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大日乃光






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2014年04月29日大日乃光第2074号
「皇円大菩薩様の御加護で草の根運動から国家事業へ」

「ミャンマー/ビルマご遺骨帰國運動」の進捗状況

一昨年の末から始まった「ミヤンマー/ビルマご遺骨帰國運動」については、昨年十二月一日号の本誌で安倍総理に宛てた親書についてお伝えして以来、五ケ月程何もお伝えしておりませんでしたので、現在の状況を改めて皆様にお伝え致します。

昨年一月、先の運動が正式に発足して国内での募金を開始した時には、一応昨年一年間を募金の期間としておりました。これまでの募金総額は二千五百六十万余でしたが、まだ当初の目標には千二百万円程届いておりません。

有志の運動から国家プロジェクトへ?

その一方、全世界で百万柱程を超える旧日本軍兵士のご帰国が未だに果たされてない現状に対し、安部総理の指示によって自由民主党内にプロジェクトチームが立ち上げられ、今国会に議員立法として法案が提出される事になっています。

この事は十数年前からお付き合いを頂いている旧知の外交評論家にご紹介頂いた、ある参議院議員の政策秘書の方から教えて頂きました。その直後にマスコミでもこの事が報道されました。

この様な動きは、安倍総理に先の親書をお渡しして程無くしての事でした。ですから、私達の宗派を超えた運動が総理の心を動かして、この法案提出に向かっているように感じられ、大変嬉しく思っている所です。この法案が国会で無事に可決されれば、これまでの私達の民間での働きを国家の仕事として、正式に政府が引き継いで下さる事になるのです。

無私無欲の志を持った井本勝幸氏

一方でミヤンマー国内では、ミヤンマー政府に国軍も加わって、少数民族の連合体との間で全国土に亘る完全な和平に向けての協議が行われています。これまで六十年以上に亘って内戦が続いて来たのですから、この完全なる和平交渉は、それ程簡単ではないようです。

この和平会議に、以前から何度かお伝えしている私の盟友の井本勝幸さんが、少数民族の団結を成し遂げただけでなく、ミヤンマー政府側にも大きな信頼を受けている立場で、外国人としてただ一人オブザーバーとして参加しているのです。

何の組織も持たず、どこからの支援も受けずにこの様な大役を担っている一人の日本人が居るという事そのものが、本当に驚嘆すべき事です。現代日本では稀に見る人物と言えるでしょう。しかし少し目を過去に転じれば、かつての日本人の中にはアジアや世界に広く目を向けて、アジアの融和のために心血を注いだ民間人が何人も居たのです。

その人びとの基本的な志には「無欲」「無私」という共通点があります。井本さんは自分の命をミヤンマーの大地と、そこに暮らす無数の名も無き人々に捧げる覚悟でたった一人でその地に入りました。そして多くの少数民族の人達と共に働き、共に食べ、徹底的に語らいながら信頼を築き上げて行かれました。その一切の見返りを求めず寝食を共にした生き方こそが、ミヤンマー政府からも認められる大きな要因であったのです。

和平達成にあと一歩

最近聴いた井本さんの意見では「今年の夏頃までには和平が達成されるだろう」との事でした。
日本国内でのミヤンマーのご遺骨に関心を持って頂く運動と同時進行で、これまた不思議な巡り遇いによる同志の海老原智治さん達が、各少数民族の人びとの協力を受けながらご遺骨の調査が行われて来ました。

しかし昨年末、ミヤンマー政府側から「和平が達成されるまではこれらの調査をしばらく休止して欲しい」という申し出がなされました。

それは、ご遺骨の調査活動がミヤンマー政府軍から見ると軍事的な偵察や作戦行動と勘違いされかねないから、という話でした。

この申し出を無視して調査を続けるのは、却って和平協議への障害にもなりかねませんので、心ならずも昨年十一月から調査を中断したままになっています。夏過ぎに和平が達成された暁には、ミヤンマー政府からの協力も加わり、大々的に本格的な調査が始まる事でしょう。

