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大日乃光






大日乃光

2013年04月24日大日乃光第2041号
「月極め先祖供養で〝幸せの種〟を発芽させよう」

自然の息吹きを感じながら七回目の「求聞持行」

奥之院を囲む小岱山の山並みが、生き生きとした新緑の息吹きを伝えてくれています。貫主堂の裏の朴の木も、花を付け始めました。小学校の新入生が、輝かしい笑顔で保護者と登校する姿が全国でも見られたことでしょう。

そんな中で、私は今回で七回目になる「求聞持行」に入っています。前回の六回目と同様に妻の介護が必要ですので、以前のように奥之院の求聞持堂に籠って行じるのではなく、毎日の早朝の祈祷を修する貫主堂で行じています。

今朝(四月九日)、百万遍の内の七十万遍になるところです。この行中という事もあって、新緑の輝きや新入生の笑顔が、いつになく強く心に響いてきます。夜明け前の鳥の声や、草花に輝く朝露にも心を動かされます。全てのものが光り輝いているようにも感じられます。

一心に御宝号を唱えていると、自分自身の胎内を巡る血液の動きや、吐く息の色、吸う息の香りさえも親しげに感じられます。

日本の四季の中で、私はこの頃が一番好きな季節です。修行中でなくても生き生きとした草や木の息吹きが最も感じられ、今回の「求聞持行」は、ことさら有り難く感じられます。

壮大な夢を若者が謳うNPO法人「夢・大アジア」

そんな中で、最近、チベットを支援する運動の中で巡り会った三十代の青年がNPO法人を設立し、支持者を増やす集いを催す事になりました。その集いの講師を私が紹介した経緯もあって、集いの最後でその講師と対談する事になりましたので、万難を排して博多の会場に駈け付けました。

そのNPO法人は「夢・大アジア」という壮大なスケールの名前です。最近私は目標や夢を持つ事の大切さを度々お伝えしておりますし、〝大アジア〟の前にこの〝夢〟を冠する団体名そのものに、先ず惚れ込んでしまいました。

近年は、日本全体がワクワクするような夢を語ったり、しっかりとした大きな夢を思い描いている人が少なくなっています。かつて世界に向けて、大いなる大アジアの夢に向けて、先人が命をかけていた事実を知り、その生き方を目標にしている人はさらに少ないと思います。

ともすれば自分個人の夢は描き得ても、広く国家社会、ひいては世界の中での役割を、夢
を持って熱く語り、行動する人は極めて少なくなっています。そんな中で、三十代の人々が中心となって、この「NPO法人 夢・大アジア」が設立されたのです。

アジア各国が願っている日本人自身の歴史認識の覚醒

集いのメイン講師は、初代ダライ・ラマ法王日本代表部事務所代表であったペマ・ギャルポ博士でした。ペマ博士は四十数年前にチベットから日本に亡命されて以来、祖国チベットがいかに理不尽な形で中国に侵略され併合されて来たか、佛教を中心とするチベットの文化がいかに弾圧されて来たかを話して来られました。

それは近い将来に日本が向き合わなければならない厳しい現実でもあると、様々な機会を捉えて訴え続けて来られました。そして今回も、当初はそのような話を予定されていました。

しかし事前に送られて来た、このNPO法人の設立趣意書などの資料を読み、ペマ博士は話の内容を全面的に変えられたそうです。ペマ博士は、かつて欧米諸国がいかにしてアジアを侵略したか、その中で日本人が大変な危機感を以て雄々しく立ち向かって来たかを中心に話されました。

そして一部の例外を除くほとんどのアジアの国々は、かつての日本が果たした役割を今一度、日本人自身の目と心でしっかりと見つめ直し、先人の果たした努力に向き合って欲しいという主旨のお話でした。

自己否定の戦後史観を克服
 
私も常々本誌で、戦前の日本人が果たした世界史的な役割の大きさと行動力をお伝えしてきましたので、ほどんどの話は充分に賛同できるものでした。

それに対して現代の日本人は、歪められた戦後の歴史教育で、明治維新から終戦までの歴史をほとんど否定的に受け取っていると言っても過言ではないでしょう。

これは先の大戦の戦勝国であるアメリカが押し付けた歴史観以外の何ものでもありません。私達はもうそろそろ自分の手で、自国の正当な歴史を取り戻す時期に来ています。

もちろん国内の不満を吸収するために、ことさらに他国を批判的に捉えたり、自己を過度に高く評価するような事は慎まねばなりませんが、従来のように最初から否定的に評価するのではなく、少なくとも自分の先祖やふるさとを見つめる時のように、温かく好意的な見方に立った歴史を、次の世代に伝えるべきです。

今もインドネシアで尊崇される独立の大義に殉じた旧日本兵

かつて大東亜戦争中、日本軍によって駆逐されていたオランダ軍とイギリス軍が、戦後、再び既得権を主張してインドネシアを植民地支配しようとした時、現地に残留した旧日本兵千数百名がインドネシア独立のために義勇兵として先頭に立って戦ったのです。

