2016年01月06日大日乃光第2130号
「三つの生活習慣と「三信条」の進化で良き家庭と明るい社会にしよう」
新年明けましておめでとうございます。
皆様輝かしい新年を明るい希望を持ってお迎え下さっておられますでしょうか?
開山上人様の生誕百二十年
今年は有難いことに開山上人様 (開山大僧正様)の御生誕百二十年の年に当たります。御生誕の前の年に「日清戦争」が勝利で終わりました。ほっと胸を撫で下ろす中で、日本中が沸き立ち、未来への希望を持っておられた事でしょう。そんな中で迎えた明治二十九年の正月を明治の人達はどんな思いで迎えられたでしょうか?
この明治二十九年の六月十三日、 ( 皇円大菩薩様が御入定されてより七百二十七年後の奇しくも同じ月日) に、開山上人様はこの世に生を受けられました。 皇円大菩薩様の生まれ 変わりとも言える開山上人様がお生まれにならなければ、今の当山は存在しなかったかもしれないのです。ですから、先に「明るい希望を持ってお迎え下さっていますか ?」と申し上げたのです。
申年は明るい希望の年
「暗い、暗い」と言う人には暗い事が起こり、「明るい、明るい」と言って、そのように行動する人には希望の光が射し込んで来ます。困難な時代こそ私達一人一人が不安や恐れの心ではなく、希望や前向きな心を持ち続ける事が、それぞ れの家庭や地域、そして国家を少しでも明るくする大切な要素となるに違いあ りません。
さて本年は申年です。この申年の 「 申 」シンの意味は、人偏を付けた「 伸 」の意味を持ち、「 草木が十分に伸びきった時期に相当し、実が成熟して香りと味が備わる時期」 とされています。 その意味では明るい希望の持てる年という事が出来ます。
普通には申年を猿の年として「 災いが去る」な ど、「災いを転じて福となす」意味合いを持たせています。この言い習わしを先人の知恵として受け止めて、前向きな先人の心構えを私達も生かしたいものです。
多宝塔の「部材切り込み」に匠の技を発揮する名工達
いよいよ今年から皇円大菩薩様御入定八百五十年を記念して建立する 、「多宝 塔 」の部材の切り込みが始まります。今回も先の南大門の建設を手がけた時と 同じく、匠社寺建築社に担当して頂きます。
設計は、五重塔と南大門の設計を手がけた匠社寺建築社の大浦敬規社長です。 棟梁は、五重塔にも南大門にも素晴らしい匠の技を発揮して頂いた田中重 光棟梁です。
四十代だった棟梁も今は還暦を過ぎ、まさに名人の域に達しておられます。この大浦社長も田中棟梁と同年代の円熟期の、日本屈指の寺社建築の設計者です。 その二人の絶妙なコンビで、必ずや素晴らしい多宝塔が出来るに違いありません。
初まいりに無量寿如来のお披露目
そして、 その多宝塔の中にお祀りする 「五智如来」 は、 南大門の四天王像を 顕現(聖なる佛像を生み出すこと)して頂いた、 今村九十九大佛師です。今までの二体の阿閾如来と宝生如来に加えて、来たる一月十 三 日の初参りに合わせて、 三体目の無量寿如来 (別名 阿弥陀如来 )が本堂に仮安置されているはず です。本年中には四体目の不空成就如来(別名 釈迦如来)が完成し、来年から 再来年にかけては最後の大日如来が完成する予定です。こうして五体の如来様 が多宝塔に収まるのが平成三十年です。
勇気と希望を与える多宝塔と五智如来
「苦難の中にこそ菩薩は出で賜う」と昔から言われています。振り返れば三十 八年前の奥之院の落慶法要は石油ショック、本院の平成五重塔はバブル崩壊、 そして、南大門は東日本大震災の直後に落慶しました。それぞれに苦難の内容は 異なりますが、それぞれの困難を雄々しく乗り越え、そして乗り越えつつあり ます。 皇円大菩薩様御入定八百五十年の平成三十年に多宝塔と五智如来が姿 を現わされるという事は、多くの人びとに苦難を乗り越える勇気と希望を与え るものになると確信しています。
良き家庭を作る三つの生活習慣
困難に立ち向かう為には私達が日本人としての良き生活習慣をしっかりと引 き継ぐ事が大切です。
それは、いつも新年にお伝えしている。
一、履き物を揃える
心を落ち着かせるために
二 、家族で互いに挨拶をかわす
心を開き、良き人間関係を造るために
三、食事の時必ず 「いただきます」 「ごちそうさま」と言う
全ての命とそれを作った人に感謝をするために
