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大日乃光






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2019年03月19日大日乃光第2235号
民族古来の徳性を復活して日本の未来を再生しよう

三十九周年を期に国際協力の歴史的な転機
 
今年は暖冬ということもあり、春の訪れが早く感じられます。思えば私が結婚したての頃は奥之院に居たのですが、なんと三月三日に十センチほども雪が積もり、南国育ちの妻が生まれたばかりの長女を背負って雪だるまを作っていたことを懐かしく憶えています。
 
さて、前回は認定NPO法人れんげ国際ボランティア会(アルティック=ARTIC)の創立に関連するこれまでの当寺の国際協力の歴史についてお話し致しました。
 
今日は、去る三月四日にインドから帰国した久家君と伊藤さんの報告と共に、ある意味で歴史的な転機となる、今後のアルティックの事業についてお話し致します。
 
風向きが変わる?日本におけるチベット難民支援
 
昨年十一月二十二日の、ダライ・ラマ法王猊下をお迎えしての福岡での集いの後、実行委員会のメンバーからこんな話がありました。
 
彼は「自由インド太平洋連盟」という国際的な組織の副会長を務めています。その会はチベット、ウイグル、南モンゴルなど人権弾圧されているアジアの諸民族の問題を、国際的なネットワークの中で解決に向けて行動を起こしている団体です。
 
その彼から「二年前に設立されたチベット支援の国会議員による「日本チベット国会議員連盟」の事務局長から『外務省の予算からチベット難民への支援をしたいが、長年チベット支援をしている民間団体を知らないか?』と聞かれたので、川原さんのアルティックが先ず思い浮かびました」との事でした。
 
その後、チベット議連の事務局長さんと連絡を取る中で、議連の代表と是非会って欲しいとの事で、去る一月十七日に自民党本部で面会を致しました。その前の打合せの中で、チベット議連と外務省を繋ぐ担当課長さんの名前も伺いました。するとその課長さんは、私が五年前にミャンマーのご遺骨帰国運動をしていた中で巡り合った外務省の素晴らしい課長さんでした。何か、目に見えない大いなるお力に後押しして頂いていることを実感しました。
 
議連の会長さんと事務局長さんとの会談後、事務局長さんの秘書と、その課長さんも交えて私達はしばし歓談致しました。その結果、外務省が民間団体で国際協力を行なっているNGO、NPOを政府開発援助予算(ODA)から支援する「日本NGO連携無償資金協力」に申請して、チベット難民支援を行うことになりました。
 
それでも釈然としないインドを介する間接的支援
 
思えば二十年ほど前、久家事務局長がチベット難民支援の事を外務省のNGO担当者に相談した頃にはけんもほろろの対応で、全く話にならなかったのです。
 
それが今回は八十名以上の国会議員さん達で作られた「日本チベット国会議員連盟」と、先の外務省の課長さんのお陰で、大変親身になって相談に乗って頂いています。
 
それでもチベット難民や、その居留地への直接の支援はやはり出来ないとの事でした。その支援のやり方は、チベット難民が多く住んでいるインドの地域で、インドの人々も含めた支援とする事が条件なのです。なんとも釈然としない支援のやり方です。
 
二十年ほど前、なぜ外務省、つまり日本政府がチベット難民支援に全く理解がなかったのか?そして現在でもチベット難民に絞った支援がなぜ出来ないのか?という事を私なりに推察してみます。
 
独立自尊の気概に欠けていた戦後日本の東アジア外交
 
チベットやウイグルは六十年前に中国から武力で侵略され、国家としての主体性を完全に奪われました。その過程でチベットでは百二十万もの人々が拷問などで殺され、七千ほどの寺院や僧院が破壊されました。いわば中国の植民地と言っても過言ではない現状なのです。

植民地と言えば朝鮮や台湾が連想されますが、日本の朝鮮統治はあくまで国際社会が認め、朝鮮の人々も合意した上の併合でした。
 
それに対して現在のチベット人が多く住んでいる地域では、今では漢民族の方が元々のチベット人よりも多く住んでいて、チベット語だけでは大学に入学することも出来ず、従って良い職にも就けません。さらに近年では、チベット語そのものを絶滅するための政策がとられています。
 
