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大日乃光






大日乃光

2012年02月27日大日乃光2002号(2)
「苦難との向き合い方が魂のステージを高める」(2)

筋ジストロフィー患者の一生

 

また、時には障害者という立場から、「『守られること』だけを望んでいるのではなく、自分たちが『輝ける場所』に飢えているのです。」
 

「差別や区別を肌身に感じる苦境では、『自分だけが苦しいのではない』…無意識に世界中の不幸を一身に引き受け、悲劇のヒーローを演じていたいのです」という具合に、苦しみや悲しみの中にあっても「自らを輝かせたい」という本音も書いておられます。
 

「人口呼吸器で命を繋いできた私にできることは親身に携わり、援助と期待を下さった方々の恩に感謝して貪欲に生きることだけです…。『もしも』や『できるならば』が口癖の生き方は自ら人生を窮屈にします」
 

「人間は『後悔』や『挫折』を蓄えてこそ、真の『未来』を手にすると私は信じます。過去の『成功』とは『一時の勲章』で、『後悔』や『挫折』は未来へ向けてのかけがえのない財産です」
 

以上の他にも多くの重い言葉、輝く言葉が散りばめられています。このような思いや生き方は、三十五年間の藤本さんの病との闘いの中から発せられているのです。

そして最後の方には、
「筋ジストロフィー患者の人生は、健常者が生まれて去るまでの時間を短く、凝縮した壮絶な人生なのです。その凝縮した一生は、百歳まで生きる者に決して劣りません」
 

これはまさに、二年前に藤本さんと久しぶりにお会いして感じていた事でした。人はいかに長く生きたかではなく、生きている間にどんな生き方をしたのか? 何をなしとげたのか? そして何と言ってもその人生の中でどの程度心のレベル、魂のステージを上げる事が出来たかという一点にかかっていると思います。

 

第一の仮説 人は生まれ変わりがある

 

随分以前に出会った、『生きがいの創造』(飯田史文彦著/PHP研究所より平成八年刊行)という本で学んだ事があります。ヨーロッパで臨床心理療法を行なっている方々の学会で「人は生まれ変わりがある」という第一の仮説が認定されました。
 

本来キリスト教文化圏は、インド・中国そして私達日本人のように、生まれ変わりとしての輪廻転生は認めていない社会でした。しかし数々の治療現場で前世を記憶しているとしか思えない事例がたくさん出てきたのです。それらの事例の客観的な調査を続ける中で「人には生まれ変わりがあり得る」という大胆な仮説が成立したのです。

 

心の向上のために障害を選びとる生き方

 

この「人は生まれ変わる」仮説が認められると、次々と新たな仮説が立てられました。その中で「なぜ生まれながらに障害(ハンディーキャップ)を持って生まれる人がいるのか?」という疑問が発せられました。その前に「人はその人生で、心のレベルを上げるために生まれている」という別の仮説が出ていました。

先の問いに対する一つの答えとして、人の魂は次に生まれて来る時「より高いレベルに到達するために、苦難の多い障害などを敢えて選び取って生まれてくる人がいる」という仮説が成立したのです。

 

この考え方に基づいて、障害を持って生まれた人を見つめると、「何と勇気のある信念の強い人びとなのか!!」と思わずにはいられません。この仮説は、これまでの障害者に対する私達健常者の見方を、百八十度転換する考え方に導いているのです。
 

これまで私は耳が聴こえない少女、足が動かない少年、目が見えない青年、筋ジストロフィーの少年といった、幾人かのハンディーを持った人々に巡り遇いました。それらの人びとは、皆同じように心が清らかで感謝の心と信念が強く、そして意外に明るく、そして藤本さんのように「人生笑うために生きている」という信念をも持った人にも出会いました。
 

ですからそのような障害を持って、障害と共に生きてきた人びとは「特別な選ばれた人」と思っていました。しかしそれだけではなく「障害を選び取って生まれた勇気ある人」だったのです。藤本猛夫さんを始め、多くの障害の中で生きる人々の人生は、私達よりもはるかに日々の生活を真剣に、切実に、そしてたくましく生きておられるように思います。

 

苦難の階段が魂の歩みを進める

 

皆さんも是非、先の『生きるための遺書』を手に取って、読んでみて下さい。今、人生の岐路に立っている人、苦難の中に居る人、難病で苦しんでいる人びとに敢えてお伝えしたい事は、今のその苦しみは心のレベルを上げるために、自分自身の潜在意識の中で選び取った苦しみなのかもしなれいという事です。
 

一般的に病気や不幸は嫌なもので、ほとんどの人はそこから逃れたいと思います。しかし多くの人々が、不幸や災難の中から起ち上がる時、人生をより価値あるものにする「何ものか」を学ぶ場合が多いと思います。

その意味で、人々は心の奥深いところで苦難の意味を理解して、受け入れていきます。その事によって、生まれながらにハンディーを選び取った勇気ある人達ほどではなくとも、より力強く魂の歩みを進める事になると思います。今の苦しみは、そのための苦難であると思い定めてみてはいかがでしょうか。

 

まだ確認したわけではありませんが、藤本さんは、何がしかの信仰を持っておられるように、私には感じられました。世間には「宗教は弱い人達のためのもの」とか、「自分は信仰に頼るほど弱い人間ではない」と言う方が少なからずおられます。

しかし良い宗教、まともな信仰というものは、人に人生の意義や目的を与えるものです。人生をより真剣に、そしてより深く生きるためにこそ宗教はあり、そのための生活に方向を与えるのが信仰なのです。

 

苦難の中に居られる方も、そうでない方も、ぜひ、日々の生活の中で「反省」「感謝」「奉仕」の当山の三信条を照らし見て下さい。
 

少しずつ、春の足音がかすかに聴こえてきました。そして確実に春が巡って来ます。冬の寒さから逃げるのではなく、どうか寒さに立ち向かうような強い心持ちで日々を送って行きたいものです。
 




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