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大日乃光






大日乃光

2013年09月05日大日乃光第2053号
『第65回一休さん修行会』

第六十五回一休さん修行会特集号
          蓮華院誕生寺奥之院院代 川原啓照


「厳しく辛い修行を乗り切った汗と涙で感動の錬成修行会」

殆どゼロからの再出発となった大所帯の一休さん修行会

今年の一休さん修行会は男子三十四名、女子十七名、計五十一名の子供達が集まり、大変賑わいました。ここ数年で最も多く、十三組の兄弟姉妹を含めて三十七世帯からのご参加でした。

その上、本来なら小学四年生以上と参加基準が決まっているのですが、どうしてもお兄ちゃんお姉ちゃんと一緒に参加したいというお申し込みがあり、小学一~三年生からも八名参加されました。

しかし今年は日頃からお参りなどでお寺に慣れ親しんでいる信者さんのお子さんやお孫さんの参加者が、僅かに三名でした。また三十六名と比較的多かった前回から継続しての参加者も七名と少なく、お参りの仕方に始まる全ての基本的事柄の修得が、殆どゼロからの再スタートという形になりました。

厳しく絶対的な師弟関係

開講式ではまずお寺での生活の仕方や注意事項を説明し、最後に「悪いことをした人は叩きます。それがいやな人は今からでも帰っていいですよ」と宗務長先生から話されました。
最近のニュースでは、学校での体罰問題をよく耳にします。確かに行き過ぎた体罰は良くないと思いますが、教育のために体罰が必要となる場合もあると思います。

この修行会に於ける先生と生徒の関係は、そのままお寺でいう師弟関係となります。師弟関係では師の言われることは絶対で、間違った事をしたら強く叱られるのが当たり前なのです。昔の学校では、このような教育の仕方が普通だったと聞きます。私も学生時代に先生から叩かれた事はありますが、その理由も分かりましたし、今ではきつく叱って頂いた先生に感謝さえしています。

お不動さまの両刃の剣

人を叱るという事はたいへん疲れますし、叱った事の責任も負わなければなりません。好き好んで叱る人は誰もいないと思います。その行為には、立派な人間になって欲しいという強い思いが込められているはずです。

佛教にはお不動さま(不動明王)という佛様が居られます。右手に利剣(あらゆる煩悩を断ち切る剣)を、左手に羂索(悪いものをしばる五色の縄)を持ち、怖い憤怒(ふんぬ)の相貌をされています。

お不動さまは、人が人の道を逸れようとした時、強引にでも正しい道に引っ張って頂ける佛様です。人を指導する立場の人は、お不動さまのような厳しさと優しさを併せ持たなければならないと思います。

モノ作りで学べる大切なこと

今年の修行会では昨年までの日程と変えた所があります。その内の一つは、地元の大工、斗山秀雄さんによる創作活動をとり入れた事です。

蓮華院では昔からお世話になっている大工さんで、合宿前にも宿舎や信徒会館の点検、修繕などをして頂きました。昔気質の大工さんで、建物と相談しながら知恵と経験で、その場所に合った仕事をして頂いています。

南大門を建立する際、私は匠社寺建築社の方々に従って〝こどり〟として働かせて頂きました。〝こどり〟とは、大工の方々がスムーズに仕事が出来るように掃除や休憩時間の準備など、様々なお手伝いをしてサポートする役割です。

大工さん達から「○○をして下さい」などという直接の指示はありませんので、自分でやるべき事を見つけなければいけません。現場の空気を読み、相手の気持ちを考えて行動しなければ仕事になりませんし、却って迷惑ばかりかけてしまいます。周りに気を配ることが自然と身につくようになります。また物作りの楽しさ、大変さを知ることによって、物を大切にする気持ちも生まれてきます。

こういった私自身の経験から、大工さんと仕事をすることは子供たちにプラスになると考えて、今回の日程に組み込みました。当日は背もたれつきのベンチ作りと、案内用の看板作りに挑戦してもらいました。木材ならではの座り心地の良い、温かみのあるものが出来ました。出来上がったベンチと看板は、奥之院の境内に早速設置させて頂きました。

作法や習慣に込められた思い

今回の三泊四日の修行会では、子供達は普段の生活との違いに驚いていたようです。お寺には古くから伝わる作法や習慣が残っています。その一つ一つに意味がありますし、思いが込められています。その意味や思いを理解して、形を続けることによって、日本人としての心が作られると思います。

食事を頂く時の作法などは、きちんと躾ておられない家庭が意外に多いようでした。お寺では、まずお参りをしてみんな揃ってから「いただきます」と唱え、食べ始めます。

そこではまず今から頂く命に感謝します。自分が他の命によって生かされていることに気付きます。そうすると自分の命を大切に出来ますし、同じように周りの人も大切にしようという思いになります。

「ごちそうさま」も、食事を準備して頂いた人に対する感謝の気持ちだけでなく、それまでにそれらの食材に関わった全ての人々に思いを致して感謝します。例えばお茶碗一杯のご飯についても、そのお米を作って頂いた農家の方々、農家で使われる農機具を作って頂いた方々、さらにその農機具を作るための資源を集めて頂いた方々…と、このように考えを廻らせて行けば一回の食事がどれだけ多くの世界中の人々のお世話になって、ようやく成り立っている事なのかがよく分かります。

作法というものは、仮にその意味合いや思いを忘れてしまったとしても、形を繰り返し続けることによって、自然に気持ちが作られていくようによく出来ていると思います。私自身は茶道を習っていますので、そのことがよく分かります。

一休さん修行会では、学んだことを文字通り三日坊主で終わらせないように、四日間という少し長い合宿になっています。

子供達の一所懸命から学んだこと

一休さん修行会では、子供達の顔つきが日に日に逞しくなっていくのを感じました。初めは全くついて行く事さえ出来なかったお経も、最終日には大きな声を出してお唱え出来るようになりました。『般若心経』を暗記出来た生徒も数名いました。

五十二名が一心に、大きな声でお経をお唱えする姿は迫力があり、びりびりと波動が伝わってきました。子供達が修行に励む僧侶のように見えて、一心にお参りする事の大切さを改めて教えて頂いた気がしました。私自身、子供達と生活を共にして勉強になったことがたくさんあり、いい経験となりました。

子供達も非日常的な生活を体験する中で、普段は当たり前だと思ってきた事が実は当たり前ではない有り難い事だったということに、きっと気づいてくれたことでしょう。

そしてどんな小さなことにでも感謝して、そのプラスの空気を周りにも伝えられる人になって頂きたいと強く思いました。

言わば皇円大菩薩様の御教えを広く世界中に発信する電波塔のように、子供達一人びとりが輝き続けて欲しいと願っております。合掌



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