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2015年09月01日大日乃光第2119号
「”愛の鞭”で教え諭した一休さん修行会」

今年も、第六十七回「一休さん修行会」が無事に終了いたしました。

七月三十日から八月二日までの三泊四日の日程で開催され、今年は小学二年生から高校一年生までの全六十一名という大人数でした。(三年生以下は、兄姉が面倒を見る条件で受け入れを認めました。)
 
しかし最年長こそ高校一年生でしたが、中学生以上がわずか四名と少なく、例年に比べて小さな子供たちが多かったのが印象的でした。
 
そして、いつもなら七月の終わりまでは受け付け期間が続いていたのですが、今年は六月中に定員の六十名に達しましたので、募集の打ち切りという、例年にない早い申し込みを頂きました。
 
一時期は参加者の人数が減ってきていたのですが、ここ三、四年ほど参加者が増加傾向にあったのは、「一休さん修行会」で教わる様々な事柄が信者の方のみならず、一般の方々にも受け入れられてきたからだと思います。一休さん修行会を続ける事の意義を改めて感じさせられました。
 
〝愛の鞭〟
 
今回、私は子供達を沢山叱りました。一休さん修行会では〝怖い先生〟〝優しい先生〟という風に、先生達を意図的に二種類に分けます。
 
それは何故かと言えば、優しい先生ばかりで怖い先生がいなければ、子供達が野放図に暴れてしまい収拾がつかなくなるからです。逆に怖い先生ばかりで優しい先生がいなければ子供達が委縮してしまい、子供らしさがなくなります。
 
これは各家庭でも同じだと思います。怖い先生役のお父さんがいるから家庭が引き締まり、優しい先生役のお母さんがいるから家庭が和むのです。

しかし最近では「愛情を持って叱る」のではなく、自分自身の怒りをぶつけてしまう人が結構おられるようです。暴力や体罰ではダメなのです。〝愛の鞭〟と言うように、その人に良くなって欲しいと思って叱る事が大切だと思います。
 
そして叱る為には大変な気力を必要とします。時には相手からも嫌われますが、そもそもどうでもいいと思った人には叱ろうとはせず、何もしないのです。やはり、良い人になって欲しいと思うからこそ、気力を振り絞って叱るのです。
 
だから皆さんも叱られたなら、その人がなぜ叱ってくれたのかをちゃんと考えて下さい。そうすれば叱られた方もふてくされずに、ちゃんと叱られた理由が分かるはずです。
 
掃除(下座行)で感じたこと
 
今の子供たちは日頃あまり掃除をやっていないのでしょうか?それともちゃんと習っていないのでしょうか?
 
私達が「畳は〝畳の目〟(畳表の編み目)に沿って拭くように、床は〝床の目〟(床板の柾目や継ぎ目)に沿って掃くように、掃除をしてください」と言うと、子供達から「畳の目、床の目とは何ですか?」と質問が返ってきました。
 
最近は畳ではなく、フローリングの家屋が増えてきていますので、畳の目が分からない子が多くなるのは仕方がない事と思います。しかしそれならば、床の目に沿わせる事は知っていて欲しいものです。私達が小学生の頃は、学校の掃除の時には学校の先生から教わり、家に帰れば親や祖父母から教わった基本的な事だと思います。
 
話が少し変わりますが、当山の宗務長先生(光祐先生)が大学に教えに行くと、「最近の若者は言葉を知らない!」と嘆いておられました。

例えば鎌倉時代に今で言う社会福祉事業を始められた興正菩薩叡尊上人様の業績を教えるために、叡尊上人様が中興された奈良の西大寺や真言律宗の事を説明しようとします。
 
そして中学校の社会科で当然習って来たはずの、弘法大師空海上人様が始められた高野山真言宗へと説明を進めて既知の話題に繋げようとしても、学生達は弘法大師様の事も、高野山も真言密教の事も分からないという反応で、大学教育として知識をより拡げようとしても、知識の根幹が出来ておらず、大元まで辿りつけないことが多いと嘆かれたのです。
 
今回の掃除の事も同じだと思います。基本的な事が分からなければ、応用編には進めないのです。つまり畳の目、床の目がわからなければ、その先の拭き方などには進めないのです。
 
ここでなぜ畳の目、床の目に沿って掃除をしなければいけないのかを申しますと、畳の目に沿って掃除をしなければ畳が擦れて傷みますし、ゴミが目の中にどんどん詰まり、掃除をしているのかゴミを目に詰めているのか分からなくなります。掃除をしているつもりになっているだけなのです。だから、目に沿って掃除をするのです。
 
次の世代に伝える
 
一休さん修行会で一番印象的な出来事は、食事担当になった班の子供達の中に、他の子と違って私達僧侶に注意される前に、食べやすい位置に箸を並べたり食器を並べて配膳している子が一人いた事です。それ以外のほとんどの子はお椀や箸などを適当に置いていました。
 
後でその子に聞いてみると、昔、その子の父親が一休さん修行会に参加していて、その父親にいつも言われているからと答えたのです。小さい頃にこの修行会で学んだ事を家庭の中で実践し、次の世代に引き継いおられるのです。そして、良い経験を積めたという事で、自分の子供をまた一休さん修行会に参加させておられるのです。

貫主様が本誌で常々おっしゃられている「信仰を次の世代に伝えて行く」という事の意義と本質を、その子の返事の中に垣間見せられた思いであります。
 
これも貫主様のお考えですが、基本的な知識が人には大切なように、基本的な生活習慣を身に付ける事の大切さを今回の「一休さん修行会」で改めて実感しました。
 
人は良き生活習慣を身に付けることで、良い生き方を歩む出発点に立てるのではないでしょうか。これはそれぞれの家庭で子供に親の生き方を通じて伝えるしかありません。
 
私は最近結婚しましたので、この家庭での生活習慣をもう一度見返し、お寺で身に付けさせて頂いた良き習慣をしっかり見つめ直し、更に高めていかなければならないと感じました。
 
一休さん修行会は、子供たちにとってはこれから先の長い人生の中で、時間的にはたった三泊四日の間の出来事なのかも知れませんが、されど三泊四日の中にこれから人生を送る上で大事な局面を様々に含んでいるのをまざまざと実感いたしました。合掌




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