2014年10月01日大日乃光第2089号
「信者一同、心を繋ぐ『ありがとう密教瞑想』」
関東支部布教会での密教瞑想ワークショップ
いよいよ十月に入り、秋も本番に差し掛かっています。寺内では十一月三日の「奥之院大祭」に向けて、それぞれの部署で着々と準備が進められています。
本原稿は、九月十六日に新幹線の中で草稿を書きました。と言うのも十六日に本山で参事会があり、その帰りに十四日の感動が薄れない内に書いておきたいと思ったからです。
一昨日(九月十四日)、関東支部で信者の皆さんと半年ぶりにお会いしました。今回は町田宗鳳先生(広島大学教授)の「ありがとう禅」という独特な瞑想法(禅)に、密教のエッセンスの部分を私なりに加えた、(仮称)「ありがとう密教瞑想」というものをやってみました。
この密教瞑想を信者の皆さんと実施したのは、今回で三回目になります。一回目は本院の準御縁日で、お参りされた信者の皆さんと一緒に実修しました。二回目は、八月二十四日の京都での関西支部布教会でした。
円座を組み、体調を整える「ラン・バン加持」瞑想法
まず最初に、皆さんに円陣に座って頂き、互いに手を繋いで頂きます。そこから密教の「ラン・バン加持」という作法を、瞑想を通じて行います。
「 ラン」と何度も唱えながら、手の平を下に向けた右手から炎のように燃えるエネルギーを、右側の人に渡して行きます。これは例えて言えば、右手を電池のプラス極に、左手を電池のマイナス極になっているよう想像します。そして右手から次の人の左手に、電流(気)が次々と流れていくように想像します。仮に百個の電池で丸い環になるよう直列に並べたら、百五十ボルトの電圧になるわけです。
最初はゆっくり大きな声で「ラーーーン」、と唱え、少しずつ短くしていきます。人はそれぞれ呼吸の長さが違いますから、自分のペースとスピードで、少しずつ早くしていきます。
そのうちに「ラン」という言葉と声の持つエネルギーと「気」が、皆さんの手を伝わって回って来て、今度は自身の手の平を上に向けた左手の方に伝わって来ます。さらに廻って来た「ラン」の気が、また右手から出ていくと、このように全員が瞑想をいたします。
これはつまり「ラン」という音と、その気の持つ炎のようなエネルギーによって、体中の弱いところを癒しながら、邪気を祓っていく瞑想なのです。
次はこれまでとは逆に、手の平を上に向けた左手から「バン」という言葉と声が、そのエネルギーと共に左側の人に伝わって行きます。
右に回りながら、「バン」という音と、そのエネルギーが、そこに参加した人たちの体と心を水の浄化の力のように正常に戻し、体調を整える瞑想なのです。
「ア・バン・ウン」は心と体を邪気から護る結界
次の段階では全員が唇を閉じて、ハミングのようにして、「アン・バン・ウン」と唱えます。この「アン・バン・ウン」は、当山の奥之院の「心経門」の上の三つの丸い石に彫り込まれている梵字(ぼんじ)です。
「アン」は全ての始まり、人が生まれる時に発する声にも通じると言われています。「バン」は金剛界大日如来様を象徴する種字(しゅうじ=象徴的な文字)と言われるものです。
最後の「ウン」は、物事の終わりを意味し、人が亡くなる時発する声とも言われています。この「 」にも多くの意味が籠められていますが、一つには真理を求めて努力精進する修行者(金剛薩)を象徴する文字でもあります。
つまり「アン・バン・ウン」と唱える事によって、一生を通じて努力し、向上し、社会や人様のお役に立つ決意の籠もった言葉(音)なのであります。
ついでに説明しますと、来たる十一月三日の奥之院大祭の「柴燈大護摩祈祷」の中で、法弓師が修する、四方と中央に結界(魔が入らないバリアー)を張る時、唱えられるのがこの「 」なのです。
ここまでで約十分から十五分ぐらいかかるでしょうか。
全てに感謝を表すありがとう瞑想
