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大日乃光






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2016年04月11日大日乃光第2139号
八百五十年大遠忌を機に香煙絶えぬ蓮華院信仰へ(2)

〝万能の天才〟の弘法大師には芸術作品を見る目もありました。唐(中国)から帰国される際には二百十六部四百六十一巻もの多数の経典類や両部大曼荼羅、祖師図等と共に、多数の密教法具を造られて我が国に請来されました。これら全ては、それまで日本に渡来していないものばかりだったのです。
 
その中には現在超一級の国宝になっているものが沢山あり、京都の東寺(教王護国寺)等に所蔵されています。
 
当山でも皇円大菩薩様御入定八百五十年大遠忌を記念しての多宝塔落慶法要に向けて、多宝塔の内装を以下のように荘厳致します。
 
御霊示に導かれ、三顧の礼でお招きする当代最高の画伯
 
かつて五重塔の内装、荘厳にはチベット佛教の僧侶で絵師の方に五幅の曼陀羅を描いて頂きました。これは修行の一環として描かれましたから、芸術大学の学生がアルバイトで描いた佛画などとは、佛様一体一体の表情から全然違います。魂が籠っているのです。技術的にも日本にはない、世界最高のレベルです。
 
そうすると多宝塔の内装を考えた時に、五重塔を超えるとか、並ぶという事はもはや考えられないのです。そうこう思案している内に、紫綬褒章も受賞しておられる倉敷市在住の造形作家、高橋秀画伯に思い至りました。
 
奥様でコラージュ作家の藤田桜さんとご自身のお名前から「秀桜基金留学賞」という奨学金を創設され、以来十年間、私財を投じて若手芸術家達が海外で創作活動を行う機会を提供し続けて来られました。
高橋さんは芸術の本場、ローマで四十一年間、創作活動に打ち込んで来られました。異文化の中で、敢えて日本的な表現は禁じ手としながら、己の個性を打ち立てて来られました。
 
世界的な評論家をして「高橋秀の作品を置いていない現代美術館、もしくは近代美術館は決して一流とは言えない」と言わしめるほどの才能溢れる芸術家です。
 
その方が十年来の仕事に区切りをつけて、いよいよ多宝塔の内装に作品を描いて頂くことになりました。これは凄い事です。
 
実は、この仕事を受けて頂くための説得には三年かかりました。一人で二回伺い、匠社寺建築社の大浦社長と二回、五智如来を顕現して頂く今村九十九大佛師と三人でも伺いました。その甲斐あって昨年の五月、蓮華院にお越し頂き、五重塔の内装も見て頂きました。
 
高橋画伯は今年で八十六才になられます。初めてお願いに伺った時には「もし、生きとったらね」と答えられました。当時、高橋さんは開山大僧正様のご入定の年齢の八十二才でした。
それ以前に、私は皇円大菩薩様に「高橋秀さんに多宝塔の内装を依頼してよろしいでしょうか?」とお尋ねしていました。すると、「すぐに頼みに行け!!」と一言でした。何度断られても頼み続けるように命じられていたのです。
 
これまでの延長で、私には出来上がりのイメージがあります。それが多宝塔にマッチするという確信もあります。高橋画伯ご自身も「佛様のご期待に応えなければいかんな」と、今しみじみ思って頂いています。
 
熱気とパワーの桁違いな皇円大菩薩様の御霊力
 
ところで皇円上人様は『扶桑略記』巻二十四(醍醐天皇の條)に、弘法大師の事を述べておられます。皇円上人様は弘法大師の事をよくご存知だったのです。そして比叡山で訓育されたお弟子が三千人と、弘法大師と変わらないレベルまで達しておられたと思われます。そのお弟子の中のお一人が、浄土宗を開かれた法然上人ですが、他にも大勢のお弟子さんがおられたのです。
 
そういう中で、晩年の皇円大菩薩様は誰に頼まれるでもなく、自ら桜ヶ池で龍神に化して修行を続けるという御誓願を立てられました。そして、修行の成就の暁には末世衆生の苦しみを抜き去りたい、世界の為に働きたいと、魂を留めて七百六十年もの長い長い御修行に就かれたのです。こんなお方は歴史上、外には知りません。
 
ある時、先代真如大僧正様はこんな例え話をされました。真如大僧正様は佐賀の東妙寺で十三年住職を務められましたが、その頃毎朝拝んでおられたご本尊様は運慶作と伝わる釈迦如来座像(国指定重要文化財)です。 
 
東妙寺は後宇多天皇の勅願により、皇室領の肥前国神埼荘(かんざきのしょう=現在の佐賀県神埼市と三養基郡・佐賀市の一部を含む)の三千三百町歩もの広大な領域を下げ渡して、西大寺より派遣された唯円上人を開基として創建された格式高い古刹です。
 
