笑うために生きている?」にも掲載した方です。少しその内容を振り返って紹介します。
難病と闘う青年
彼は二歳の頃「先天性筋ジストロフィー」と診断され、以来熊本再春荘病院に併設された特別支援学校で学びました。中学二年の時、先に記した「子供の詩コンクール」で最優秀賞を受賞されました。
その他にも高校時代から「ミラクルボーイズ」という、同じ筋ジストロフィーの仲間とバンドを結成されました。二十歳で高等部を卒業されてからも、療養生活の傍ら、患者さんの自治会活動を続けたり、パソコンでの印刷活動や講演、執筆活動を続けてこられました。七年前には『ごはんとみそしる』という詩集も発行しておられます。
筋ジストロフィーと言えば、その多くは進行性であり、有効な治療法も少ないと言われている難病で、少しずつ体の機能が衰えていく病気です。彼の場合はその中でも少し長く生きられる特殊な症例との事でした。
藤本さんとの二年前の対話
二年前に私の大切な人が車椅子生活になられた際に少しでも励まそうと、車椅子の大先輩である藤本さんに会いに行きました。その時「あなたにとって人生の目標は何ですか?」という私の問いに、彼は「人は笑うために生きていると思います。自分が笑うことで周りの人を和ませ、幸せな気持ちになってもらえます」と明快に答えてくれました。
続いて「人は何のために生まれてきたと思いますか?」という問いに、「一日でも長く生きることです。そうすれば生きている間に心のレベルを少しでも上げる事ができますから」と答えられました。
残された歳月の少ない彼にとっては、一日でも長く生きること自体が切実な事だったのです。そして彼は「今自史の本を書いています。近いうちに発行したいと思います」と明るい声で言っておられました。
最後に私が「今一番つらい事は何ですか?」と尋ねると、「去年まで出来た事が今年は出来ないことです。私は普通の人より早く体力も機能も衰えていくのです。」と答えてくれました……。
あれから二年を経て、ついに彼の念願の一つだった著書を発行されたのです。
人生観が凝縮された言葉の数々
私の場合は三日・十三日・二十三日と、十日に一度、必ず法話を致します。そしてその内容を本誌に載せるために、原稿も書かなければなりません。言わば必要に迫られて責任感で書いてきたものを纏めて、『弥勒のまなざし』と『祈りの力行動する智慧』の二冊の本を発行できました。
それに対して藤本さんの著書は、自分の生きた証を遺すような思いでコツコツと、衰えゆく力を振り絞って書き綴ってこられた本なのです。
私が感動し、私達の参考にもなると思われる彼の言葉のいくつかを、ここに紹介したいと思います。
「悲観論からは何も生まれません。いかなる困難があっても挫けずに努力する。怯むことなく立ち向かい、危機をチャンスに変える。失敗しても次の成功への挑戦と受け止める時、『私の立場』で伝えることで、皆様の実生活と関連性が生まれる事を願います」この言葉に彼の生き方の基本と、出版の意図が籠められているように思います。
さらには、「一日の時間と行動手順をコントロールし、常に目の前の目標を追い越すのが私の最終目標です」
何と前向きな目標でしょう。私は前々号で九十六歳までの生涯目標の事をお伝えしましたが、「目の前の目標を追い越す」くらいの気迫がなければ、魂のレベルを上げる生き方にはならないかもしれません。
彼は私達と違って、残された未来がより切迫しているからこそ、この様な生き方に目覚める事が出来たのかもしれません。
その事から彼は、自らを『選ばれし生きる者』と自覚するようになって行きます。これは自己を過大に評価したり、自惚れたりする自覚ではなく、難病の中で生きていく中で気付いた自覚なのです。(続く)
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