次に、それぞれが自分の胸の前で合掌をします。そして顎を少し上に持ち上げた姿勢でゆっくりと、「アー・リー・ガー・トー・オー」と大きな声を出して唱えるのです。人はそれぞれ声の音程が違い、息の長さも違いますから周りの人達と音程や長さを合わせて唱える必要は全くありません。
その中で私の方から「この時間は両親に対する感謝の気持ちを込めて、『ありがとう』とゆっくり何度も唱えてください」と伝えます。これを三分から五分ほど唱えます。
次は恩師の先生やお世話になった人などの「恩人」や「友人」のことを思いながら、ゆっくりと大きな声で「ありがとう」と唱えます。
そしてまたその次には、自分の「ふるさと」か、または自分が現在住んでいる場所、またはその大地そのものに対して「ありがとう」と唱えます。
さらには自分自身の体が少しずつ大きくなって行くと想像して、地球の大きさまで大きくします。そして目の前に母なる大地、地球があります。この地球に向かって「ありがとう」と、ゆっくりと長い息を出しながら大きな声で唱えるのです。
本来なら、最後は畳の上に横たわって、「ありがとう」を、これまでと同じように唱えるのですが、今回は場所の都合でそのまま座って合掌して唱えて頂きました。
十年後の姿を想像しながら一緒に御宝号を唱和
そしていよいよ最後は「南無皇円大菩薩」をゆっくり、「ナーム・コー・エーン・ダーイ・ボー・サー」と大きな声で何度も何度もお唱え致します。
その中で、十年後に自分がなっている姿や、または十年後になりたい自分の姿を想像しながら、長い息で大きな声で唱えて頂きます。
これまでの瞑想の中で、涙を流しながら唱えている人、顔を紅潮させて感極まっている人、口を大きく開いて気持ち良さそうに朗々と声を出している人など、様々な信者さん方の姿を拝することができます。
最後の最後には、当山の「誓いの詞」
「私は父母祖先、
先生友達、
そしてこの街、この村、この山河
すべてに感謝し、
恩返しのできる人間になるために、
日々努力精進いたします」
を一緒に唱えて終わりました。
「霊障」のない時でも効果のある「ありがとう密教瞑想」
その後、幾人かの方に感想を述べて頂きました。前回の京都での瞑想ワークショップでの感想も含めると、
「あの後から体調が良くなりました」
「背筋が伸びて姿勢がよくなりました」
「なんだか幸せな気持ちになりました」
「持病の腰痛が随分楽になりました」
「〝両親〟の時や〝ふるさと〟の時は涙が止まりませんでした」
「〝ふるさと〟の時、遠い昔の幼い頃の家をありありと思い出しました」
「『 』の時、体全体が暖かくなったかと思うと、『 』の時は心まで静かに落ち着いてきました」
などなど様々な感想が寄せられました。
霊的な「サワリ」ではない場合や、心の持ち方などによって起こる、ちょっとした心の歪みや病気などは、この「ありがとう密教瞑想」によって明らかな効果が出ています。今後、様々な実修体験を重ねて「ありがとう密教瞑想」を完成させていきたいと思っています。
この瞑想は今回文字で説明しましたが、くれぐれも一人で勝手に実修しないで下さい。私自身が弟子の皆さんにキッチリと伝授し、何度も修練致しますので、この僧侶の指導に添って実修するようにして下さい。
一期一会の奥之院大祭
この瞑想は、そこに集った人達全員で造り上げて行くものでもあります。本院の本堂、京都布教会場、そして東京での先の瞑想それぞれは、決して同じものではありませんでした。まさに「一期一会」のものなのです。
来たる十一月大祭も全く同じです。そこにお参りされた方々の心持ちと思いによって、皆さんの受け取るご利益は違ってきます。一人でも多くの信者さんの祈りの力によって、更に有意義な大祭にして頂くよう、心からお願い致します。合掌
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