2020年12月18日大日乃光第2293号
仏様から観た私はどう観える? ご先祖様から観た私の姿は?
仏様から観た私はどう観える? ご先祖様から観た私の姿は?
〇物語療法(ナラティブセラピー)と内観
人は誰でも皆、自分の人生というタイトルの物語を持っています。その物語は、自分サイドから観た、自分視点の主観的な物語です。客観的なものではありません。自分の記憶や感情や解釈を基にした、自分中心のゆがんだストーリーです。多様な視点から、客観的に検証されていませんので、間違いを多く含んでいます。
人は、自己防衛のために、自分の都合のいいように、意識しないで自分の歴史を修正してしまう所があります。その為に、問題や悩みや病気を発生してしまい、悩み苦しむ人々もいます。
そういう問題や病気の解決法の一つとして、「物語療法(ナラティブセラピー)」という心理療法があります。悩みや病気を抱えている人の自主性に任せて自由に記憶を語らせることによって、単なる症状の除去から人生観の転換に至るまで、幅広い改善を起こさせることを目的とするものです。
問題を解決することではなく、新しい物語・解釈による新しい意味を発生させることによって、問題を問題でなくしてしまう、ということに主眼が置かれています。
これは、ある意味、「内観」と非常に似ています。内観では、三つの質問によって、内観者が過去の人生を振り返る中で、自分自身で自分の人生を複数の他者の視点から客観的に振り返り、自分の人生の新しい物語・解釈による新しい意味を発見します。
それによって、問題が問題でなくなり、愛されていたという客観的事実を再確認する事によって、癒され、立ち直っていく療法です。非常に東洋的な精神療法です。
三つの質問とは、(一)してもらった事、(二)してあげた事、(三)迷惑・心配かけた事です。現在はコロナ問題がありますので、蓮華院ではEメール内観のみを行っております。
Eメール内観では、三つの質問にもう一つ(四)気付いた事、という質問を加えて、四つの質問で、内観者の都合の良い時間に毎日一回、一ヶ月間行っています。効果は、一週間泊まり込みの集中内観とほぼ同じで、既に百五十例以上の実績があり、外国の方々も含め、効果を上げています。
この両方のセラピーに共通しているのは、外側の複数の視点から、自分自身を振り返るという点です。つまり、主観的ではなく、客観的に様々な観方、考え方をするところが重要なポイントなのです。
そうすることにより、人は今まで気付けなかった、新しい気付きや発見に到り、そこから、癒されたり、立ち直っていくのです。別な言葉で言うと、新しい自分の人生の物語が他者視点から紡ぎ出され、その結果、自分の人生に新しい意味を見い出し、新しい生活をスタートすることになるのです。
これは、またメタ認知とも言えます。メタ認知とは「自分の認知活動を客観的にとらえる、つまり、自らの認知(考える・感じる・記憶する・判断するなど)を認識すること」です。自分自身をもう一段階上から客観的に見ることで、自分自身をコントロールでき、冷静な判断や行動ができるようになるのです。
内観療法は、生きている周りの人々の視線で自分自身を深く見詰め直します。それでは、仏様の視点から、自分自身を観てみるとどういう景色が観えるでしょうか?仏様から観た自分の姿と言うものは、どのようなものなのでしょうか?想像してみて下さい。
また、自分のご先祖様方から観た自分自身はどういう風に観えているでしょうか?考えてみて下さい。閻魔大王から観た自分自身はどうでしょう?
よく、死ぬ間際に自分の一生が走馬灯のように見えると言われますが、死ぬ間際では、もう間に合いません。まだ、生きている今のうちに、自分の一生を周りの人々を鏡として映してみませんか?そうすれば、自分自身をより深く知ることになり、より良い人生につながるのではないでしょうか?