その多くは戦いの渦中で亡くなりましたが、独立後のインドネシア政府は、生き残った旧日本兵を国家的な英雄として遇しました。その元兵士の方が亡くなると、遺族に対して儀仗兵が正装で敬意を表し「故人を国立英雄墓地に葬りたいが、いかがでしょうか?」と問い掛け、ほとんどの遺族は「よろしくお願いします」と答えたという事です。十八年前の独立祝賀パレードの最前席には、その頃まだご存命だった方々に座ってもらったという事です。

以上のインドネシア独立戦争の話をかつて三人の娘達にした時、三人は同じように目に涙を浮かべながら、真剣に聞いてくれました。このインドネシア独立五十周年祝賀会について、当時の日本のマスコミは、その最前列の旧日本兵の事を全く伝えませんでした。

しかし何の予備知識もない小中学生の女の子でも、私達日本人の先輩が、インドネシアだけでなく多くのアジアの国々で、ほぼ同じような働きをされた事を知ると、感動で身を打ち震わせて真剣に聞いてくれるのです。

果たして現在の歴史教育の中で、先人や先祖の果たした歴史的な役割を、このように感動を以て学ぶ機会があるでしょうか?昨年末から始めた「ミャンマー/ビルマご遺骨帰國運動」で、これからご帰国頂く旧日本兵の中にも、かつてのビルマ独立戦争に自ら先頭に立った方々も少なからず居られるかもしれません。

日本固有の自然観「草木國土悉皆成佛」

さて、その集いのペマ博士との対談の中で、私は少しでも日本人としての誇りに繋がる話として、こんな話をしました。

近年、ダライ・ラマ法王猊下は来日される度に、必ずと言って良い程、日本の有名なお寺だけでなく神社にもご参拝されています。

昨年の日本の科学者との対談の中では、法王猊下が動物以外には魂が宿っていないとする考え方を提示されたのに対し、日本の科学者からは、日本人が人間や動物以外にも、植物はもちろん、山や川、石や土にさえも魂が宿っていると考えてきた事を提示されました。

ダライ・ラマ法王猊下はインド佛教の正当な継承者であるチベット佛教を代表する立場ですから、山や川にまで魂が宿っているとする考えにはすぐには賛同されませんでしたが、日本人が生み出した、全てに魂が宿るという先の考え方に少しずつ傾いておられるようにも感じられました。また、この考え方は、最先端の素粒子論などによっても近年証明されつつあるとの事です。

これは日本の豊かな自然環境の中で、私達の古い古い祖先の心が育み育てた生命感であり、世界最先端の宗教的な感性でもある事を、私達はもっと知るべきだと思います。

このような生命感に裏付けられた日本人の感性を自覚する中から、自らの民族性や、その中で紡いできた輝かしい歴史を「全てのものに命を見いだす」日本人の心の在り方を学び直す事が大切だと思います。その中から未来に向けた大いなる夢や、世界的な視野に立った前向きな行動力に繋がって行くに違いありません。

若者の頼もしい行動に垣間見た先祖伝来の魂の息吹き

先の集いは三十代の人々が中心となって結成されている事も驚きでした。集った人々は約百五十名でした。最後にそのNPO法人の三十八歳の理事長が、ミャンマーのご遺骨に関して、「七十年近く経った今も、私達はあなた達の事を忘れていませんと、英霊の方々に誓う気持ちを募金という形で確かめましょう!!」と熱く語って頂きました。その結果、十二万円を超える浄財が集まりました。この所、ご遺骨帰国の募金が停滞している中で嬉しい出来事でした。

そして若い人々の中にもしっかりとした歴史観と使命感を持つ人々がいて、地道な行動を起
こしておられる事に明るい未来を予見する事が出来て、好ましく頼もしい一時でありました。

この日本という国土で連綿と文化と宗教と歴史を紡いで来られた先人や先祖の方々の祈りにも似た後世への思いが、意識するしないに関わらず、全ての日本人の魂の中枢にしっかりと現存すると信じています。

「求聞持行」で授かった幸せの〝種〟

当山で行なっている先祖追善護摩供養は、多くの信者さんが月極めで毎月毎月決めた日から五日間、十日間、さらには三十日間と続けておられる方が大勢おられます。

この功徳の一つとして、千年以上も連綿と伝えられてきた民族の良き〝種〟に水をやり、発育を促すことなのではないかと最近気づきました。この〝種〟こそ幸福の源であり、平穏の基礎となるものであり、さらに人生を輝かせる開運の根源に繋がっているように思います。この気付きは求聞持行中に授かった大きな功徳の一つなのかもしれません。

皆様も是非、日々の精進の中で未来に向かう幸せの〝種〟に、光と水を与えるような気持ちで日々をお過ごし下さい。合掌



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