2014年12月31日大日乃光第2097号
「子や孫に後ろ姿で伝える良き習慣と信仰の在り方」
全国の信者の皆さま、新年あけましておめでとうございます。
また、友人知人、そしてご縁によって本誌をお届けしている読者のみなさん、本年もよろしくお願いいたします。
五重塔橋の三世代渡り初めで新年を寿ぐ
昨年六月から始めた五重塔周辺の造園工事も、来たる一月十三日の初参りの時期には八割から九割ほど完成していると思います。この初参りの日には池に水を張り、そして法要が終わるのと同時に滝を流そうと思っています。
これらの環境整備の工事は、平成三十年の皇円大菩薩様御入定八百五十年大遠忌法要に向けた準備の一環としての事であります。
十八年前に落慶した平成五重塔は、塔そのものが御本尊皇円大菩薩様の象徴でもあります。その五重塔が、さながら池の中に浮かぶような景観は、桜ヶ池に八百四十七年前に御入定なされたその事を象徴しているのです。来たる一月十三日の初参りで、その景観を存分に味わって下さい。
池の岸から五重塔までは新たに橋が架けられています。その日には、この橋の渡り初めも計画しています。三世代が揃ってお参りされた方々には、まず一番始めにこの橋を渡って頂こうと思っております。五重塔の御開帳の後には水上の回り基壇から、ほぼ完成した池の景観を存分に楽しんで下さい。
恩師、松長有慶管長猊下ご退任記念祝賀会での感動
さて、少し話は遡りますが、去る十二月二日に私は大阪にいました。それは恩師の松長有慶猊下が、高野山真言宗の管長を八年間、無事にそして存分にお勤めになられたお祝いの会が開催されたからです。八年前の管長ご就任のお祝いにも、私は駆けつけています。
この会は、松長先生が高野山大学に勤務された年に大学の四年生だった方が、先生の教え子の最年長という事で発起人代表を勤められ、その後多くの教え子によって創られた会です。
定刻よりも早目に会場のホテルに着きますと、懐かしい顔が何人も迎えてくださいました。その中のお一人にこんな話を聞きました。「今日の集いの前に、私達は先生を囲んで輪読会をしました。先生は管長であられた八年間も含めて、毎月一回この輪読会を欠かさず開催しておられるのです」この事を私は全く知りませんでした。
遥か四十数年前、私がまだ学生だった頃に、この輪読会に何回か参加したことがありました。その時の記憶が鮮明に蘇ると同時に「あの超多忙な管長であられる間も、あの輪読会を続けておられたのか!」と懐かしさと感動で涙がこみ上げて来ました。
八千枚護摩行の前行の前日であるにも関わらず、無理してこの集いに参加して本当に良かったと、しみじみと感謝の気持ちに満たされました。
走馬灯の様に蘇る度々のご来訪
思えば四年前に完成し、開眼した四天王像の多聞天の胎内(佛像の体の部分には内グリがしてあり、空洞がある)に現職の管長であり、全日本佛教会の会長であり、さらには真言宗長者であられた松長猊下に胎内墨書をして頂いたこと。
二年前に今村九十九大佛師が四天王の製作過程を写真集として発刊されたとき、松長猊下に出版祝賀会の発起人になって頂いたこと。
二年半前(平成二十四年六月二十五日)に高野山真言宗の九州地区の研修会で、松長猊下が管長として玉名にお出ましになられた時、「南大門と四天王を見たい」と、当寺にご来訪頂いたこと。
十年前にダライ・ラマ法王猊下が当寺にご来訪頂いた時、松長猊下に歓迎委員会の代表を務めて頂いたこと。
さらには、十八年前の平成五重塔の落慶法要に参列して頂いたこと、などなどが蘇りました。
恩師というものはなんと有り難いものかと、しみじみと実感しながら松長先生のそばに行ってご挨拶をしました。
一宗の管長という大きな責任の重荷を降ろされた後の、清々しく伸びやかなご様子の恩師に接して「我も斯く在りたし」との思いを改めて深めました。
真言行者としての新たなる誓い
松長猊下は本来佛教学者であられ、教育者でもあられます。そんな先生が八十七歳になられても、更に学問の道を探求されていることに、私は日々全国の信者の皆さんの為に祈祷する僧侶として、また真言行者として「更なる確かな歩みに精進せねば」と自らに誓いました。
先を歩まれる先達であり、恩師でもあられる松長先生という大先達とご縁を頂いている事の幸せを感じた貴重な集いでした。
そういう私も、すでに還暦を越えて三年になろうとしています。自分自身も次の世代の人たちの為にどのような生き方、どのような後ろ姿を示すことが出来るかを模索しているところです。
真言密教では、真に大切なものは人から人へ直接伝えられるもので、書物や記録などで伝えられるものでは無いと言われています。
その人が何を考えているのか、何をしようとしているのかではなく、どんな生活をして、何を成し遂げたのか、成し遂げようとしているのかによって、次の世代の若い人たちの指標にならなければなりません。
後ろ姿で子や孫を導こう!
各家庭において、祖父・祖母・父母が子供達にどのような生活習慣を見せているか、一緒にどのような生活しているのか、それこそが大切であります。
「子は親の鏡」と言われます。また「子は親の言う通りにはしない。親がやっているようにする」とも言われます。
そして「習慣は第二の個性」とも言われます。新年に当たって、何か一つでもこれまでにない良き習慣、良き行動を互いに決意し、実行して行きたいものです。合掌
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