2012年12月24日大日乃光第2030号
お母さんにしてもらったことは何ですか?(大山真弘)
内観研修所開設25周年記念出版
今度、お陰さまで、㈱サンマーク出版から『お母さんにしてもらったことは何ですか?』(大山真弘)という本を出版しました。十二月二十日頃から全国の書店に並ぶと思います。編集者が五十件ものデザイン案から選んだだけあって、非常にきれいな表紙ですので、是非一度手にとって、ご覧になって下さい。
蓮華院誕生寺では二十五年前から、「内観(ないかん)」を毎月一~二回開催し、今までに二千名以上の方々が体験されました。仕事がうまくいくようになったり、家庭や子供の問題が解決したり、心理的な病気が軽くなったり、中には、大きく人生を好転させるきっかけとなった方もおられます。
今まで続けてこられた上に、様々な効果があったのは、ひとえに、ご本尊皇円大菩薩様、貫主様、宗務長先生始め、面接の手伝いや、食事や寝具等のお世話をして下さった寺内の方々、それから、内観者の方々のお陰と、心から感謝しております。本当にありがとうございました。
蓮華院に内観に来られる方々は、会社研修や自己啓発や色々な問題や病気や、また、他の人を内観させたいが、そのために先ず自分が体験するという人、それから、成人記念内観、結婚記念内観、定年記念内観など、様々です。
問題や悩みを抱えてこられる方ほど熱心に内観されるので、大きな効果を得て非常に明るい顔で帰られる方が多いようです。多くの内観体験者が、前より幸せを感じ取る力が強くなり、楽に生きられるようになったと言っておられます。
「感謝できることは周りにあふれていた」
それでは、最近の内観体験者の感想文をひとつ紹介したいと思います。
私が七日間の研修を通して感じたこと考えたことを、ただただ書いていこうと思います。私自身、研修に来るまでは、正直言うと不安であったり、めんどうな気持ちであったり、それでも少し楽しみに感じていたりと、様々な気持ちを持って研修を受けに来ました。
そして遂に、一日目の内観が始まり、初めに母に対して「してもらったこと、お返ししたこと、迷惑かけたこと」の三項目を調べていったのですが、これがまた、なかなか思い出せないので、困ってしまいました。私自身、母に対して恨みなど全く持っていなかったのですが、先ず一番目の「してもらったこと」も少ししか思い出せませんでした。
例えば、毎月お小遣いをもらっていたという小さな事しか出てきません。それで、次に「お返しした事」に進むのですが、これに関しては、よく勉強をした、洗濯物をたたむのを手伝ってあげたなど、いくつか具体的なものが出てきました。ここまでくると、最後の「迷惑をおかけしたこと」になるのですが、もうこの辺で、「早くご飯が食べたい」や「あと六日間もこれが続くのか」などの不満のようなものが出てきていました。
しかし、三日目の昼頃から少しずつ変化が出てきたように思います。それは大山先生からの助言であったり、お昼のテープあたりが私に気付かせてくれたのだと思います。母に対する二度目の内観を行っていると、「してもらったこと」がとても沢山数え切れない程あることに気付き、「お返ししたこと」などは、一つも無いということに気がつきました。
そこからは、全てが何と言うか、少し感動・感謝する心が出てきました。例えば、いつもなら「早くご飯の時間になってくれ」と考えていたものが、「ご飯をわざわざ作って頂いて、その上、自室まで持ってきて頂けるということは、何てありがたいことなんだ」と思えてきました。
持ってきて頂いたご飯も、いつも温かくて、栄養と野菜がたっぷり入っていて、デザートまでつけて下さって、とてもおいしく、食べる前には、手を合わせてからでないと、とてもではないが、自分にはもったいなくて頂けない様な食事でした。
そこから先は、もう何もかもがして頂いている気持ちで、窓の外の木が色づいていることも、鳥が空を飛んでいることも、トイレの窓から犬が眠っている姿が見れることも、全てがありがたくて、幸せな気持ちにさせて頂きました。
そして、六日目、七日目の朝には、これは自分でも驚いたのですが、目が覚めること、指が足が動くことに対して、「良かった。幸せだ」と思っていました。そして、今現在、これを書きながら、窓からの暖かい日差しにもありがたみを感じ、幸せな気持ちにさせて頂いています。
