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2013年08月02日大日乃光第2050号
私達の人生の根を育む先祖追善護摩供養
真夏に花を咲かせる百日紅 例年になく厳しい暑い日々が続いています。皆様にはいかがお過ごしでしょう か?くれぐれも熱中症などには気をつけて下さい。 毎年の暑いこの時期に、いつも励まされている樹木があります。それは先代の時 代に貫主堂南の中庭に植えられた百日紅の深紅の花です。 この花は厳しい暑さに負けず、気温が日に日に高くなっていく七月上旬から、一 枝二枝と花を咲かせ、八月に入って更に暑くなる中で、全ての枝に盛大に花を咲 かせて行きます。 その生命力に「あなたも頑張ってるね!」と声を掛ける事が一夏に一度や二度では ありません。毎朝の祈祷も、お盆供養が重なる頃には、ことさらこの花に元気を 貰っています。 境内で成長する樹木たち また本堂の裏手には野鳥が種を運んできたのでしょうか、種から生えた椋(ム ク)の木があります。この木を見ると、私が小学生の頃、秋になると近くの椋の 大木によじ登って、その実を食べていた天真爛漫な懐かしい時代が蘇ります。こ の木は今の時期には何千何万の緑の葉を茂らせて、大きな日陰を作ってくれます。 また、貫主堂の北側には私の代になって植えてもらった朴(ホオ)の木と榧(カ ヤ)の木があります。 朴の木は「念ずれば花ひらく」の聖句を遺された世界的な詩人、坂村真民先生の 好きな木という事で、二十年ほど前に植えられ、今は多くの実を付けています。 そして新枝が天に向かって伸び上がり、この頃は新枝の緑の色を深くしています。 もう一本の榧の木は、平成七年に初めて「虚空蔵菩薩求聞持法」を修するに当 たって植えたものです。それはこの「求聞持法」は榧の枝や葉をお供えする決ま りになっているからです。 この榧の木は移植して数年はなかなか成長しませんでしたが、十年ほど前から急 激に成長してきました。この数年は一年で十五センチから三十センチほども成長 しています。貫主堂の二階の窓から眺めると、あと数年で目の高さになるはずで す。すると十年後には大方このぐらいの高さに、二十年後には…と、ほぼ三十年 後、四十年後までの樹高が想像出来ます。 坂村真民先生と私の生きる目標 百日紅も椋も朴の木も榧の木も、毎年毎年ただひたすら無心に伸び上がって行き ます。彼らには過去、現在、未来を予想し、時の流れを感じ取る事は出来ないで しょう。それに対して私達人間は過去の事を反省する事が出来ます。そして未来 に対する目標を立てたり予想をする事も出来ます。 七年前に亡くなられた坂村真民先生は、若い頃は身体が弱く、とても長生きは出 来ないだろうと思われていたそうです。ですから四十歳を目前にして亡くなられ たお父様の年齢を超えられないだろうと思っておられたそうです。ご自身は、自 分に特別な才能がある訳ではないから長く生きて一つでも多くの詩を生み出し続 けようと、念願されるようになられました。その中でお母様の七十二歳を超えよ う、お釈迦様の世寿の八十歳を超えようと念願しておられました。 私はそれに倣って開山大僧正様の世寿であった八十二歳を超える事を目標にして いますが、当面は先代の六十七歳を超える事を目標にしています。六十七歳まで あと六年、開山大僧正様まであと二十一年、三年前に亡くなった母の年齢までは 二十六年です。 六年後、二十一年後、二十六年後に境内の榧の木がどの位の高さになっているか はほぼ予想出来ます。そう考えれば目の前の榧の木がことさら愛おしく思え、さ らには五十年後、百年後、千年後と生き続ける可能性と生命力を持つ榧の木が単 なる植物ではなく、偉大なものに見えてきます。 無心に成長する樹木の根は連綿と続く命の繋がり 樹木は自分の意志ではその場所から決して移動する事が出来ませんし、いくら暑 くても寒くても不平を言いません。(実際にどう思っているのかは分かりません が)植えられた場所や実を落としたその場所で黙々と枝を伸ばし、根を張り、実 を付け、確実に年輪を重ねて行きます。 私達人間がこの地球上に生を享けるより遥か以前から、こうして生死を繰り返し てきた事を思えば、千年二千年の大木に神が宿ると感じて来た私達の先人の感性 と叡智に感動を覚えずには居られません。 この様に無心に着実に成長している樹木は、目に見えない地下深くに、地上の幹 や枝を支える根を張っています。 私達にとって、この根に当たるものは一体何でしょうか? 一つの見方では、それは先祖の方々より営々と受け継がれて来た命の繋がりと言 えるでしょう。また別の見方では、自分の過去の体験や記憶の積み重ねとも言え るかもしれません。植物も私達人間も〝根っ子〟に当たる部分がしっかりしてい なければ、伸び伸びと生きて行けない点では同じです。 人間の根に栄養を与える先祖追善護摩供養 であるならば、過去の記憶の中に、人に対する怨みや自分の境遇に対する不平不 満をたくさん持っている人は〝根っ子〟を充分伸ばせない鉢植えの木と同じで、 決して大木にはなれないでしょう。 この過去の自分の心の歪み(ゆがみ)を直すために、当山では二十五年前から内 観を行なってきました。 一方、「人間の根は先祖である」という考えを当てはめてみれば、当山の「先祖 追善護摩供養」は、まさに根に栄養を与え充分に広げていく事に相当するので す。さらに言えば、先祖供養は実は自分自身に対する霊界と心の歪みを直すため のものでもあるのです。 数百年以上生き続ける榧の木のような樹木に比べ、私達の寿命は遥かに短いので すが、その代わりに私達は伝統や文化を生み出し、それを子孫に伝える手立てを 持っています。 私の目の前にある榧の木が、貫主堂の高さを超える頃、さらには椋の木が本堂の 屋根を超えて覆う程の大木になる頃までに、当山は確実に次の世代に引き継が れ、さらに次の次の世代に継承されていることでしょう。 それと同じように皆さんの子や孫の世代に、何をどのように引き継がれるのか、 お盆供養のこの時期に、そして酷暑の中で着実に成長している樹木の木陰で思い を馳せて頂きたいものです。合掌
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