2015年02月16日幸福ニュース第2100号
日々の「四摂法」の実践で心豊かな未来を開こう
造園工事の完成を見届ける
節分が過ぎてもまだまだ寒い日が続きます。先月の中頃には、寺内でもインフルエンザに罹る者が何人か出ました。しかし大したこともなく過ごしております。
そんな中で、来たる二月十日、京都植芳造園の井上社長が来訪されます。それは、今回造園工事が一応の完成を見た事についての、締めくくりとしての現地調査と今後の調整のためでした。
今回の造園工事は、来たる平成三十年に執行する皇円大菩薩様御入定八百五十年大遠忌法要に先立つ、境内の整備の一環としての造園工事であります。
景観の自然への調和と融合は人智を超えた思し召しの賜
以前にも井上社長が言っておられた事ですが、庭造りは工事が完了した時点で完成ではなく、二、三年の歳月を経て、周辺の景色と調和して来るとの事でした。
奥之院の大庭園は三十年もの歳月を費やして木々が生い茂り、以前からそこにあった森や林に馴染んで、小岱山の大自然と融合しています。本院の滝の水の流れも、三年後には自然の中に馴染んで来るに違いありません。
いかに日本屈指の名工の手になった造園であっても、周辺の景色と充分に調和するには、やはりそれ相応の時の流れが必要なのです。
そのような意味で、八百五十年の大遠忌の三年前に主な庭工事を終えたのは、やはり大いなる佛様の思し召しと叡慮が働いていると実感したのでした。
今はまだ、滝の水の音に慣れていませんが、月日を重ねるに従って、さながら深山に居るような清明な感覚の中で、日々を過ごすことになる事でしょう。
人生を正しく導く四つの手立て
さて、先日、若い弟子と輪読会をしていて、久々に強く意識した言葉がありました。それは「四摂法」(ししょうぼう)または「四摂事」(ししょうじ)という言葉でした。
「四摂法」とは、佛様や菩薩様が私達を正しい道、安楽の世界に導くための四つの手立てであります。
また、私達自身が周りの人々と接していく中で、より良き人間関係を築いたり、人との融和を図る四つの手立ての事であります。
またこれは、周りをより良い社会にして行く時の四つの実践徳目と考えてもよいと思います。
一には「布施」、二には「愛語」、三には「利行」(りぎょう)、四には「同事」(どうじ)です。
「布施」とは、今さら言うまでもない事ですが、他の人や周りの人に対して自分に出来るサービス、奉仕をする事です。大乗佛教の菩薩の修行として、「六波羅蜜」の第一番目に挙げられているのが、この「布施波羅蜜」であります。当山の三信条「反省・感謝・奉仕」の、この「奉仕」が、まさに「布施」に当たります。
第二の「愛語」とは、相手に対して、愛のある慈しみの言葉を掛けるという事です。困っている人が居たら「どうかしましたか?」「何か私に出来る事はありませんか?」と、愛のある言葉を相手に掛けることです。これは言葉による布施でもあります。
第三の「利行」とは、相手の役に立つ事をしてあげること、専ら身体を使って相手や社会の役に立つ事をする、と言ったらよいでしょう。
第四の「同事」とは、相手と一緒に居て、その場で一緒に働き、一緒に喜びを分かち合う、という事です。
出来る事から一歩ずつ始める
以上の四つを常に心掛け、この内の一つでも実行し続ければ、その方は必ず周りから信頼され、頼りにされるはずです。これを実行している本人にとっても、更に生き甲斐を感じられるに違いありません。
以上の四つを全部心掛けて実行できれば、これ程素晴らしい事はありません。しかし私達は「愛語」なら「愛語」、「利行」、また「同事」という具合に、この中のどれか一つでも、自分に出来そうな事を思い定めて、続けて行く事から始めれば良いのです。
例えば、これまで優しい言葉をあまり言って来なかったと思えば、今から始めてみましょう。
先代に見習った「愛している!」の言葉
随分前の事でした。先代の真如大僧正様の信者さんが、奥様と相談に来られました。その方は大変な愛妻家でした。先代の前で、「私は一日に何回も妻に『愛してるよ!』と口に出して言うようにしています」と言われたそうです。
それ以来、大正生まれの先代(父)は、母に対して、「お前のいない人生は考えられないヨ」と何度も言っていたと、姉から聞いた事があります。
そんな歯の浮くような言葉を父が言うなんて、全く私の予想外!?の出来事でした。良いと思った事はすぐに実行する。この父の変化に、私も考えさせられるものがありました。
以来、私も妻に対して口に出して「愛してるヨ」と何度も言うようになったのです。最初は照れくさいのですが、何度も「愛しているヨ」と口に出して言っていると、少しずつ心がこもって来ますし、言葉に気持ちがこめられるようになるものです。
口に出して言う事から始まる
日々の生活の中でも、嬉しい事、楽しい事があったら「有り難いね!!」「嬉しいね!!」「有り難うございます」「アリガトウ」と、口に出して言うことが大切です。
人は辛い時、苦しい時こそ、「有り難いなー」とか「嬉しいなー」と、口に出して言う事によって、心の状態や体の調子まで変わってくるものなのであります。
どうか、一歩踏み出すような気持ちで、先ず口に出して言ってみることから始めてみましょう。
愛と思いやりのある言葉(「愛語」)だけでなく、相手の役に立つ小さな親切(「利行」)や、困っている人、悲しんでいる人に少しずつ寄り添う事(「同事」)を実行して行きましょう。
その先に、真心を周りに及ぼす布施の生活が、少しずつ進化して行く事でしょう。
細胞に刻みこむ程の拝み倒しの熱き信仰を
『般若心経』などをお唱えしての日々のお参りは、一度お参りすればそれでよいというものではありません。同じお経や御宝号を毎日、何度も唱え続けて、それが習慣になり、更には自分の細胞にまで沁み込んだ時、大きな力を授かります。
それと同じように「布施」「愛語」「利行」「同事」も、日々の生活の中で少しずつコツコツと続ける内に大きな力となると信じて、実行してみて下さい。合掌
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