2014年12月12日大日乃光第2095号
二十一世紀の世界を救う利他行を実践する日本人
ユーモア溢れる村上和雄先生の講演
先月五日、熊本市内で遺伝子工学の世界的権威であられる村上和雄先生の講演を、妻久美子と聴きました。妻と共に先生の講演を聞くのは今回で三度目です。
いつものようにユーモア溢れるお話から始まりました。先生はダライ・ラマ法王猊下と五回(その内の一回は、九年前に私が玉名で設定)も対談されていますので、チベットの僧侶の方々ともお付き合いがあります。
その話の中で、先生はある僧侶に「人間の死後にはどんな世界が待っているのでしょうか?」と質問されたそうです。するとその僧侶の方は「全ての人の死後は、二十の段階に分かれています。なぜなら死後(四×五=)二十ですから!?」と答えたそうです。
これは実は先生一流のジョークでした。会場に詰めかけた千八百人が大爆笑しました。こうして村上先生のご講演が始まりました。
笑顔を絶やされないダライ・ラマ法王猊下
更に先生は、ダライ・ラマ法王猊下を称して「ニコニコ顔で命がけのお方」と言われました。五十年もの間、中国政府から弾圧を受け続けている祖国チベットの人々が、毎年命がけでヒマラヤを越えて亡命して来ます。
それらの亡命者の辛く悲しい話を一番聞いて来られたのが、他ならぬダライ・ラマ法王猊下その方です。さながら人々の悲しみと、うめき声を聞き続ける観音様のようです。
ダライ・ラマ法王猊下は、名実共に観音菩薩の生まれ変わりなのです。そんなダライ・ラマ法王猊下ですが、どんな時でも微笑みと笑いを絶やさないお方です。
数年前にアメリカで講演された時、ある人がこんな質問をしたそうです。「あなたは悲惨なチベットの現実が厳然と続いているのに、なぜそんなに笑っておられるのですか?」と。普通の日本人は、こんな事はまず聞かないと思います。
それに対する法王猊下の答えは、「私は常に未来のために良き種を蒔き続けています。だから未来に絶望はしないし、楽観的になれるのです」とお答えになったそうです。
村上先生がある時、ダライ・ラマ法王猊下と記念撮影をされた時、法王猊下が村上先生の耳をコチョコチョとくすぐられたそうです。そしてすかさず「笑いの研究をしているあなたが、なんでそんなにしかめっ面をしてるんだ。もっとにこやかな顔をしなさい」と言われたそうです。なんとお茶目で楽しいエピソードでしょう。
東洋と西洋を繋ぐ日本の叡智
村上先生は「笑顔や笑いは人の良い遺伝子にスイッチを入れる」と言われます。その結果、よく笑った後には糖尿病の人の血糖値も下がるという研究結果を発表されて、そのことが世界的に高い評価を受けました。
また十数年前には私達の主食のお米、つまりイネの遺伝子配列を世界に先駆けて解読する快挙を成し遂げられました。その事で、結果的に日本の科学者の優秀さが世界に示されました。
また「ダライ・ラマ法王猊下がこんなことを言われた」ともご紹介されました。それは、「二十一世紀をリードし、世界を救うのは日本人である。二十一世紀はまさに日本の出番です」という話です。
日本は東洋と西洋の叡智を繋ぐ事の出来る国であり、地球的な環境問題にも大きな役割を果たせる国民が多く住んでいる。人の遺伝子には利己的な部分と利他的な部分があるが、日本人は利他的な人が世界でも最も多い国である、と話されました。
日本人の来し方を伝える「国史」の欠落した教育現場
しかしその反面、現代の若者の多くが自分の価値を低くしか感じていないし、自信を持っていない現実も紹介されました。私は、ここに現代日本の最大の問題が凝縮していると感じました。
「神話と歴史を忘れた民族は滅びる」と、世界的な歴史学者のアーノルド・トインビーは言っています。
しかし現代の学校教育に神話の教育は一切ありませんし、日本の歴史、つまり国史という科目さえありません。あるのは日本史です。
日本史と国史は違うのです。例えば日本語と国語が違うようなものです。日本語は外国人も学べます。その時、「日本語を学ぶ」と言います。それに対して「国語」は日本人の為に日本の文化や歴史を含めて、日本人になる為に教える言語と文化の教育です。
これと同じように、日本人の為に文化や生き方をも含めて、日本人の来し方の物語を教えるのが国史教育です。現実は、この様な日本人の為の日本の歴史を現在の教育で充分に教えているとは言えないと、感じているのは私だけではないはずです。
まさにトインビーが言った様に、日本の将来を背負う大切な青年達や子供達に、日本の神話も日本人のための歴史も教えないままでは、いずれ日本は滅ぶかもしれません。ダライ・ラマ法王猊下の予言とは、全く逆の結果を招くかもしれません。
未来の為に良き種を蒔く子供の詩コンクール
更に加えて私の危機意識を申し上げれば、両親や先祖を大切にするという大事な事を、未来の使者である子供達にほとんど伝えていません。その証拠に、現代使われている日本語の中で、「親孝行」という言葉は絶滅寸前になっています。
こんな中で、先代の真如大僧正様が創設された「親を大切にする子供を育てる会」の目的と「子供の詩コンクール」は、父母をよく見つめて、その思いを感じてもらって、それを詩にするという、未来への良きタネを蒔き続けてきた様に思います。
「未来の為に良きタネを蒔く」今こそ、この事の大切さを実感する時代はありません。いくら素晴らしい可能性を秘めていても、そのことを未来の使者たる青少年にしっかりと伝えなければ、日本の輝かしい未来は開けません。
我欲を抑えてきた謙譲の美徳
現代の日本人の多くが利他的な性格を持っていると先に伝えましたが、世界的に見れば、その他には謙虚な性格が相当に高いのが日本人ではないかと思います。
そのことの一つの象徴が「~させて頂く」という表現ですが、最近特によく聴くようになりました。私はこの言葉を政治家などのリーダーが使うのはおかしいと思いますが、一般の人々がへりくだる、謙虚な思いを込めて「~させて頂く」という時の表現としては、知らず知らずの内に我欲を抑える作用が働いて、多くの日本人が元々謙虚だった上に、さらに謙虚に生きるようになった一つの現れなのかもしれない、と思うようになりました。
その意味でも皇円大菩薩様を信仰されている皆さんは、御本尊様の前で心を素直にして、謙虚な気持ちになりますから、信仰がいかに大切かを実感しています。
世界中から賞賛された日本人の利他行
三年九ヶ月前の東日本大震災の時、被災者の方々は整然と援助を待ち、取り乱して暴動などを起こす人は決していませんでした。そして、全国から多くの人々が、被災者の為に何らかの支援を行いました。
これこそ日本人の底力であり、利他的な性格であり、素晴らしさ以外の何物でもありません。こんな素晴らしい国民は、世界広しと雖も、どこにもいないのではないでしょうか。我れ先に支援物資を奪い合う事もなく、互いに譲り合う姿は世界から賞賛されました。
ダライ・ラマ法王猊下の「二十一世紀は日本の出番」というお言葉は、あながち間違ってはいないと思います。
一年締め括りの心構え
これから一年を締めくくる年末を迎えます。日本の古き良き伝統をしっかりと引き継ぐような、清々しい新年を迎える準備を粛々と進めて下さい。
そして各家庭では子や孫達に日本の神話を語り継ぎ、先祖のご恩を感じる生き方を生活態度で示しながら、静かに深く感謝の日々を過ごしたいものです。合掌
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