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2020年01月10日大日乃光第2261-2号
四十周年を迎える国際協力の浄行

「四十周年を迎える国際協力の浄行」

れんげ国際ボランティア会(ARTIC) 
専務理事 川原光祐

 
全国の信者の皆様、明けましておめでとうございます。
認定NPO法人れんげ国際ボランティア会(アルティック=ARTIC)の活動は奥之院が落慶した二年後に始まりました。ですから今年で四十周年を迎えます。
 
現在は主にミャンマーでの学校建設と、インドにあるチベット亡命政府への支援活動を継続して行っております。
 
ミャンマーでの学校建設支援事業
 
ミャンマーでは六年前にスタッフの平野が所長として現地に入り、現地人スタッフ十人と共に学校建設を始めました。ヤンゴンから南西に行ったイラワジ管区という地域(ちょうど九州ほどの大きさ)で活動を行ない、現在までに八十の学校を造りました。あと二年で百校まで建てる予定です。
 
ミャンマー国の調査によれば、イラワジ管区で建て直しの必要な学校は千校に上ります。私達はそのうちの十分の一の百校を当面の目標としています。途上国では学校に対する国からの支援は殆どありません。国自体にお金が少ないからです。
 
さて、ミャンマーではおよそ五十年間も軍事政権が続いてきました。皆さんご存知のアウンサンスーチーさんが長年民主化運動を行って、途中で軟禁状態が長く続きました。国際世論の後押しもあって、二十年ぶりに行われた二〇一〇年の国会議員の選挙においてかなり民主化が進むこととなりました。
 
ところで長年続いた軍事政権は、「教育を充実させて頭の良い人、賢い人を育てると民主化運動などを行い、政府にとって都合の悪い事をしてくれる。だから賢い人を育てない方がいい」という事で、一般大学では殆ど授業も無く卒業証書を出していました。学校の授業をきちんとやっていたのは医療系大学と軍事大学だけと言えるでしょう。現在でも通信教育に頼る面が強く、そのため授業を受けずに教師になる先生が大多数です。ですから当然きちんとした教育を行って、人材を育てることなど出来ていません。
 
地域の自立発展を見据えた支援
 
皆さんにはこれまで何度もご説明してまいりましたが、一口に学校建設と言ってもアルティックの場合、本当に稀な形で活動を行っています。学校を建てる際、地域の村人に建設費の四分の一のお金を自分達で集めてもらうのです。
 
一つの学校を建てるための建設費が全部で一千万円ほどかかりますので、村人達は四分の一の二百五十万円を集めなければなりません(日本で言えば十倍の二千五百万円くらいに相当します)。イラワジ管区はミャンマーの中でも貧困地域ですので、中には諦める地域もありますが、「未来のためには子ども達に学校が必要だ」という強い思いのある地域では力を合わせて集めています。
 
活動を始めた当初は、「お金を四分の一出してください。二百五十万円出さないと一千万の学校は建ちませんよ」と言っても、「これは怪しい。日本からきた新手の詐欺ではないだろうか」と疑われることもありました。
 
しかし当会の平野所長が「何のために子供達に教育が必要なのか?以前の軍事政権に戻らないように、皆が正しい知識を得て、正しく考えられる人間を育てないとミャンマーは発展しない」と根気強く説得をして、村人を納得させていきました。今ではイラワジ管区の教育関係者で、れんげ国際ボランティア会、平野喜幸を知らない人はいないと言っても過言ではありません。
 
また、途上国での学校建設支援でよくあることですが、学校を建てただけでほったらかしにして、ボロボロになって壊れても誰も修理をする人がいないという問題があります。また誰かが全額出して造ってくれたら、ただ口を開けて助けてくれと待っているだけの人間になってしまいます。自分達で努力しようとはしません。
 