また最近の報道によれば、ウイグルでは百万人以上のウイグル人への洗脳教育が収容所で施され、拷問も行われていることを世界の人権団体が報告しています。中国に批判的な報道をあまりしない日本のマスコミでさえも、少しずつ報道されるようになりました。
 
チベットではチベット語やチベット文化への締め付けがますます酷くなっていく中で、五年程前から若い僧侶を中心とした百五十名以上の人々が止むに止まれぬ「焼身抗議」で亡くなっています。
 
こんな現状にあっても、日本政府はこれまで中国への意見も抗議もほとんど行って来ませんでした。それどころか中国から「内政干渉」と言われて、まともな反論さえ出来ていません。
 
信教の自由や基本的人権の尊重など、人類共通の価値観さえ認めない中国に対して、日本政府は外交的な対応をほとんど行ってこなかったのです。それどころか昨年まで、中国にODA(政府開発援助)を出し続けていたのです。
 
日本人の真価が問われる国家予算によるチベット支援
 
こんな事が長年続く中で、私達の様な民間団体がチベット難民支援を行うことについては外務省は何も干渉しませんでしたが、ODA予算をチベット難民の為に使うとなると、中国への外交的配慮か?それとも忖度なのか?たちまち自己規制しているのが現実なのです。
 
これまでは信者の皆さんを初めとするアルティックへの募金で、二十年ほど前から文化・教育支援の活動を、あくまで民間団体として継続的に行って来ました。
 
それに対して今回は国家予算を使って、インドの一地域への支援を通してチベット難民への支援を間接的に行うという形をとる事になります。具体的には保健衛生、環境衛生に関する支援を実施する事を前提とした調査を行ったのでした。
 
詳しい内容までは今回は時間の都合で省きますが、こんな回りくどい形でしか日本政府はチベット難民への支援が出来ないという何とも情けない日本の現実です。
 
これはまさに、日本全体の問題です。国民の皆さんがこの現実を知ったら一体どう思われるでしょうか?皆さんはどう思われましたか?大袈裟かもしれませんが、これは私達日本人の意思や信念、生き方が問われていると言えば言い過ぎでしょうか?
 
世界中から称賛を集めた日本人の志を発揮したい
 
二十年前からアルティックを通じてチベット難民への支援を続け、十四年前にはダライ・ラマ法王猊下にご来訪頂いた事などを踏まえて、例えこんなに不十分な形であったとしても、日本政府からのチベット亡命政府への初めての人道支援の先鞭を果たす事が出来れば、それなりに大きな意味のある事だと思っております。
 
八年前の東日本大震災に当たって、多くの被災者の人々同士の助け合いや、日本全国からの支援と復興に世界は驚嘆しました。そして世界の国々や地域からも多くの支援や協力などが寄せられました。

その中で、
「互いに助け合う事のお互いさまの心」
「人の痛みを自分の事として感じる感性」
「危機を乗り越える強い意志」
など、近年私達が忘れかけていた大切な事柄を思い起こした人は相当数に上ったはずです。
 
今、アルティックはODA予算を難民支援として使うに当たっての志を問われているのです。長年中国に気を遣い、言うべきことも発言せず、すぐ傍で様々な苦難のただ中にあるチベットやウイグルの人々の現実を見て見ないふりをし続けて来ました。このままでは日本人の正義感や誇り、高い志(矜持)さえも失いかねないのです。
 
他者への深い慈愛の眼差しを自分の身の周りから広めよう
 

この様な現実が、ひいては児童虐待や詐欺事件など、近年の様々な問題の根底に横たわっている様に感じているのは私一人ではないはずです。
 
私達は皇円大菩薩様を信仰するに当たって、ただお恵みを頂くだけではなく、大菩薩様の御誓願である深い慈悲と智慧を万分の一でも自分自身の生きる指針としなければ申し訳ないと感じております。
 
どうか皆様も御本尊皇円大菩薩様の慈悲と智慧の光を少しでも反射して、ほんの少しでも周りを明るく照らす心構えと生き方を、日々の生活の中で小さな事からでも実行して行いたいものです。
 
その事が更なるお恵みを頂く大切な生き方でもある事を実感しながら、身の回りの様々な困難に向き合って行きましょう。合掌




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