それでは次に、掲載許可を頂きましたので、両親が幼い頃離婚し、トラウマを抱えていた心理療法士の方のEメール内観感想文を紹介致します。祖父への憎しみもありましたが、自宅での一ヶ月間のEメール内観の結果、トラウマは解消し、憎しみも消え、新しい人生を歩みだされました。
〇トラウマの解消(ヨーロッパ人の内観)
長い間集中内観を成し遂げるつもりでいました。二年前、私の妻は一週間宿泊しての集中内観をしました。彼女が熊本の内観研修所から戻ったとき、彼女は光り輝いていました。彼女の存在は輝かしく、彼女が非常に特別な良い体験をしたことは明白でした。自分でも試してみたいと思っていたのですが、残念ながら私の日本での仕事は非常に忙しかったのです。
今年に入ってコロナウイルスの状況は、私にとって良い面をもたらしました。人と接触できない新しい状況への適応として、インターネットを使うEメール内観が創始されていました。自分の家で静かに一日三十分から一時間、一ヶ月内観すればいいので、ついに私も仕事しながら内観する事が出来ました。
私はすごく心理学者の意識を持って内観に入りました。とても真剣に行いました。 内観を新しいエキゾチックな精神性や新しい心理療法としてやったわけではありません。妻の熱心さは、内観の信憑性が非常に高いことを示していました。
私はもちろん三つの質問から始め、母に対する内観から始めました。最初から私を驚かせたのは、テクニックが非常にシンプルであるにも関わらず、私の魂の中で働いた心理的内容や精神的内容の量が非常に多かったということです。Eメール内観もわずか四つの質問があるだけの簡単な構造です。
内観していると、長い間忘れられていた記憶が、私の意識の中に突然湧き出てきました。私の人生の出来事の詳細が明らかになり、子供の頃の全世界がカラーでよみがえりました。
私が子供の頃、母は非常に大切な人でした。実際、彼女は私の全世界でした。私が育った間、私の母に対する私の認識のいくつかは、私の子供の頃の理解力のレベルに留まっていることに気づきました。
小さな子供は両親を神や女神として見ていました。内観で気づいた部分です。どういうわけか、私の過去の中で再実現され再配置された記憶です。
内観の最中、母は私より年下の若い女性のように見えました。私は成熟した男の目で、母を娘のように感じました。また、私は、家族、職業、個人の理想、そして私達を人間たらしめる良い面や醜い面を含めて、全ての複雑な側面と付き合うのに苦労している若い女性に対して、父のような感情を抱きました。
母への愛を強く感じました。さらに、温かい思いやりと理解。もちろん、私が何十年もの間持ち続けていた彼女に関する私のすべての不満は、あたかも煙のように消え去りました。感謝の気持ちでいっぱいでした。
その後、それは私の父を再発見する際も同様のプロセスをたどりました。彼は私にとても良くして下さっていました。再び私は深く感謝しました。
また、私は長い間、東ヨーロッパの田舎育ちの野卑な祖父に非常に大きな怒りを抱いてきました。しかし、この怒りは三歳の男の子の怒りでした。寒い早朝に私の為のミルクを買うために何時間も行列した事など、祖父が私のためにした多くの事を思い出しました。そして私が引き起こし迷惑かけたトラブルも。祖父に感謝せずにはいられません。
私の怒りは間違いだったと気づきました。そして、今まで私が記憶していた過去は、内観によって文字通り別の新しいストーリーに変わったと感じました。
それから、内観の最中、私は人々に迷惑をかけたトラブルに気づきました。これは私が忘れていた事でした。私がしたすべての間違ったことの責任を自覚する事は困難でした。でも全ての責任を取るということは、将来の私にかかっているということです。かつて誤解していたように、自分が被害者のように感じることは、今ではもうできません。
そして、すべての人の気持ちの中に入るかのような長い内観の旅をしました。内観対象者への感情移入を行い、相手の視点から考えました。私は過去の多くのことを後悔することが起こりました。そして、それを認識する事は、過去の誤った考えからも自由になれる事です。私は他人を許し、私自身を許します。
それから私は妻、両親、家族との現在の関係を内観しました。そして私がいくつかの古い悪いパターンを続けている方法をはっきりと見ることができました。しかし、はっきりと見ることは変革の重要なステップです。最初に、私の愛する人々への裁き(ジャッジメント)の判断をやめることが重要だと気付きました。
内観を行った後は生まれ変わったみたいだと言う事は比喩ではありません。実際にそれは非常に解放的で、今、新しい景色が私の目の前に現れています。
私の将来の計画は次のとおりです。私の両親との強いつながりを再び確立します。 彼らはまだ生きており、これは私が恩返しするための贈り物だと思います。私は今、彼らがどういう状態であろうと、あるがままに完全に受け入れることができます。姉妹とすべてのいとこと強い関係を持ち、私たちの家族関係を強化します。
妻と一緒に強くて美しいものを作ります。 私たちは二人ともヨーロッパの故国にヒーリングセンターを作ることを長年夢見ていました。今後は他の人の意見の違いも受け入れながら、一緒にそれを行うように取り組んでいきます。恐れることなく生き、私は皆のために最善を尽くすつもりです。合掌
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