2019年07月17日大日乃光第2246号
自然災害で苦難にある人々のために少しでも深い祈りを捧げよう
私達の心の傲りが異常気象を招く?
幸いな事に、この地域ではこれまであまり激しい雨は降っておりませんが、昨年甚大な被害をもたらした西日本豪雨や、一昨年の九州北部豪雨並みにこれから沢山降る予報で、全く油断出来ない気象状況にあると思います。ですから今日は皆さんにも早く帰って頂いて、自主避難など万全な対応に備えて頂きたいと思います。
このような異常気象は地球全体で見られ、日本のほぼ裏側のメキシコでは雹が二メートルも降り積り、またフランス南部では逆に四十五度を超える酷暑が続いています。ここまでの異変は、歴史上考えられなかった程だと思います。この様に厳しい自然状況を前に、度々思い返す事があります。
もう十年二十年程前でしょうか、かつてエコロジー運動が盛んだった頃、「地球に優しく」という標語がよく使われていました。この言葉は経済活動や工業製品の価値を表す目安として未だに目にします。しかし「地球に優しく」と聞く度に、私は非常に大きな違和感を感じてきました。
一昨日「子供の詩のコンクール」の応募を締切ましたが、では募集の際に子供達に「親に優しく」などと言うでしょうか?という話です。人類と地球はどちらが古く、どちらがどちらを養っていると言えるでしょうか?考えるまでもなく明らかな事です。
「地球に優しく」などと表現しているのは明らかに人間の傲りだと思います。その傲りの結果が、今色んな形で現れていると考えるのは私だけではないはずです。地球環境がおかしくなり、私達人類は地球から怒りを向けられ、警告を受けている状態にあるのではないかと考える人は多いと思います。
そういった中で、私達人間同士がもっと助け合う世の中を作らなければならないのではないかと強く強く思った所でした。最近の目を覆いたくなる様な幼児への虐待や、子供同士のいじめの問題などは人間性の崩壊のように感じられます。
苦難の人々に寄り添う祈りを
昨日、準教師の伊藤祐真さんとアルティック(認定NPO法人れんげ国際ボランティア会)事務局長の久家誠司君が、インドで成果を上げて無事に帰って来てくれました。
ついこの間のG20大阪サミットでもそれなりに大きな成果があった様に思いますが、人間同士が民族を越え、国境を越えてもっと助け合う、そういう状況を作って行くための一つの方向性を求めての事であります。
一方で国内のこの様な災害の時に、地域住民が互いに助け合う事、そしてその前に何と言っても家族同士が励まし合い、助け合い、支え合う事が何と言っても大切です。今まさに日本は災害列島と言っても過言ではありません。この大雨の中で、今必死で避難している方がおられるかもしれません。
ですから心の中で「どうか皆さんが平安であります様に」と祈って下さい。自分の家族から、地域から祈りを込めて下さい。そして「どうか人々が少しでも苦難に遭いません様に」「どうか傷ましい死者が出ません様に」と、少しでも多くの方々に、そういう願いを込めて祈りを捧げて頂きたいと思います。
「大宇宙大和楽」の詩碑
今日は珍しく、添え護摩の中に自分で願文を書かれた方がおられました。この方は故坂村真民先生の大ファンで、今でも先生の顕彰を続けておられます。その方の願文には「大宇宙大和楽」と書いてありました。この言葉を皆さんご存知でしょうか?五重塔の池の石碑に刻まれている言葉です。
地球を含めた宇宙そのものに大きな調和があります様に、星同士が照らし合い影響し合い、良い調和があります様にという意味です。これは佛教的な世界観、密教的な世界観そのものであります。ですからこの言葉を石碑に刻み、五重塔の傍に建立したのです。
四十年程前、今日と同じ様に大雨が降りました。その時、小岱山の一角にあったこの石が、今は殆ど通らなくなった林道にズルズルと滑り落ちてきて道を塞ぎました。数日後、そこを通りかかられた開山上人様がブルドーザを使って道の脇に移されました。重さは二十トン程あったと思います。
その後奥之院に大梵鐘を運び上げる前に、開山上人様が「試しにその石を運んでみよう」と仰られたので、その石をトレーラーに積み、奥之院に上り開山堂の傍に置いたのでした。
なぜ開山堂の傍に安置されたのかは今となっては分かりませんが、その後真民先生の言葉を刻むのに相応しいと思い、この石に「大宇宙大和楽」と刻んだのです。
「廻向文」に示された聖なる祈り
私達の心の中にある自分自身の願いを熱心に、真剣に祈る時、それと同時進行で、心の中のどこかで自分達を支えてもらっているこの地球に、更に広く大宇宙に「有難うございます」と、感謝の気持ちを持ち続ける事はとても大事だと思います。
その心構えをまさに象徴しているのが、法要の最後に私が一人で唱える「廻向文」です。
「願わくはこの功徳を以て普く一切に及ぼし、我等と衆生と皆ともに佛道を成ぜん」
皆さんが一所懸命お参りされた時のその隠れた功徳が、この地球上から宇宙に到るまで、自分以外の全ての生き物、動植物も含めて遍く一切衆生に及びますように、どうか私達を含め一切衆生がこの「大宇宙大和楽」、即ち安楽の世界、調和の世界に到りますようにという願いが、この「廻向文」に込められています。
皆さんがご自宅でお参りされる時にも、必ずこの廻向文を唱えておられるはずです。
佛教徒ではない人にとっては「佛道を成ぜん」と言われても…、と思われるかも知れませんが、この場合の「佛道」というのは、お互いに励まし合い助け合うという意味に受け取って下さい。困った人がいたら、少しでも自分に出来る事はないかと考え、何かしてあげようという思いを持つ事です。
そして自分自身が今日よりも明日、明日よりも明後日と、一歩でも二歩でも佛様や神様の御心に近づき、自分の心を綺麗にして行こうという意味が、この「佛道」という言葉に表されていると思います。
このような災害の時には、一人でも多くの方が「どうか災害が出ません様に」と真剣にお参りして頂きたいと思います。
その祈りは必ずや天地自然に感応して、少しでも良い方向に動き出す力になって行くと信じています。合掌
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