この習慣を家庭で定着させてください。 特に 「 いただきます」は全ての食材の命に感謝する事であり、 日本独自と言ってもいい良き生活習慣です。水と塩 以外の肉や野菜など全ての食材は、私達と同じ命を持っています。 一般的には 命はないと思われている水や塩、 そして山や川などの天地自然にまで 命を感じ取って感謝して来たのは、私達日本人の持つ世界に誇れる精神性と言っても よいでしょう。
日本独自の宝塔
多宝塔は世界の佛教国の中で、日本にしかない独特な塔です。日本が世界に誇る佛教建築なのです。佛塔は全ての佛教国に数多く建てられていますが、一層が 四角で二層が円形の多宝塔は、弘法大師様が感得された日本独自の佛塔なのです。その姿形は穏やかで豊かな日本の景観によく調和する塔です。
この多宝塔 に五智如来をお祀りするという事は、日本的な美意識や価値観の中 に全世界的な佛教の知恵の象徴を融合させるという深い意義を感じます。 「 慈 悲の象徴 」 である五重塔に対して、 多宝塔は 「智慧の象徴」 であります。五重塔には衆生済度の慈悲にあふれた皇円大菩薩様がお祀されています。
多宝塔にお祀りされる五智如来
一方で多宝塔にお祀りする当山の五智如来は皇円大菩薩様の深い瞑想の智慧と 慈悲の「祈りの力」によって姿を現される佛様なのです。 この五智如来はまさに、「智慧を象徴する佛様」なのです。これからあと三体、全ての佛様が姿を現 された、この五智如来が、さらに皇円大菩薩様にお力を注がれる事になります。
そうすれば、皇円大菩薩様は衆生済度のお力をなお一層発揮して頂けるのです。 五智如来の智慧とは、
(一)大日如来 =「法 界 体 性 智 」
・全宇宙的な智で、全ての生きとし生けるモノの調和と発展に働きかける智慧
(二) 阿閾如来 =「大 円 鏡 智 」
・現実を曇りなく映す大きな鏡のように、全ての事をありのままに見る智慧
(三 ) 宝生如来 =「平 等 性 智 」
・全ての生きとしいけるモノが、本来は同じ命を持ち、平等であることを明らかにする智慧
(四) 無量寿如来 = 「妙 観 察 智 」
・人々の個性の違いを見極めて、教え導く智慧
(五) 不空成就如来=「成 所 作 智 」
・体の全ての機能を発揮して、良き働きを進める智慧
成所作智を身につけた名工達
先にお伝えした名人級の設計者や大工さん、そして大佛師さん達は、手足を存 分に使い、物づくりへの思いをお弟子さん達に充分に伝えて、良き仕事を続け ておられます。これこそ、 (五) の不空成就如来の 「 成所作智 」の一部を身に付けての良き仕事なのです。また私達が三つの良き習慣の、「いただきます」と全ての食べものへの感謝の心を口に出して言う時、 (三)の宝生如来の「平等性智」の一部分を身に付けるきっかけとなることでしょう。この様に考えると 五智如来のそれぞれの智慧は私達と全く別の世界の事ではありません。
身 ・ロ ・意 の 三密の修行を、習慣 (身)と 言葉 (口)と 心構え(意) を変えて行く事によって修行している事になるのです。 このように私たちも身近な所でこの五つの知恵の一つでも身につけることが出来るのです。こうして自分に出来る身近な所から、家庭を地域を照らしていきましょう 。
智慧で照らされる「三信条」
さらに以上を当山の 「反省 」 「 感謝 」 「 奉仕 」 の 「三信条 」 に照らして申しますならば、自分への問いかけとして、
「現実をありのままに見ているか? 」
「大円鏡智」に相当
「周りの人びとに公平に接しているか?」
「平等性智」に相当
「若い人や後輩の個性に合わせた指導が出来ているか?」
「妙観察智」に相当
「日々の生活で具体的に努力しているか?」
「成所作智」に相当
これらの四つの佛様からの問い掛けに、澄んだ心で素直に向き合えば、日々 「反 省 」せざるをえません。 そしてこれらが自分一人では、十分に出来なくても、 見本となる人が周りにおられれば、導かれることでしょう 。
そしてその方に感謝するのと同時に、皇円大菩薩様に 「こんな私でも、何とか 役目を務めています」「生かして頂いて有難うございます」と「感謝」したいものです。
さらには、以上の 「反省」 と 「感謝」 を経て、「こんな私でも、人様や社会 のために何か出来る事はないだろうか?」と 「奉仕」の心を起こし、ほんのわず かでも自分に出来る事から行動に移して頂きたいものです。 本年も皆様が健 康で幸福であられますよう心から念願して、年頭の法話と致します。合掌
(八千枚護摩前行中に記す)
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