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2016年03月25日大日乃光第2137号
五年間の努力が報われたミャンマー/ビルマご遺骨帰國運動(2)

こちら玉名では三月五日を境に一気に気温が上がり、さながら初夏の陽気に包まれました。その後少し落ち着きましたが、今は既に完全に春になっています。
 
英霊の七十一年ぶりの帰国
 
さて、去る三月四日の午前六時二十四分、成田国際空港で十柱の旧日本軍兵士のご遺骨が七十一年ぶりに祖国の土を踏まれたのです。私は「ミャンマー/ビルマご遺骨帰國運動」共同代表のお一人、林秀穎先生他五名と共に、今や遅しと固唾を呑んで待ち受けました。
 
定刻より早く着いた一行は、ミャンマーからご遺骨に同行したもう一人の共同代表の小島知広さんを先頭に、「ミャンマー国民和解担当日本政府代表」の笹川陽平氏(日本財団会長)が続き、その後ろに厚生労働省の職員が白木の遺骨箱を丁寧に奉持して続きます。
 
その後に、三人の仲間達が続きました。その中には今回のご遺骨帰国の立役者の井本勝幸さん、私の名代として二月二十二日からミャンマーに同行していた宗務長の次男、川原光照も行列に加わっています。そしてご遺骨は、私達と共に帰国を待ち受けていた厚生労働省の幹部に丁重に引き渡されました。
 
次世代に引き継ぐ運動へ!!

 
こうして戦後七十一年ぶりに英霊が祖国への帰国を果たされたのです。この模様はNHKを始め、各局のテレビ報道で日本全国に報道されましたので、ご覧になった方も多いと思います。その後、私達は午後四時から厚労省の中で開催する記者会見に臨むために、この運動をいかにして次の世代に引き継ぐかを合わせて検討し、打ち合わせ致しました。

私達にとって、厚労省での記者会見は今回で三回目ですが、過去の二回とは全く違ってテレビカメラが五台も入り、各マスコミの記者達が真剣な面持ちで私達の報告を聴いてくれました。その後の質疑応答でも要点を確実に衝く的確な質問を受けました。これは現実にご遺骨を伴って帰国した事実の重みに、全てが帰結しているからに違いないと思います。
 
朗々と響いた三宗派の読経
 
その日は国会開催中という事もあり、その後五時半からは塩崎恭久厚生労働大臣立会いのもとで、ご帰国を果たされた十柱の英霊に対する「拝礼式」が厳かに執り行われました。去る二月二十八日のミャンマー現地での「焼骨式」、つまりご遺骨を荼毘に付す時も、今回の「拝礼式」も宗教色を一切排しての式典として執り行われました。
 
これは日本国憲法第二十条の「信教の自由と政教分離の原則」に基づくもので、政府が行う宗教的な儀礼としてはやむを得ないことなのでしょうが、その前に私達真言宗の僧侶三名が『理趣経』を唱え、林代表が曹洞宗のお経を朗々と唱えられました。
 
そして今一人の共同代表の小島さんは、井本さん他一名と共に三名で日蓮宗のお経を、これまた音頭朗々と心に染み入るように唱えられました。ある厚労省の幹部職員の方は、英霊に対する私達三宗派のお経による弔いに、いたく感激しておられました。
 
政教分離の弊害
 
私が尊敬している外交評論家の加瀬英明先生は、「今の憲法下では、政府や地方自治体が率先して無宗教を広めているようなもので、このままではいずれ日本人は公式な場での宗教否定が体に染み付いてしまう!」と嘆いておられました。

まさに加瀬先生の言葉通りの現実を、日本政府の厚生労働省という役所の中で実感したのでした。今回は大臣であれ政府高官であれ、自らの宗教的な行動がさも許されないかのような空気が支配する中での私達の読経でした。
 
まさに加瀬先生のおっしゃる通り、このまま時代が過ぎて〝政教分離原理主義〟とでもいった状態が続けば、まさに無宗教国家となって行くかもしれません。ここにも〝日本占領基本法〟と言ってもおかしくない現憲法の改正が求められる一端が垣間見えました。
 
感謝の言葉を言わない教育の現場
 
随分前に聞いた話ですが、公における脱宗教の表れとして小学校の教育現場でこんな事が行われていたそうです。
 
学校給食の時間になると、先生がホイッスルをピッと吹いて、児童達は一斉に給食を始めるのだそうです。合掌をして「いただきます」と言うなどは、完全な宗教的な習慣であるから公教育の現場では相応しくない!という論理だそうです。
 
私はそのような現実を見たわけではありませんが、皆さんの子や孫達がそのような学校に通いながら給食を食べている姿を想像してみてください。まるで家畜に餌を食べさせているように私には感じられます。
 
アメリカ大統領就任式で祈祷を行う牧師
 
こんな話はさておき、宗教的行為と宗教行為とは全く別の事です。また宗教的慣習と宗教行為も別物です。そして宗教的教育と宗教への学習も別の分野です。
 
たまたま十六年前に、私はアメリカでの大統領就任式の模様をNHKの衛星放送で見た事がありました。式典の冒頭、〝祈祷〟と書かれたテロップが画面の下を流れる同時中継の中でジョージ・ブッシュ新大統領が、会場に詰めかけた何万人もの国民の前で神に祈りを捧げていました。
 
 
南部バプテスト連盟という一プロテスタント教派の牧師を超えて「大統領の牧師」「国家の牧師」とも呼ばれ、全国民から尊敬されているビリー・グラハム牧師の代理として立った、その息子フランクリン・グラハム牧師を導師に、大勢の牧師さん方が立会人として見守る中での壮麗なひとコマでした。
 
それは現在の日本では全く想像する事さえできないような光景でした。この〝祈祷〟によってその場の空気が一変したように感じたのは私一人ではないはずです。そんなキリスト教国家のアメリカ合衆国に対して、我が国の国柄はどうあるべきでしょうか?現状はどうでしょうか?皆さんも一度考えてみてください。
 
数多の犠牲者にも心を致す春のお彼岸追善供養
 
さて、すでに本誌が皆様のお手元に届く頃は、春のお彼岸の真っ只中であるに違いありません。
 
当山では日本全国の数千人の方々から「春彼岸追善護摩供養」のお申し込みを受け付け、日本全国の皆様のご先祖様方を、ここ玉名の蓮華院の貫主堂の持佛の間にお迎えしています。そして十八日から二十二日まで、いつもより更に早い時間から一霊一霊懇ろにご供養を厳修致します。
 
この時、私を含めた歴代の貫主は、先の戦争での全ての犠牲者と阪神淡路大震災、そして先の東日本大震災の数多の犠牲者のご供養も合わせて厳修して参りました。
 
皆様も是非、ご自分のご先祖様だけでなく、少しでも心を広くして、地域の先人や国家の戦争犠牲者の方々の供養にも少しだけでも心を致して頂きたいものであります。合掌




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