2014年08月26日大日乃光第2085号
「子どもの佛性を磨く一休さん修行会」
薩摩の「郷中教育」に通じる子ども達の修行会
今年も第六十六回「一休さん修行会」が無事に終了いたしました。
七月三十一日に開講した「一休さん修行会」は、今年は小学二年生から中学三年生までの全五十名を九人から十一人の五班に分け、その中の最年長さんを班長にして、年齢がまちまちの十人兄弟のように組み分けしました。
日頃、同級生としか付き合わない子供達ですが、この修行会では年長者が下の子の面倒を見ることになります。
これは貫主様から伺った話ですが、明治維新前の鹿児島(薩摩)では、年代がばらばらの子供だけの組織があり、それを「郷中教育」と呼んでいたそうです。
薩英戦争の後、イギリス海軍は劣った兵器であそこまで勇敢に戦った薩摩武士の教育の仕組みに刮目しました。そして気付いたのが、この「郷中教育」でした。この組織を参考にして始まったのが「ボーイ・スカウト」とも聴きました。
「一休さん修行会」も、かつてこの修行会に参加した高校生や大学生がお手伝いとして来てくれる事もあります。各班ごとに僧侶や職員を
一人ずつ付け、私は全体を見渡して、大きな方向を修正したり、スケジュールを修正したりするのが仕事です。
ワンパク揃いだった昔の修行会
長年、この役割を務めて来て思う事は、昔の子供は私達指導者の前では、「はい」と返事も良く、皆と協調して活動しているように見えるのです。しかし目を離している隙にイタズラをしている子が何人もいました。
例えば、休憩時間に室内を走り回り、壁を蹴ってターンしようとしたところ、壁に穴が空いて足が抜けなくなった事が度々あって、今でも宿舎には何箇所も修理の跡が残っています。
また、一番記憶に残っている事件は、夜、消灯時間を過ぎてしばらくして夜回りに行くと、三名の子供の姿がありません。慌てて探したら、押入れから屋根裏に上がり込んで遊んでいたのです。こっぴどく叱りましたが、体力が有り余り、遊び足らなかったのでしょう。
しかし最近の子供は優しくてあまり喧嘩もしないようですが、おとなし過ぎる、良い子が多いようにも見受けられます。
縦の人間関係に基づいた古き良き日本の伝統
開講式では、貫主様が決まって言われる事があります。「お坊さんや先輩は偉いのです!!なぜなら、あなた達(参加した少年・少女)の二倍も三倍も生きて来たからです」
「人間は本来は平等ですが、その役割が違えば責任も違い、高い所から見ているので、あなた達の見えないものが見えているのです」と。
現代は全ての面に平等を求める余り、ともすれば先生と児童・生徒までも平等にしてしまいます。そうすれば子供は人を尊敬する事が出来なくなります。尊敬のそのまた先に信仰があるとも言えますから、現代は信仰・信心が成り立ち難くなっていると感じるのは私一人ではないと思います。
さらに父母、祖父母を尊敬出来なければ、ご先祖様も尊敬出来ません。日本古来の伝統である、先祖を大切にし、感謝する心が衰退して行くのも、こんな悪平等主義に遠因があるように感じます。
子どもの佛性を磨くために
貫主様の子供達への御法話は、全ての人の心の奥底にある「佛性」を磨き出すにはどうすべきかを子供にも分かるように、様々な方面から懇切丁寧に、四十五分のお話を五回に亘って話して頂いています。
大乗佛教の根本的な実践原理としての「六波羅蜜」、その前の「三学」(戒学・定学・慧学)、「三慧」(聞慧・思慧・修慧)まで話して頂いています。
開講式では保護者の皆さんも来ておられるので、「三泊四日のお寺での良き習慣を、子供がせっかく身につけて帰っても、両親や家族がそれを無視したり、評価してあげなければ〝三日坊主〟になってしまいます。どうか、
①家族で互いに朝から挨拶を交わして下さい。
②自分のだけでなく、他の人の履きものも揃えて下さい。
③食事の時、「頂きます」と「ご馳走さま」の意味を教えていますから、子供さんに尋ねて下さい。そして家族全員で一緒に合掌して、必ず言って下さい。
④十名程の子供さんが「パパ」「ママ」と言っているそうです。これも「お父さん」「お母さん」という日本語があります。
日本では言葉には言霊が宿っていて、とても大切なことと考えられております。これも意味を教えておりますから、子供さんに尋ねて下さい。これはご両親が変えなければ子供さんは変わりません。
せめてこの四つくらいはそれぞれの家族で実行して下さい」と話されました。
〝子は親の言うことは聞かない〟〝親のやるようにする〟と昔から言い習わしていますように、ご両親や祖父母自身が、子供に真似されてもよい生活習慣を、子や孫に見せて頂きたいものです。合掌
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