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大日乃光






大日乃光

2013年07月02日大日乃光2047号
「ミャンマーに眠る英霊のご遺骨をふるさとの家族のもとへ」

皆さん、お早うございます。
昨日の「功徳行」から始まって「龍火くだり」を経て、信者の方々の体験談発表、そして深夜の大護摩祈祷。日が改まって先程の皇円大菩薩様御入定八百四十五年御遠忌大法要と、密度の濃い一時を同信の全国の信者の皆さんと一緒にお過ごしになられて、心身共に満ち足りた心地良い充足感の中に身を置いておられることでしょう。

有志の運動から国の事業へ、タイで見えてきた道筋

さて、昨年から宗派を超えた同志の僧侶の皆さんと共に始まった「ミャンマー/ビルマご遺骨帰國運動」は、ミャンマー国内の現地で着々と調査が進んでいます。去る五月二十日から二十二日にかけては、タイ国内のチェンマイにおいて日本の厚生労働省援護局の職員二名をお招きして、十三の少数民族の担当者との研修会が催されました。

これは、これまで既にそれぞれの地域でご遺骨の調査を開始しているグループからは、その成果を発表して頂き、調査状況についての情報を共有するのと同時に、厚労省の方からのアドバイスを受けるなどの充実したものだったようです。

旧日本兵のご遺骨の帰還(帰国)という仕事は、本来国家のやるべき仕事です。その意味で、今回の研修会に日本政府の厚労省の職員が参加して下さったという事は大きな前進であり、日本政府が近い将来この仕事を引き継いで頂く道筋の一つが出来た事になります。

国家の大事が民間主導で始まる?

本来国家が行うべき仕事であっても、その運動が民間から始まって、次第に国民的な関心が高まり、ついには国家が取り組むという事は、今回のご遺骨の帰還(帰国)以外にもいくつか思い当たります。

その一つが北朝鮮の拉致事件です。これも民間からの運動が長い時間をかけて次第に社会を動かし、国民に広い関心を呼び起こし、ついに政府が動いた出来事でした。こちらも未だに解決していない、日本民族としての悲しい出来事の一つであります。

しかしミャンマーのご遺骨の帰還(帰国)は、その達成がそれ程困難な事ではなく、解決まではあと数年と思っております。ここで少し説明が必要です。

本来国家の仕事であるべき旧日本兵のご遺骨の帰還(帰国)は、ミャンマー国内の少数民族の支配地域に残された四万五千余柱が対象です。ミャンマー政府に対する日本政府の公式な動きとしては、外交ルートを通じて「貴国内の旧日本兵の遺骨帰還に協力して欲しい」と正式に伝え、ミャンマー政府がそれを了承して初めて実施出来る事柄なのです。

非公式だから可能な事もある

しかしミャンマー国内であっても、ミャンマー政府の支配が完全には及ばない三十パーセント程の北部山岳地帯の国土にあるご遺骨というのが大きな問題なのです。

日本政府はこのような情勢の中では公式には動けません。そこで私達民間で集められた募金によって、少数民族のそれぞれの担当の方々に調査に入って頂いているのです。

私達は、ミャンマーに完全な和平が実現してから調査に入るよりも少しでも早く英霊のご遺骨に帰還(貴国)して頂けるように、この運動を開始したのです。

険しい完全和平への道のり

五月三十日、ミャンマー政府とカチン独立軍との間の和平会議がカチン州の州都で行なわれ、停戦合意文書が署名されて、いよいよミャンマーにも真の和平が見えてきたかと考えられますが、事がそれほど簡単に進むかは慎重に見極める必要があります。

何と言ってもミャンマー政府による六十年以上続いた分断政策によって、ミャンマー国内の主な少数民族の十三部族は互いに疑心暗鬼を抱き続けるように仕向けられ続けてきたのです。

それが私の盟友の井本勝幸師の努力によって、ビルマ民族統一機構(UNFC)が成立し、少数民族が一つにまとまる形勢にある事は以前にもお伝えしました。その一方で、カチン州を主とする一部地域では、最後まで戦闘が続いてきました。