そこでアルティックでは村人たちが努力して集めた四分の一のお金を一旦は学校を建築する際に使いますが、学校が立派に建ち上がった後で村に「返還」します。村では返還されたそのお金を原資として「村創り委員会」を発足し、収入確保の事業を始めるのです。
 
何をするかは村ごとに特徴があります。米を作っている地域では学校農園を始めるために土地を買い、村人の労働奉仕で米や野菜を作ってそれを運営します。また地域によっては小規模発電を始めたり、橋を作った所もあります(電気代や通行料を徴収します)。そうやって学校運営のための、中には先生の給料のためのお金を自分達で作るのです。
 
この村創り委員会をさらにもう一歩進めている村もあります。診療所を造ったり図書館を造ったり、それから学生達の寮を造る所も多くなってきました。
学校建設後の村を良くする活動を「農村開発」と私達は言っておりますが、この活動はこれまで建設した八十校の内、およそ三分の一が成功しています。三分の一はなんとかそこそこ。残りの三分の一はなかなか難しい所です。学校が建ったからもういいや、という地域もあります。
 
人づくりを目指す人材育成研修
 
さて、先程百校建てるとお伝えしましたが、教育ということを考えた時、入れ物だけ作っても良くならないのは自明の理です。前述のように教師の「質」を上げていかなければミャンマーの未来はありません。
 
そこで一昨年から始めたのが「教師研修プログラム」です。一年に六回(隔月)、一度に三十人の教師を集めて一週間、スキルアップのための合宿のような「人材育成研修」を行います。対象は三十歳以下で、教師になって五年未満の若い先生達です。このためにアルティックでは宿泊棟を備えた研修施設を造りました。研修はこれまで七回を数え(十一月現在)、二百名以上の先生達がこのプログラムを修了しました。
 
するとその中の九名の先生達がモウービン郡という場所で約三十名ほどの先生達を集め、今度は彼らが講師となり、受けたプログラムの研修を行いました。このような動きはさらに広がっており、研修生として巣立った先生達が各所で同じようなことを計画しています。人材育成事業は、いわゆる点から線、線から面へと燎原の火のようにますます広がっていくと思います。
 
民間主導のチベット難民支援
 
一方、インドのチベット難民支援の方でも準教師の伊藤祐真さんに一所懸命頑張って頂いております。
 
チベットに対する支援は、もう三十年近くになります。十五年前にはダライ・ラマ法王猊下を蓮華院にお招きしました。その後もコツコツと支援を続けてきましたが、今では法王猊下もチベット亡命政府のセンゲ首相もアルティックや蓮華院を大変頼りにされています。
 
と申しますのも、チベット難民支援については、日本の国レベルでは中国に遠慮して表立った支援が出来ないのです。中には志のある国会議員やお役人もおられますが、やりたくても状況的に出来ないのです。しかし民間の活動に対しては中国も口出しはしないので、私達が頑張るしかありません。言い換えれば、日本では、苦難のチベット難民への支援は民間頼りということになります。それだけにとてもやりがいのある支援とも言えます。規模は小さいですが、必要な所に出来るだけの支援を継続してまいりたいと思います。
 
さて、蓮華院やアルティックが四十年も活動を続けてこられたのは、何と言っても信者の皆さん方のご理解とご協力が一番の基礎となっています。信者さん方が慈悲の心を持って、世界で困難な目にあっている方々の為に、「一食布施」や「同胞援助」をお寺にご奉納して頂きました。その継続が基礎となり、活動がいろいろな所に繋がり、そして広がって行きました。
 
昨年の台風十九号の際も直ぐに寄付が集まり、被害の大きかったいわきや長野で辛い目にあわれている被災者への支援を迅速に行うことができました。現地支援の様子は昨年の十二月十一日号と二十一日号の報告をご覧下さい。
 
いつも後ろから確実に、そして力強く後押しして頂いている皆さん方のお陰で、アルティックの活動ができております。今後ともご協力とご支援のほど、宜しくお願い申し上げます。 合掌



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