内観というものを通して、私は、感謝できることが周りにあふれているという、ありがたみと幸せに初めて気付くことができ、その気持ちを忘れずに、自分にも何かして返せることはないだろうか、と考えながら、これから生きていこうと思うことが出来ました。
内観研修所の皆様、たくさんのお世話をして頂き、本当にありがとうございました。全てありがたく甘えさせて頂きました。この気持ちを忘れずに、しっかりと幸せに生きていくということで、少しでもお返しが出来ればよいなと考えています。本当に七日間ありがとうございました。
考える視点を変えてみる
心理学用語に、「リフレーミングreframing」という言葉があります。これは、「視点を変えて考えてみる。考える枠組みを変える」ということです。同じ事について思考するのでも、そうすることによって、今までとは違う側面を発見したり、気付いたりします。
内観では、客観的に自分自身を観つめてみようとします。そこで重要なのは、視点を変えて、相手の立場で相手になりきって、自分自身を見つめてみるということです。あるいは、鳥の目(バード・アイ)のように、高所から、相手と自分とを客観的に観てみるのです。
すると、相手の立場から自分を観るというリフレーミングによって、過去の景色が違って見えてきます。ある出来事も、自分からはこう見えていたけれど、相手から見ると、今まで思っていたのとは違う風景が見えたり、思いがけない発見や、自分の誤解に気付いたりするのです。これは、人間関係だけでなく、仕事やボランティア活動など、様々な分野で応用のきく方法です。
内観では、三つの質問を繰り返します。(一)してもらった事、(二)お返しした事、(三)迷惑や心配かけた事の三つです。これを対象人物や時期を変えながら、繰り返していく事によって、自動的に他者からの視点で、自分自身を観る様になっていくのです。その結果として、今までの自分の思い込みや、誤解や、間違いに自分自身で気付いていきます。
それから、内観は人間の本質的な部分に迫るところがあります。つまり、本来持っているものに自発的に気付かせ、取り戻させる働きがあるのです。ですから、内観は、今までに染み付いた様々な心の汚れや垢を落とし、人が本来持っている純粋な心、例えば、愛情、親切心、感謝、慈悲心と、私達が本来持っていたそういうものに目覚めさせてくれます。だから、内観は国籍、人種、老若男女を問わず、世界中で有効なのです。
このように、内観は、私達に本来の心を取り戻させ、幸福を感じ取る力を強くします。その結果、人生を今までより楽に、楽しく生きられるようになるのです。
大事なことは、知ることよりも、行うこと
皆さんは、お風呂に入ったり、歯を磨いたり、マッサージをしたりして、体の手入れはよくされていることと思います。年末になると大掃除をして、家の手入れもしますね。ところが、自分自身の心の手入れやお掃除は放っておく人が多いのではないでしょうか。内観は、言うなれば心の大掃除です。体だけでなく、心の健康の為にも、今年は、「ちょっと内観」で、三つの質問を自分に問いかけてみられると、面白いと思います。
内観で最も大事なことは、知ることよりも、行うことです。ブラジルにパルミットという食べ物があります。ヤシの新芽なのですが、「竹の子に似ているけれど、もっと柔らかくて、色は白くておいしいよ」と言っても、実際に食べてみないことには、本当の味は分かりません。内観も同じです。実際に自分で体験しないことには、気付きや発見は得られません。
現在悩んだり、問題を抱えている人や、病気の人は、なかなか自分自身や問題や悩みを客観的に観ることが出来ません。ですから、他人に相談したり、貫主様の特別指導を受けたり、カウンセリングや内観という手法があるわけです。
『お母さんにしてもらったことは何ですか?』は、もうすぐ十二月二十日頃に全国の本屋さんの店頭に並びます。是非、皆様も手に取ってご覧になって下さい。きっと、涙し、心温まり、癒され、色々な気付きや発見があることでしょう。そして、皆様が幸せな年末を過ごされ、更によい新年を迎えられますことを心からお祈り致します。合 掌
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