2020年05月08日大日乃光第2273号
逆境への適応力、苦難は幸福への門
四月三十日現在、世界中のコロナウイルス感染者は、約三百十七万人となり、死者数も二十二万人超となりました。また、日本の感染者数も約一万四千人となり、依然として毎日増え続けています。
事実をあるがままに観ると、来年安全なワクチンが使用に供されるまで、このコロナウイルスへの効果的な対処方法はないという非常に困った状態なのが現状です。
世界中の国のリーダーたちが、口々に「これは、コロナウイルスとの戦争だ」と叫んでいます。まさに戦時下、非常緊急事態なのです。私達も意識を切り換えて、毎日を過ごしましょう。
二〇〇三年中国発のSARS(重症急性呼吸器症候群)の時も、国際的に最終的な終息に三年を要しました。これもコロナウイルスでした。ですから、今度はその一種なので新型コロナウイルスと呼んでいる訳です。このウイルス・グループの中で、人に対する病原性を有する七番目のコロナウイルスとして出現したものです。
地球温暖化や、人間が奥地を開拓し、コウモリなど野生動物の有する未知の病原菌と遭遇したために、人への感染能力を獲得したもののようです。現在の所、まだ、薬と治療法が確立していないために、あっというまにグローバル化した世界中へ広がり、パンデミックとなってしまいました。
信者さんの中にも、身近な人やお知り合いの方を亡くされた方々もいらっしゃるかも知れません。本当に悲しいことです。また、ここ熊本でも、知り合いの方が感染したりして、身の危険を感じるようになってきました。そういう現状において、今回のコロナウイルス感染症を、どう受け止め、どのように対処したらいいのかを少し考えてみたいと思います。
人生には三つの坂があると言われます。「上り坂、下り坂、そして、まさか」です。酷い絶望の中で、どのように適応し、どういう人たちが生き延びる事ができたのか?生き延びる人々の共通項とは何だったのか?それをしばし、考えてみたいと思います。
瀬島龍三氏と『観音経』
陸軍大学を首席で卒業後、先の大戦で陸軍参謀本部作戦課に勤務、終戦時に満州で関東軍参謀としてソ連との停戦交渉に当り、その後抑留された瀬島龍三氏(後に総合商社、伊藤忠商事会長)は、シベリアの独房の中で母の唱えていた『延命十句観音経』を思い出して唱え、生き延びる力を得たと述べられています。
観世音。南無仏。与仏有因。与仏有縁。仏法僧縁。常楽我浄。朝念観世音。暮念観世音。念念従心起。念念不離心
『十句観音経』に関する古文献は宋代のもので、中国南北朝時代の王玄謨(おうげんぼ)の事績を伝えています。敗走した王玄謨が『十句観音経』を唱えることにより、辛くも死罪を免れたという話です。日本では、江戸時代に白隠禅師が人々に唱えることを推奨し、『延命十句観音経霊験記』をあらわしたため普及しました。
また、『般若心経』を唱えて、精神の安定と生きる希望を持ち続けた人もいます。総じて、信仰を持っている人は、持たない人よりも生き延びる可能性が高いと言えるでしょう。
「小栗判官」物語
平安時代や室町時代の人々の「三大死因」は、「結核」、「脚気」、「皮膚病」だったと言われていますが、強引な結婚の結果、毒殺され、かろうじて生き返った小栗判官はひどい皮膚病(ハンセン病)にかかり、歩けなくなってしまいました。
小さな台車に乗って、多くの人々に引っ張ってもらい、ついに熊野権現にお参りでき、近くの温泉に入り、病気も治り、妻とも再会できたというお話です。ここには、神仏への信仰心と多くの人々の助けとが強調されています。
目的と希望
精神科医ヴィクトール・フランクルはアウシュビッツ強制収容所での過酷な実体験を書いた名著『夜と霧』の中で次のような事を述べています。
人生はどんな状況でも意味がある。生きる目的を持つことが、生き残る唯一の方法である。酷い状況下でも生きる目的を作り出せた人が生き延びた。生きる意味や目的は自ら発見するものであり、苦しみは真実への案内役である。
人は肉体的な苦痛よりも、精神的な苦痛の方がつらいものだ。しかしまた、とてもきれいな夕陽などの自然が人を癒し、感動させてくれる。人間はどんな状況でも、自然や美に感動するものである。
我々は毎日、人生から生きる答えを求められているが、意味を考えることより、日々の行動が大事である。また、小さな事だが、ズボンの折り目を付けるというようなことで、ほんの少しでもきちんとすることを心掛けることも精神を正常に維持するのに役立つ。
収容所のようなあらゆる権利や自由を剥奪されても、自分がどんな精神的存在になるか人は決断できる。おのれの尊厳を守る人間になるか、そうでなくなるか、決断できる。
姜尚中東京大学名誉教授は「与えられた運命と向き合い、引き受け、それをバネにすることで成長できる。」と言われています。目的から希望が生まれ、耐え、生き延びられるのです。
陽転思考、禍を転じて福となす
今回の新型コロナウイルス・パンデミックも、色々な受け止め方があると思います。ロシアの作家ツルゲーネフは次のように言っています。「人間には、不幸か、貧乏か、病気が必要だ。でないと、人間はすぐに思いあがる。」また、コロナウイルスは人間に様々な気付きを与える為に発生したんだと言う方もいます。
今回、対策が上手く行っている所は、二〇〇三年中国発のSARS(重症急性呼吸器症候群。これもコロナウイルスです。)の時、苦しんだ国々です。この時は終息までに三年を要しました。
物事は全て「受け止め方次第」です。「苦難は幸福への入り口」「禍を転じて福となす」の精神でいきましょう。金メダリストの高橋尚子さんが述べたように「何も咲かない寒い日は、下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く」です。
マイナスの多いパンデミックでも、中にはプラス面を見つけることも可能ではないでしょうか?この後、日本でも、オンライン化が更に一段と進む事が予想されます。自分の生活も想像力を働かせて色々とシミュレーションし、現在の仕事や生活も更に工夫してみましょう。また、一つが駄目になっても大丈夫なように次の苗も考えて準備しておくことも必要になるかもしれません。
また、熊本地震の時、実感しましたが、一番大事なものは「水」でした。人間生活に余計な物をあまりにも多く持ちすぎている事実に気づき、その後、断捨離を始め、物を処分し、身軽になろうと心がけるようになりました。
今回も皆様なりに色々の気付きがあると思いますし、現在、外出自粛が強く要請されています。それを活かすためにも、現在の生活や仕事等を見直し、今後に役立てる期間にすればいいのではないでしょうか。
それから、特に若い人は、将来自分はどの職業につくのか、その為には、どういう学校に行き、どういう資格を取る必要があるのかなども考えたり、調べたりしてみて下さい。人生が楽しくなるでしょう。
大人の方でも、「一日一善」で、誰かを喜ばそうというような小さな目標を立てて実行してみて下さい。歓びが増え、少しでも毎日が楽しくなってくると思います。
人生にはまさかの坂が起こります。どうしてこういうことが起きるのかと思う位、毎日様々な出来事が起こり、困難や苦労に直面します。ときには、神仏を恨むこともある位ひどいことが起こるかも知れません。
それでも、どうか皇円大菩薩様を最後まで信じ続け、更に信仰を深くしましょう。朝の来ない夜はありません。必ず、仏様やご先祖様のお陰があるという事を信じて、毎日を感謝の祈りでお過ごしください。そして、今日自分の出来る事を行う。そうすれば、必ず希望の光が射してくると信じています。合掌
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