2021年08月31日大日乃光第2315号
一流選手達に負けない気概で三信条に精進しよう
【宗務長 川原光佑先生御講話】
「一流選手達に負けない気概で三信条に精進しよう」
今日は雨の中、よくお参りなさいました。
令和三年の八月盆を迎え、お昼から霊園で世界平和祈念法要と全体供養を初めて和室の中で執り行います。八月中にしては梅雨のような長雨が続きます。玉名地域でも度々警報が鳴り響きました。全国の信者の皆さん方も早めの避難など、充分気を付けて頂きたいと思います。
メダリスト達の感謝の言葉
さて、八月八日に東京オリンピックが終わりました。開催についてはコロナ禍の中で賛否両論、様々な意見があったと思いますが、今となっては肯定的な意見が多いのではないでしょうか。
様々な競技の中では兄弟姉妹で活躍された柔道とレスリングが印象に残りました。新種目のスケードボードでは若い世代の躍進が目覚しく、サーフィンの男子銀メダリスト、五十嵐カノア選手は三礼のように、波打ち際で海の神様に深々と感謝の座礼をされました。
今回のオリンピックを通じて私が一番感じた事は、日本選手も海外の選手も、その多くが感謝の言葉を述べている事です。
オリンピックを開いて下さった関係者や、大会や競技を支えて下さったボランティアの方々への感謝、そして指導者や両親や家族、友達への感謝の言葉がたくさん聞かれました。
そして白血病からわずか二年で競技のプールに戻って来られた池江璃花子選手は、諦めずに努力を続ければ必ず報われると私達に教えてくれました。
努力は必ず報われるという事と、感謝をする事。これは信仰生活に大いに通じる所です。
佛様にお任せしたからもう大丈夫という安心感は大事です。しかし努力も必要なのです。佛様のお力だけでは成就しません。佛様にお願いしたから、後はこれをやれば安心だと、安心感を持って努力を続けることが大切なのです。
そして願い事が成就したら、心から感謝をして恩に報いるように努力をする。恩に報いるとは佛様の御心に適う良い行いをして行くという事で、奉仕の心と同じです。
これからパラリンピックが開催されます。
パラリンピックではハンディのある人が健常者以上に努力されています。おそらく私達以上に感謝の心と報恩の心を持っておられるのだろうなと、そういうお気持ちで応援して頂ければ自分の心も綺麗になります。
これからパラリンピックで綺麗な感動をたくさん味わって頂きたいと思います。
大谷選手の「目標達成シート」
さて、オリンピックの前からアメリカＭＬＢで大活躍されている大谷翔平選手が衆目を集めています。
高校時代に球速百六十キロを達成し、ドラフト一位で北海道日本ハムファイターズに入団後、投手としても外野手としても活躍し、五年間の在籍中に才能を開花させました。
平成三十年からはアメリカのロサンゼルス・エンゼルスに入団。四年目の今年は日本人最多シーズン本塁打を更新中で、オールスターゲームへの初出場やホームランダービーへの参加など話題が尽きません。信者さんの中にも大谷選手が出るからと、ニュースや番組を見る人がたくさんおられるのではないでしょうか。
彼の事で最近知った事があります。大谷選手は高校一年生の時に監督の勧めで「目標達成シート」というのを書いていました。
目標達成シートとは、まず紙に縦横に線を二本引き、九つの四角を作ります。その九つの四角のそれぞれに、また縦横に線を二本引いて九つの四角を作り、合計八十一個の四角い枠を作ります。
まず真ん中の四角の中心の枠に、自分の最終的な目標を書きます。そして中心に書いた目標を実現するために必要な要素を八つ考えて周りの八枠に記入します。その八つの要素を周りの八つの四角の中心に写し、さらにそれぞれの要素を実現するために必要な事を八つずつ周りに記入します。
彼はプロ野球選手を目指していましたから、高校一年生の時に「ドラフト一位指名、八球団」を目標に掲げて一番中心に書き、それを達成するために必要な要素として体づくり、コントロール、球の切れ、スピード百六十キロ、変化球、運、人間性、メンタル（心の強さ）の八つを周りに書きました。
