2020年10月20日大日乃光第2288号
努力と涙と信念に支えられた第三十一回子供の詩コンクール
「お帰りなさい」でお迎えする里帰りの奥之院大祭
ここ数日で朝夕すっかり涼しくなり、先程お参りの前に、中庭の百日紅がそろそろ終わりますねと、僧侶の間で話しておりました。
さて、ちょうどあと一月で奥之院大祭です。今年はコロナ禍により例年とは違う形で執り行いますが、お参りだけは真剣に取り組むつもりで粛々と準備を進めております。
すでにお伝えして来ましたように、今回は残念ながら、横綱を始め大相撲の関取衆はお参りされません。飛龍旗小学生相撲大会も開催されませんので、一般の参詣者は殆ど見込めない、本当にお参りだけの大祭になると思っております。
信者の皆さんはぜひGoToトラベルなどを利用されて、遠方からもどうぞお参り下さい。
奥之院には広大な空間がありますので、柴燈大護摩道場には間隔を空けて席を設けますので、信者の皆さん方は、一般の人がいない分、逆に大きな声で一心に御宝号や『般若心経』を唱えて下さい。
皇円大菩薩様のお力に一同の祈りを結集し、七月豪雨水害の犠牲者追悼と被災地の早期復興を祈り、コロナ禍の早期収束、犠牲者追悼、感染者の病気平癒を一心に祈りましょう。
そして信者を始め、参詣者の一願成就、萬願達成を祈念致します。
また、信者さん方は皇円大菩薩様のふるさとにお参りされるわけですから、ご自身も里帰りをしているつもりで、奥之院ではぜひ「ただいま!!」と言ってお参り下さい。すると、普通に挨拶をするよりもなお一層、帰って来たという喜びや実感が心の底から湧いて来ます。
故郷への里帰りは、やはり嬉しいものです。ぜひそのお気持ちで、今年の大祭に臨んで下さい。僧侶、職員一同、「お帰りなさい!!」とお迎えしますので、よろしくお願い致します。
詩のコンクール開催で示された先生方のゆるぎなき信念
さて、九月二十六日、二時から熊本駅前の森都心プラザで「子供の詩コンクール」の表彰式を執り行いました。
特別三賞の三人と、各学年一名ずつの優秀賞九人に、その保護者の方が参加されました。残念ながら九十名の優良賞の方々は招待出来ませんでした。
今年は新型コロナウイルスが猛威を振るう中、四月から熊本朝日放送のテレビコマーシャルで詩の募集を呼びかけておりました。
緊急事態宣言で全国一斉の学校閉鎖が続く中、ゴールデンウイーク明けに、審査員の先生方と最初の打合せを行いました。
例年でしたら、いかにして多くの子供達に参加を呼び掛けるかを話し合う所でした。しかし今回は、今年は詩の募集をやるべきか、やらざるべきか、または出来るのか、出来ないのかという点を最初に話し合いました。
先生方は学校閉鎖で授業の出来ない中、夏休みを減らしたりカリキュラムを組み直して、いつまで続くか分からないこの状況に頭を悩ませながら、子供達の学習が少しでも遅れない様にと一所懸命務めておられました。また子供達自身にとっても、時間に追われて余裕のない中では、じっくり腰を据えての詩作りが難しいという問題がありました。
しかし先生方は、「この企画は良い企画だからぜひやりましょう!!」「こんな時だからこそ、やり遂げなければならないと思います!!」と力強く仰って下さいました。
特別三賞は、「素直」が一番
表彰式の主催者挨拶では、先生方の言われる「良い企画」というのは一体何が良いのか?という所をお話ししました。
例えば図画工作の宿題であれば、アイデアと技術と時間さえあれば完成するでしょう。
ところがこの詩を書くというのは、「形」を作り上げるのとは少し訳が違います。
お父さん、お母さんや、両親に代わって面倒を見てくれるお祖父ちゃん、お祖母ちゃんであったり、色んな方が居られます。その方の行動やお話、言われる事を見聞きして、そして自分が何を感じるか?なのです。この自分が何を感じ取るか?を詩に表す訳ですが、これは実は難しい事なのです。
ところが面白い事に、特別三賞を受賞する子はいつも低学年が多いのです。小学一年生から三年生位まで。そして後は中学生です。これは、感じた事を素直に言葉に表して詩に紡いでいるからだと思います。
工作でしたら技術のある高学年や、アイデアの素晴らしい中学生が、殆ど上位を独占してしまうでしょうが、詩のコンクールでは特別三賞の半分近くが低学年なのです。物事を素直な目で見て素直に感じ、素直に言葉にするのが、詩にとっては一番大事な事なのです。
