2016年01月29日大日乃光第2132号
「節分で今一度「一年の計」 明るい目標で菩提心を高めよう」
寒中お見舞い申し上げます
全国の信者の皆さん。一年で一番寒いこの季節をどの様にお過ごしでしょうか?
本誌が皆さんのお手元に届く頃、寺内では節分を間近に控えて「星祭り開運祈祷」の最後の受付に追われていることでしょう。
一方で私は今、この法話の原稿を皆さんへのお便りの様な思いで書いています。今日は一月十七日、日曜日の朝七時過ぎです。昨夜は博多での会合から新幹線で帰り着いたのが夜十時前。
何かに起こされるようにして朝三時三十分に目を覚ましました。いつもの様に朝の祈祷を済ませていつもより早く新聞に目を通すと、それまで不覚にも気がつきませんでしたが、今日が阪神淡路大震災から二十一年目の朝であるという記事が目に留まりました。
阪神淡路大震災慰霊の日
二十一年前の朝は火曜日でした。なぜ火曜日とすぐに言えるかと言いますと、毎週火曜日は朝の七時半から各部署の責任者の皆さんとの連絡会議だからです。会議が終わってテレビをつけると、目の前に大震災の惨状が飛び込んできました。
組織を総動員した救援活動
その日以来、寺の職員とお弟子さんたち、そして国際協力のアルティックのスタッフと信者さんの有志の皆さんによって、ほぼ一年間神戸に常駐して、ボランティア活動を継続的に実施したのでした。
私は平成四年から三年間の籠山中でしたが「この活動はまさに衆生済度の実践なのだから、皇円大菩薩様は『英照!!おまえも行ってこい』と言われるに違いない」との確信のもと、神戸の被災地に出向きました。
その後、宗務長の光祐(アルティック専務理事)や久家君(同事務局長)達の働きによって、神戸の地元の人達による継続的なボランティア組織を立ち上げました。その名も「アルティック須磨ボランティア会」。この組織にボランティア活動を引き継いで、私達の神戸での活動は終息したのです。
ボランティア元年と五重塔
まさにこの年は、様々な人が奉仕の心に目覚め、多くのボランティア組織が立ち上げられました。ですからこの年は「ボランティア元年」と後に言われる様になりました。一方でこの年は、「平成五重塔」が今まさに大地から湧き出す様に姿を現す直前でした。
その頃の私は、神戸での支援活動にどのくらいの経費がかかるのか、そしてどのくらいの期間を要するのか、全く予測が立ちませんでした。しかし大震災の支援活動が多額の経費と期間を要したとしても、五重塔の完成を先に延ばしてでも支援活動はやれるだけはやろう!と心に固く決意しました。結果として、信者の皆さんからの多額の募金と、様々な公的機関からの助成金を受けて、我々の身の丈に合った救援活動ができました。
具体的な活動内容は、災害の発生から二~三ヶ月程は「炊き出し」など被災者に寄り添う事が中心です。その後は、仮設住宅に入られた人々のコミュニティー作りのお手伝いへと移って行きました。こんなことを朝からつらつらと思い出しました。
佛心から始まった支援活動
五年前の東日本大震災では、既に本誌で詳しくお伝えしてきた様に、福島県いわき市内にあるNPO法人ザ・ピープルというボランティア団体を通じた支援を三年間続けてきました。
支援の内容は二十一年前の阪神大震災とほぼ同じです。それに加えて、未来を背負う人材を育てるための「いわきヤングリーダー育成研修イン熊本」を通じて今でもお付き合いが続いています。
大きな災害などの時、一時的には外部からの緊急支援が大切ですが、その後はなるべく被災地やその周辺の人々が助け合い協力しあって復興して行くべきものと考えています。緊急支援やボランティア活動と信仰を重ね合わせるのは少々無理があるとも思いますが、こんな例えをしてみましょう。
かつての神戸や東北などの被災地に入ったボランティアは自分の心の中の叫びとも言える「いても立ってもいられない衝動」に突き動かされて、いつの間にか被災地に立っていた人が大勢おられました。まさにこの心こそ、私達の心の中に「佛様がいらっしゃる」「人の心に佛心がある」事の証明でしょう。
智慧と方便
その後の具体的な支援活動を進めるためには、具体的な手立てをしっかりと確立しなければなりません。これはまさに佛教の説く慈悲の心に裏付けられた智慧を深める事に相当します。そして具体的な支援や救援の活動はまさに〝方便〟です。
〝方便〟と言えば「ウソも方便」という言葉があまりにも有名ですから、〝方便〟とは嘘か?と勘違いしている人もいます。しかしこれは完全な間違いで、佛様が「衆生済度」(多くの人々を救う事)をされる時の具体的な手立て(対策・ノウハウ)の事を〝方便〟というのです。
ボランティアの三ヵ条とは?
そして個人で、または組織としてのボランティア活動を進める中で、その心構えとして大切なことは、以下の三ヵ条です。
(一)ボランティアは相手に恩を着せてはならない。
(二)支援を受ける方も、素直にその行為を受け入れられる様でなければならない。
(三)支援活動そのものがまともな資金によって賄われていなければならない。
これは布施がより完全で、人の生き方を高める修行としての布施になるための三つの条件と全く同じことなのです。それは「三輪清浄(さんりんしょうじょう)」と言われます。
(一)布施をする人が相手に恩を着せてはならない。
(二)布施を受ける側が負担に感じたり負い目を感じてはならない。
(三)布施されるそのものが清浄(清らか)でなければならない。
以上の三つの条件です。
いかがでしょうか。ボランティア活動をより意義のあるものとして、私達の人間性を高めるものにするためには、佛教が伝統的に説いてきた布施の原則がいかに大切かを理解していただけたでしょうか?
身・口・意による奉仕
そんな中で、ボランティアというより、いつでも誰にでもできる奉仕的な行動として「身・口・意(こころ)」の働きの中に、周りの人々への「感謝の心」「反省の心」や「思いやりの心」を持って接することは、まさに「奉仕の行」「慈悲行」の日常化と言えるでしょう。これこそ、いつでもどこででも出来る、佛様から褒められる生き方に近づく方法に違いありません。
一年の計を立てて明るく歩もう
節分を直前にして、まだ一年の計を立てていなかった方は是非、この運気の変わり目の節分に今一度「一年の計」を立ててください。
人が運気の変わり目に立てる目標は、必ずや明るく力強く、そして周りの人々にも良い影響を与える目標になるに違いありません。それは先にもお伝えしたように、私達の心に佛心があるからなのであります
そしてその目標は自らを向上させるものでもあるはずです。これこそまさに「菩提心」(限りなき向上心と、人の痛みの分かる心)がその目標としての「一年の計」の中に含まれているからなのであります。
佛様のお力とお加護を頂いて、星祭りで運勢を開いて頂くのと同時に、私達自身も良き目標を立てて「慈しみの心」「思いやりの心」さらには「布施の心」「奉仕の心」を高めていきましょう。
そして少しでもより幸福に、より明るく、より前向きに本年を過ごしましょう。暗くなりがちな世相の中にあっても、私達はみ佛様の明るい光を受けながら、その光を少しでも多く反射して行きたいものです。合掌
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