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2013年04月03日大日乃光第2039号
『信仰と夢を持つ後姿をしっかりと子や孫に見せよ』

新入学の心構え

いよいよ桜の開花と共に新年度が始まります。例年この時期には新しく小学校や中学校に入学するお子さんやお孫さん達のために、保護者の皆さんにお伝えしている事があります。

それは、これから小学校に入学するお子さんの保護者には特にお願いしたいことですが、小学校や中学校そのもの、或いはその先生方に対して、子供達の前では批判的な言い方を絶対にしないで頂きたいのです。

それよりも、その学校がどんな歴史や伝統を持っているかなどをあまり知らなくても、担任の先生がどんな先生なのか全く知らなくても、子供の将来のために必ず学校や先生を褒めて頂きたいのです。

子供が一番信頼している両親や祖父母が一言でもその学校や先生をけなすような言葉を言おうものなら、子供は何の迷いもなく、その学校や先生に憧れを持つ事は出来なくなるでしょう。

人は先生に憧れを持ち、それが尊敬に変わっていく時、教育効果も存分に上がるのであって、先生を軽く見たり否定的に感じていたのでは、子供自身にも決して良い結果を生まない事は、少し考えれば誰にでも分かる事です。

生徒の心の支えとなった小学校の先生

これとは逆の、先生から見たある生徒の話が、『毎日がいのちのまつり』(草場一壽著/サンマーク出版)に著されていました。

ある小学生の五年生を受け持った、女性の先生のお話です。

生徒の中に身なりが薄汚く覇気のない一人の少年がいました。先生はどう接したら良いのか困られて、過去の生活記録を読んでみました。

すると一年から二年生まではとても元気で前向きな、皆から好かれる人気者で、成績も優秀とありました。そして将来は医者になりたいと記してありました。

そんなはずは無いだろうと続けて読むと、三年生の時、母親が重い病気に罹り、看病疲れなのか授業中にいねむりが多くなり、宿題もしない事が多くなりました。

その後とうとう母親が亡くなると、アル中になった父親から度々暴力を受けている。成績は益々下がって行く…と書いてありました。

その先生はここまで読み、放課後、「よかったら、私が学校にいる間はそばで勉強をみてあげるから、一緒に残らない」とその子に伝えました。するとその子は目を輝かせてうなづきました。それからというもの、少しずつ成績も上がってきました。

家庭訪問の日に、その子が小さなビンを先生に手渡しました。そして「今日の家庭訪問ではその小ビンの香水を付けて来て下さい」と言ったのです。

先生はその小ビンが、かつて彼の母親がつけていた香水だと気付き、その香水を付けて彼の家を訪問しました。彼の家に着くなり、彼は飛びついて来て、「お母さんの匂いだ!!ほんの少しの間だけでもボクのお母さんになって!!」と、目に涙を浮かべて喜んだそうです。

人生を変えた先生との巡り合い

以来、彼の成績は急激に上昇しました。中学・高校を卒業する頃には、その先生の許に必ず便りが届きました。そしてついに、彼の念願だった医学部に合格しました。

その後、医師の国家試験に合格した時には、「人の痛みが分かる医師になりたい」と伝えて来たそうです。

その次に来た便りは結婚式の招待状でした。それには、「是非先生に母の席に座って頂きたい…」と添え書きされていました。

その先生も、この子と巡り合ったお陰で教師としての役割や、一人一人の生徒としっかり向き合う事の大切さを学ぶ事が出来たと言っておられるそうです。

私が小学校五年生の時にも、この話と少し似た経験がありましたので、この文章を書きながら涙があふれてきました。

この先生と生徒のような劇的な巡り合いは無くても、皆さんのお子さんやお孫さんにとって人生を変えるほどの先生との巡り合いが、実はこの新学期にあるのかもしれません。

そう思えば、子供達がどんな先生と巡り合うのか、またその巡り合いが生涯を決定する巡り合いになるのかならないのかは、それを見守る保護者の心構えと期待感の大きさにあると思われます。

恵まれた日本の教育環境

今一つ皆さんにお伝えしたい事は、一人の小学生が一年間学校に通うために、国や県、市や町などが、総額でどれくらいの税金を使っているかを少し考えてみて下さい。

県によって少し違いはありますが、財務省二〇一一年資料では、何と小学生一人当たり、一年間で八十四万円弱もの税金が使われているのです。六年間にすると五百四万円にもなります。小学生を三人持つ親は、何もしなくても千五百十二万円もの税金による支援を社会や国から受けて小学校に学ぶのです。中学生になると、一人当たり年間九十四万円強を超える税金が使われています。

小中学生を持つ若いお父さんお母さんは、果たしてそれに見合う税金を収めているのでしょうか?その意味では「世間には迷惑をかけていない!」とか「人様のお世話にはなっていない!」などとは到底言えないのです。