二つの初めてに彩られた今年のコンクール特別三賞
今回の特別三賞、まず「親を大切にする子供を育てる会賞」は、小学校一年生の、藤井彪向君の「ぱぱみたいになるぞ」が受賞しました。お父さんを大好きな気持ちが溢れていて、お父さんを誇りに思い、お父さんの仕事を継ぎたいという思いを素直に表した詩です。非常に子供らしく、素直で良い詩だと思いました。
それから他の二篇ですが、まず坂村真民賞を受賞したのは、小学六年生の河津愛司さんの「世界一の誕生日」で、六年生からは八年ぶりの受賞となりました。審査して頂いた先生にとっては初めての快挙となり、大いに喜ばれました。
その先生曰く、高学年の子は思春期を迎え、少しひねた物の見方や表現をするので、なかなか三賞を取れなかったのだろうという事です。
最後に熊本朝日放送賞は、中学三年生の西村亜希子さんの「笑顔」でした。西村さんは、子供の詩コンクールでは初めての、二度目の特別三賞の受賞でした。
後の二作品については、誌面の都合上、掲載を割愛させて頂きます。しかし二篇とも素晴らしい作品ですので、今度の奥之院大祭や他の機会に、ぜひ奥之院で詩碑を読んでみてください。
癌との闘病生活の中で受賞した五篇目のお母さんの詩
ここで熊本朝日放送賞受賞の西村亜希子さんについて、少し補足致します。実は西村さんがコンクールで選ばれたのは今回で五回目になります。
一回目は小学三年生の時で、「お母さんなかないで」という詩で、各学年から十名選ばれる優良賞でした。二回目は四年生の時で、「ないしょの合図」という作品で、特別三賞の坂村真民賞でした。奥之院大祭で詩碑序幕式にも参加されて、小学四年生ながら受賞者代表挨拶を立派に務められました。
三回目、五年生の時は「おむねにむぎゅうぅ」という作品で優良賞でした。四回目は六年生の時で、「大事な十分間」で再び優秀賞でした。
最初から一貫して癌との闘病生活が、痛々しくもほほ笑ましく描かれ、入退院を繰り返しながらも、頑張って頑張ってまた復帰して、今回の授賞式も病院から来られました。
実は中学に入って、今度は表彰式でお父さんと一緒に壇上に上がりたいと思い、一、二年生ではお父さんをテーマに詩を作られましたが、残念ながら選ばれませんでした。
そして今年は中学三年生で最後になるので、どうしても賞を取りたいと願い、以前はお母さんの詩で賞を取れたから、もう一度お母さんをテーマに詩を出したそうです。それが見事、熊本朝日放送賞の受賞となりました。
表彰式では優秀賞以上は小出史さんに詩を朗読して頂きます。元アナウンサーで熊本では有名な朗読家の方です。四年生と六年生の時には、西村さんは母親と一緒に壇上で朗読を披露されました。
今回は、お母さんの詩でしたが、お父さんと一緒に壇に上がりました。朗読された詩の中で、前作までの「お母さん」が、いつしか「母」へと表現が変わっておりました。
まず私達自身が、親やご先祖様を大切にしよう
今から三十一年前に、子供の詩コンクールの主催団体として「親を大切にする子供を育てる会」を創設しました。この会の名称については誤解を受ける事もあり、貫主大僧正様がいつも丁寧にお話しされています。
当会では、親の身勝手な考えを子供に一方的に押し付ける事は一切考えておりません。仮に、子供に親を大切にしなさいと言っても、子供は言う事を聞きません。
しかし今の子供のお父さん、お母さんも、必ずその親、お祖父ちゃん、お祖母ちゃんの子供であります。親自身が、その親やご先祖様を普段の生活の中で大切にしている姿を見て、子供達も親の事を自然と大切に思い、敬うようになり、そこから良い家庭が築かれて行きます。
子供の目が親自身の姿を映す鏡となり、子供の詩を通して、親は自分自身の姿を客観的に見つめる事ができます。
当会では、子供の創る詩を通して、少しでも良い家庭づくりの一助になればと考えて活動を続けております。
そしてこれは前回の結末と同じ事になりますが、信者の皆さん方が親を大切にして、ご先祖様を大事に一所懸命お参りする姿を子供に見せる事が一番大切です。まず私達自身が親を大切にする子供になれますよう、お祈り致しております。合掌
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