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大日乃光






大日乃光

2014年03月13日大日乃光特別編
「チベット犠牲者七回忌諷誦文之事」

「チベット犠牲者七回忌諷誦文(ふじゅもん)之事」
 
夫(そ)れ惟(おもん)みれば、佛陀(ぶつだ)釈迦(しゃか)牟尼(むに)世尊(せそん)の菩(ぼ)提(だい)樹(じゅ)下(か)の正覚(しょうがく)より二千五百年、佛法は印度(いんど)より南にはアジア各地に伝えられ、今日アジア世界の中心的な宗教として、社会の平和に大いなる役割りを果たし来たれり。更に人類の精神世界を先導(せんどう)し来たる。その間、各国で様々な佛教的慣習を生み出し、社会生活の基(もとい)を育(はぐ)くむ。
 
然(しか)りと雖(いえど)も二十世紀に至りて、人類は共産主義を生み出すや、アジアの国々に於(お)いて、佛教は弾圧(だんあつ)の対象となり、各国国民の多くが塗炭(とたん)の苦しみを味わえり。カンボジア難民と、チベット難民の出現がその例に外(ほか)ならず。

本日ここに、チベット動乱より六年を経(へ)、犠牲者の七回忌を迎えるに当たり、チベット人、漢人両犠牲者の供養(くよう)の法会(ほうえ)を営(いと)なむは、同時代に生きる人間として、同じアジア人として、また同じ佛教徒として已(や)むに已(や)まれぬ同悲(どうひ)の情念によるものなり。
 
チベット民族と漢民族は、互いに異なる歴史と文化、加えて政治形態の違いを有し、その長い交流の中で、さながら現代日本の寺院と檀家(だんか)(門徒(もんと))の関係の如(ごと)き交流を通して、互いの長所を認め合う時代を過ごし来たれる。

然(しか)りと雖(いえど)も六十余年前より、共産主義を掲(かか)げる中華人民共和国の成立以来、さながら帝国主義の植民地支配の如きチベット同化(どうか)政策(せいさく)により、チベットは独立国としての誇りを奪われ、ついにチベットの宗教指導者にして国家元首のダライ・ラマ十四世法王猊下(げいか)も亡命の已(や)む無きに至る。以来今日まで十数万余のチベットの人びとは、命を懸(か)けてヒマラヤを越え、亡命を果たし、今日に至るも亡命者、後を絶(た)たず。
 
一方チベット国内では近年、已(や)むに已まれぬ抗議として百三十二名の人々がその身に火を放ち、チベットの独立と法王猊下(げいか)のご帰国を訴えて、今生の命を断(た)たるる。斯(か)くの如き命を賭(と)した訴えに、中国当局は更なる武力弾圧によって応(こた)え、その混迷は更に深まり、解決への糸口を見い出す事難(かた)し。
 
本日、ここに参集(さんしゅう)せし僧伽(さんが)(僧侶)、当山信徒、合わせては有志の皆々様と共に犠牲者の菩提(ぼだい)を一心に祈り、犠牲者の無念の思いを我らが思いと為(な)し、チベットに和平と自治の(が)実現せん(する)事を祈るものなり。
 
この場所は九年前、ダライ・ラマ十四世法王猊下(げいか)、並びに七ヶ国のアジアの僧侶と共に世界の平和を祈りし浄地(じょうち)なり。
 
請(こ)い願わくは、
 
ここに集(つど)いし諸人(もろびと)の心に、世界平和に向けての強き思いが更(さら)に高まりますように。
 
ここに集いし諸人が、平和への具体的行動を更に活発に実践できますように。
 
ここに集いし諸人が、民族の違い、宗教の違い、文化の違い、思想の違いを乗り越えて、互いに力を合わせ、社会を、世界を照らす灯明(とうみょう)となりますように。
 
誰時平成二十六年三月十三日
真言律宗別格本山 蓮華院誕生寺  
貫主権大僧正 英照 謹(つつしんで)言(もうす)
(宗派を超えてチベットの平和を祈念し行動する僧侶・在家の会 九州支部)



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