そこで前回お伝えした、「人は四恩の拔済のために生くるなり」の中の国土・国王の恩、一切衆生の恩の具体的な恩恵が一人の小学生にも確実に及んでいるのです。

ミャンマーで学校建設プロジェクト

いよいよ今月から、平野君がNPO法人れんげ国際ボランティア会(ARTIC=アルティック)のスタッフとして、ミャンマー南部のイラワジ地区に小学校を三十校造るために渡ります。

彼の計画では、日本の小学校の校区よりも少し狭い範囲でその地域の特性を充分に見極めて、その学校が将来的にその校区周辺に住む人びとによって支えられ、運営されていくための仕組みを作りながら建設を進めていく事になっています。

教育予算が日本のようには余裕のないミャンマーでは、先生方の給料が充分にありません。そこで地域の住民が皆で学校を支えて、先生の給料の不足分を補うのです。

今日の日本の教育事情とは違って、平野君提案のこの方法によって住民や保護者が学校に深い愛情と関心を寄せ合い、住民皆の学校という意識が高まるのです。村人が学校に農園を開設したり、学校のための林業を営んだり、場合によっては皆でお金を出し合って水力発電所を造り、その電気代を積み立てながら学校を支えるのです。

貧しいから不幸とは言えない

経済的に豊かな日本と貧しいミャンマーを比べたら、果たしてどちらに愛校心や愛郷心が育つでしょうか?一概に、貧しい事が全面的な不幸の原因であるとは言えないようです。

貧しいという字は貝を分けると書きます。貝はお金や財産の事です。これを分かち合って生きる人びとが貧しい人びとでありますが、貧しいからと言って、必ずしも不幸であるとは言えないと感じるのは私一人だけではないでしょう。

翻って社会や学校では、生徒達だけでなく保護者の人びとにも生徒一人当たり八十四万円前後を国や地方自治体の皆さんで出し合っているという、この現実をしっかりと伝えるべきなのです。そうすればモンスターペアレントなどと言った、自分の子供の事しか見えない、自分の事しか考えない人が少しは減っていくのではないでしょうか?

そして何と言っても四恩の一つ「父母祖先の恩」を親本人が直接子供に伝えても、効果が半減するばかりでなく恩着せがましくなりますので、学校や地域社会、もっと身近では近所のオジサンやオバサン達が、子供達に親の有り難さを時には教え諭す事の大切さを感じております。

子どもを伸ばす、ひたむきな親の後ろ姿

新年度に当たって、私の経験からもう一つお伝えしたいのは、子供に「勉強しなさい」と言っても全く意味が無いということです。皆さんご自身が、親から「勉強しろ」と言われて素直に本気で勉強したことがありますか?私の場合はほとんどありません。むしろ机に向かうふ
りをしただけで、本気で勉強した覚えがありません。

こんな事を言ってお互いに嫌な思いをするよりも、親自身が勉強している姿を子供に見せる方が、遥かに効果的です。感心な事に、私の妻は子供が受験を迎える頃になると、何らかの資格を取るために彼女自身が勉強をしていました。私は本誌を書くために調べものをしたり、執筆をなるべく子供達に見せるようにしていました。

義務教育の終わりに、これからの進路を問う

そして私は「あなた達が勉強が好きでなければ、中学校を卒業したら働いて欲しい。高校三年間でいくら費用がかかるか計算してごらん。

その三年間働けばいくら貰えるかも計算してごらん。その合計が私の負担になるのだよ」と、何度も伝えていました。

すると長女は妻と話し合って、地元の高校受験に合格すると「お父さん、○○高校に合格しました。高校へ行かせて下さい」と言ってきた

のです。私はすぐに「よし高校へ行っていいよ」と答えましたが、内心「ヤッター、『高校に行かせて下さい』という言葉が出るとは作戦大成功!!」と、ほくそ笑みました。高校や大学は行く権利があるのではなく、親の理解と協力で「行かせてもらっている」というのが正しいと思うのです。

私のささやかな経験をあえてお伝えしたのは、世界中で何不自由なく高校や大学に行けるのは必ずしも大多数ではないという現実を子供達に知ってもらい、何のために生きるのかという事と同じように、何のために勉強し、進学するのかを常々子と親が充分に話し合う事、そして親は少々背伸びしてでも子に尊敬される存在であり続ける事が大切だと思います。

人は憧れる人が近くにいれば、その人に近づきたいと思い、さらにはこの憧れから夢を育み、生きる意味と目標が、より明確になってくるからであります。

人はどんな家庭に育つかで、人生が半分決まると思います。親である私達自身がしっかりした信仰と夢を持ち続け、子や孫に生き生きとした後ろ姿を見せていきたいものです。合掌



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