御本尊様の御加護を頂いた草の根運動

先にお伝えしたご遺骨帰還に関する法案がその前に可決していれば、日本政府とミヤンマー政府との政府同志の正式なご遺骨調査の覚書も交わされる事でしょう。そうなれば、これまでの私達のような民間団体の任意の調査ではなく、日本政府による新たな法律に基づいた「ご遺骨帰還」の国家事業としての調査になる訳です。

私達のこれまでの努力が、本来の目的だった国家の仕事に移行する事になる一歩手前まで来ている事に、感慨無量であります。これも偏に信者の皆様、そして全国の皆さんがそれぞれに浄財を募金して頂いたお陰です。有り難い事です。皆さんのご協力が、私達にとってどれ程大きな心の支えになったか計り知れないものでした。

この募金は今年の六月中を最終的な期限とする事が、昨年の役員会で決定されました。

当山では先の大戦の終戦から程無くして、開山大僧正様が弟子達や信者さん達を動員して、先事大戦の犠牲者を供養する運動を開始されました。その過程で「戦事犠牲者萬霊位」「世界平和記念牌」を常にご本尊皇円大菩薩の傍らに安置しながら祈り続けておられたのです。

その深い思いが私を動かし、宗派を超えた全国の仲間の皆さんと共にこの運動が始まり、遂には国を動かしつつある事に、皇円大菩薩様の絶大なるお加護のお力を実感しているところであります。

先祖への思いが変わった戦後七十年

ミヤンマーだけでも四万五千六百十柱のご遺骨です。海中深く沈んだままのご遺骨は、とてもご帰国は叶わないとしても、何十万柱ものご遺骨がこれから続々とご帰還された時、果たしてどれ程のご遺骨がその方の故郷までお帰りになれるのか、少し心配しています。

それは一柱、一柱それぞれがどなたのご遺骨かが分かったとしても、果たしてご遺族の方々が見つかるのか、そしてそのご遺族がまだ生きておられるのかも分からない方が多いことでしょう。

それにも益して、本年で七十回忌になる英霊の方々に対し、現在の私達日本人がそれぞれの先祖のお墓に心から懇ろにお迎え出来る状態になっているかが気がかりです。家が絶えてしまったご遺族、お墓を持たないご遺族、中にはご遺骨を受け入れる気のなくなっているご遺族もあるかもしれません。

戦後七十年で、日本人の先祖への思い、英霊への思いは大きく変わってしまったように感じるのは私だけではないと思います。

そもそもこの「英霊」という言葉に「戦争を美化している」とか「戦死者は単なる犬死でしかない」といった意見を持つ人も少なくないからです。

命の繋がりを実感するお墓

十年以上前から、日本の一部では散骨も始まっています。この海や川に親や家族の遺骨を撒く「散骨」に、私は大きな違和感を持っていました。その事もあって、私は二十年以上前に先代真如大僧正様に霊園を開設する事を提案し、二十二年前に蓮華院御廟が完成しました。

人には過去の先祖との繋がりを実感するための場所が必要です。時にはそこで、亡き父母や祖父母と語りあい、時にはその場で大きな決断をし、嬉しい事、悲しい事などを報告する。そのような場所が必要です。

それは必ずしもお墓でなくてもよいかもしれませんが、先祖代々の方々がそこに眠っているお墓は、なんと言っても一族の心が集い、歴史が繋がる場所です。子や孫と共にその場で手を合わせることで、命の繋がりや家族の歴史を身を以て実感するには、お墓に勝る場所はないように思います。

高野山の奥之院の長い参道には、何十万もの有名人や、全国の名家、戦国武将などのお墓が、さながら歴史絵巻のように立ち並んでいます。そこを通って行くだけで、日本の長い歴史を実感する事が出来ます。自分自身が今を生きてその歴史の一端を担っている事を、理屈抜きに感じさせられる場所です。

この様に、日本人の心を根底から支えているのは過去との繋がりです。これを抜きにして日本人の心の在り方は語れないと思います。

そんな日本人の徳性が近年衰退していると言われるのは、先祖を大切にする心の衰退以外の何ものでもないと感じるのは、私一人でしょうか?

七十年ぶりにご帰国の叶った数多の英霊を、日本全国で温かく迎え入れる日本社会の復活が、私達僧侶の大きな役割であると覚悟を新たにしながら、英霊のご遺骨のご帰国をお待ちしたいものです。合掌



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