先月のNHKのBS放送では、ミャンマー政府とカチン側との停戦交渉が、中国の主導で中国領内で開催された様子が放映されました。その交渉の席で、カチン側が中国以外の第三国の立ち会いを提案していました。

普遍的価値観に立脚しない日本の外交

このカチン側のもっともな提案に対して、ある宗教系の民間団体が日本とイギリスの各大使館に仲介役を求めたところ、イギリスの大使は快く承諾した一方で、日本大使館は「内政干渉になる」との理由で、その依頼を門前払いにしていた事を伝えていました。

「内政干渉」という言葉は「チベット問題」について中国政府がよく用いる言葉です。しかし「人間の尊厳」や「信教の自由」「民族の自治権」などは、人類全てにとっては共通の普遍的な価値観です。

それにも関わらず、日本政府は「チベットについての色々な発言は内政干渉である」と言われたら、途端に口をつぐんでしまいます。こんな事にも、民間から声を上げたり行動を起こす事の意味があると気付かされます。

日本という国は、外交の面では長年アメリカに追随して来たため、自らの意志で未来を切り拓く事がなかなか出来にくいようです。

一方、先月の総理のミャンマー入りでは多額のODA(政府開発援助)を正式に決定しています。ミャンマーの和平や民族支援のために、民間の立場で現地で働いている勇気ある人々の気持ちを代弁すれば、「日本政府はもっと真の和平に本腰を入れて欲しい」と思っておられる事でしょう。

それでも旧日本軍のご遺骨のほとんどが、未だにご帰国出来ていない中国や北朝鮮の現状に比べれば、ミャンマーはまだまだ良い方なのかもしれません。

未帰還の英霊に対して行う 「内観」

私はこのミャンマーのご遺骨四万五千余柱が祖国に帰りたくても未だに帰れない現状に対して、全く別の見方が出来る事に思い至りました。

それは日本国家そのものを一人の人格として考え、自分自身が日本国になったつもりで内観的な考えを当てはめてみる事です。すると全く別の視点がある事に気付いたのです。

一、日本国(私)が未帰還(帰国)の英霊に、して頂いた事は何か?
①尊い命を犠牲にして、アジアの国々の独立に向けた灯を掲げて頂いた。
②五百年に亘る欧米の植民地支配に区切りを付ける出発点を築いて頂いた。
③結果的に失敗に終わったビルマでのインパール作戦であったが、ビルマとインドの独立のきっかけを作って頂いた。

二、日本国が未帰還の英霊に対してお返しした事は何か?
①これまでに出来る限りにおいて、ご遺骨に帰国して頂いた(その努力が充分であったかどうかには疑問が残る)。
②ご遺族の方々にささやかな遺族年金をお出しした(その金額が充分であったか否かは分からない)。

三、日本国が未帰還の英霊にご迷惑をおかけした事は何か?
①この二十年余り、英霊の方々のお働きを「アジア諸国に迷惑をかけた侵略戦争であった」と世界に対して何度も言い訳してきた。
②経済復興に心を奪われて、日頃は尊い犠牲に思いを巡らせてこなかった。
③多大な犠牲と、その世界史的な意義を、次の世代に正しく教育してこなかった。
④家族愛、ふるさと愛、祖国愛を正しく引き継いでこなかった。
⑤祖国に帰りたいという英霊の痛切な思いにしっかりと向き合ってこなかった。
などなど…。

皆さんもそれぞれご自分で、この問題にしっかりと向き合ってみて下さい。その中から、未だに祖国に帰りたくても帰れない先人の悲しみや、無力感、挫折感などに思いを巡らせてみて下さい。

年内を目処に、伏してご協力を!

この運動は一応、今年一年を目処としています。この一年間でミャンマーに真の和平が実現しなければ、あと一年ぐらいは延びるかもしれませんが、今は何とも言えない状況です。

皆さんのご協力を、伏してお願い申し上げます。具体的には皆さんが様々な祈願や供養をお願いされる時、少しずつでも結構ですから一緒に浄財を送って下されば、この上もなく有り難いことであります。合掌



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