その釈迦如来様をいつも拝んでおられた先代に、名も無き人が造られた蓮華院の(以前の)皇円大菩薩様の御尊像との違いを尋ねましたら、こんな例えを話されました。
 
「東妙寺の釈迦如来様は大きなたらいにお湯が満々と満ちていて湯気がわーっと上がっている。手をつけたら《温かいなー》《ありがたいなー》という佛様。
 
ところが皇円大菩薩様はぐらぐら沸き立つ窯の湯と一緒で、気を抜いて触ったら火傷する。東妙寺は四十二度、蓮華院は百度以上で熱気とパワーが全然違うと。皇円大菩薩様は今でも脈々と生きて活躍されている佛様なのだ。
 
東妙寺の佛様は温かいお慈悲に満ちている。それにすがろうとするお年寄りにはそれで良かろう。しかし皇円大菩薩様は意気盛んに人助けをされているんだから、その熱気は全く違うのだ」と。
 
歴代貫主のお力も重なり益々高まる衆生済度の御霊力
 
その後、蓮華院に帰られた後、開山大僧正様がご入定されてからは、こうおっしゃっておられました。
「おれの力は大したことがない。開山大僧正様からすると五分の一も無かろうな。しかし今は、開山大僧正様の時よりご利益が早いと思う。私はしっかりとそう感じている。その理由は開山大僧正様も一緒になって応援しておられるからだ」と。
 
その開山大僧正様は、昭和五十二年六月十三日朝のご法話で、こうおっしゃいました。「皆さんのお陰で奥之院の開山堂が出来る目処が付きました。これからは皆さん達の孫子の代まで、またその先まで、私は開山堂に留まって皆さんをお守りします。これははっきりと約束します」と。
 
その時、私は凄いなと思った反面、ひょっとするともう亡くなられるのかなと不吉な予感がよぎりました。何とご入定はそれから半年後の事でした。開山大僧正様のご入定の後、私が奥之院の院代であった頃、毎月二十日のご命日には開山堂にお酒をお供えして一人でお参りしていました。
 
私は開山大僧正様とお酒を酌み交わした事がそれまで一度も無いのです。一番若い弟子としてお仕えしましたから、一度か二度、お茶を一緒に頂くぐらいでした。先代真如大僧正様とも、貫主になられてからは酒を酌み交わしたことはめったにありませんでした。弟子に対しては、歴代貫主はそれほど厳しかったのです。
 
ですから、お酒をお供えして「今こうして何とか務めております、どうかお力をお貸し下さい」と毎回話しかけていました。そんな凄い人の後ですから、真如大僧正様はさぞ大変だったろうと思いながら、少しでも自分も近づかなければならない、どうかお力をお貸し下さいと言ってお参りし、そしてお酒を酌み交わしました。
 
香煙絶えぬ法灯を実現し、ご利益の環を拡げて行くために
 
一方で蓮華院は中興以来、まだ八十五年しか経ってないのです。これからこの蓮華院がどういう風になって行くか。私達の日々の精進のあり方と、信者の皆さん達お一人お一人の思いの積み重ねがお寺を変えて行くのです。
 
皆さんがいい加減な信仰をしたら、〝香煙絶えることなし〟どころか誰もお参りに来なくなります。
ですから今日は敢えて皆さんに苦言を呈します。「もうこんな信仰でよかろう…」「佛様にぶら下がっているだけでよかろう…」これでは駄目です。佛様も力を発揮しようがありません。皆さんも新しい信者さんを一人、二人、三人頑張ってお寺に連れて来てください。
 
今日、護摩を焚きながら、「これは本人が頼んでいないな」「お爺ちゃん、お婆ちゃんが代わりに頼んだな」「本人は祈願料を出しておらんな」と私には分かるんです。しかしいつまでもそのようにしていたら、大事なお子さんやお孫さん達はせっかくのすごい佛様とのご縁を活かせずに、深い信仰に繋がる事も出来ません。そろそろ「もう、祈願料は自分で出しなさい」と言わなければいけません。
 
例えば会社の社長さんでしたら、会社の幹部の方々を信仰に導いて下さい。あるいは自分のご主人を説得して、ご夫婦で一緒にお参りして下さい。
 
自分一人だけ信仰する…それでも佛様の偉大なお力のお陰で、何となくそれでいいかと思ってしまう。それではまだ不十分です。せっかくのご縁がもったいない。いつも言うように、「無限の佛様のお力に、千分の一でも万分の一でもいいから、お参りに来たり、気持ちを向けなければご利益は頂けませんよ」と。
 
かつて真如大僧正様は、「〝一食布施〟をしない人は信者ではない!!」と厳しく言われた事がありました。その意味では「『大日乃光』を真剣に読んでない人は信者ではない!!」と言うしかありません。毎回毎回、私は真剣に原稿を書いているのですから。
 
皆さんはご利益を有り難いと思われるからお参りされます。でしたら他の人も幸せになれるように是非とも導いて下さい。他の人に蓮華院の信仰を勧めないのは、ご馳走を一人じめして食べるのと同じことです。
 
これから皆さん方のそれぞれが信仰の力を発揮されて、この素晴らしい信仰が末永く続くよう期待してやみません。合掌




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