そして、この八つの必要な要素を外側の四角の中心に書き込み、例えば「人間性」を養うために必要な要素として感性、愛される人間、計画性、感謝、継続力、信頼される人間、礼儀、思いやりを書いています。
そして「運」の周りには挨拶、ゴミ拾い、部屋掃除、審判さんへの態度、本を読む、応援される人間になる、プラス思考、道具を大切に使うと書かれました。高校生にして運が必要とはよく考えたものだと、私は大変面白いと思いました。
実際にテレビ中継で、大谷選手は試合中にゴミを拾ってポケットに入れています。審判に何か言われた時も素直に言うことを聞いています。部屋の掃除、周りをきれいにして不快感を与えない。周りの人が喜ぶような事をする。挨拶もそうです。そういうことをやると運が付く。こうして運も味方に付けて、ドラフト一位でプロに入るという目標を達成されたのです。
幸せな生活に必要な八つの要素
皆さん方も大谷選手の「目標達成シート」を手本にして、九×九の八十一枠ほど多くなくても、せめて一つの四角の九枠だけでも、例えば「幸せな生活を送りたい」という目標を中心に書き、何をすれば幸せな生活が送れるか、八つの要素を考えて、それを一つずつ書いてみて下さい。
中心に大きな希望、大きな夢、そしてそれを果たすためには何をしたらいいかという八つの具体的な方法を考えたら、幸せになる道が見えてくると思います。
当山の三信条、「反省に始まり、感謝を経て、奉仕に至る心」を持ちたいとか、人から愛される人間になりたいとか、人のお手伝いを少しでもしたいとか、れんげ国際ボランティア会に少しでも協力したいなどと、色んなことを具体的に八つ書きます。なかなか難しい事ですが、信仰を深めて悟りを開きたいでもいいのです。
どんなに小さな事からでも書いて行けば、大きな目標や、自分の幸せになるという目標に近づきます。
大谷選手は運の要素として「プラス思考」を書かれましたが、幸せになるための心の持ち方もプラス思考で良い方へ良い方へと考えなければいけません。失敗も自分のためにあったんだな、次は失敗しないように頑張ろうとか、この失敗からこれを学んだとか、この悲しみを乗り越えて頑張って行こうとか、いろんなことを良い方に考えられると思います。
曼荼羅に通じる目標達成シート
最後に肝心な事ですが、皆さんあちら（脇内陣西側）の掛け軸を見てください。金剛界曼荼羅（九会曼荼羅）は「目標達成シート」と同じように縦横九つに分かれています。真ん中の四角の中心に大日如来様が居られて、その周りに四佛が居られます。そして周囲の四角の中心にも大日如来様が居られて、やはり色んな佛様が配されています。
実は「目標達成シート」は別名「マンダラチャート」とも言って、昭和五十四年に経営コンサルタントの松村寧雄さんが密教の曼荼羅を元に、一般の方が人生とビジネスを豊かにするための方法として、佛教の教理を除いて編み出された手法なのです。
本物の曼荼羅では中心の大日如来様のお力や御徳の内、観音菩薩様はその円満な愛情の部分を担当されている佛様、薬師如来様は健康や病気平癒を司る佛様…などと考えます。大日如来という佛様の愛情を表す佛様、お力を表す佛様、智慧を表す佛様、慈悲を表す佛様と分担されているのです。そして九つの四角の真ん中の大日如来様を中心に、さらに色んな佛様が描かれています。
貫主大僧正様は、すべての佛様はインターネットで繋がっておられるようなものだとよく喩えて話されます。最近、れんげ国際ボランティア会ではミャンマーとカナダと事務局をインターネットで繋ぎ、リモートで会議を行っています。職員や準教師の伊藤さんなど別な所からも助けてくれる。皆が繋がり、皆が助け合いながら、様々な支援事業を進めています。
心願成就への道筋を考えよう
このように一つのものを成し遂げるためにいろんなものが繋がり合って助け合う。一つだけでは絶対に目標を達成できません。大谷選手の高校時代の目標は、シートの中心に書かれたドラフト一位でプロ球団から指名される事でした。これはその周りの八つの要素がどれ一つ欠けても叶わなかった事でしょう。
体作りをさぼっていては当然プロになれません。メンタル面、心の強さもなければチャンスの時に活躍できないということでプロになれません。人間性、人から愛される人間になるという事でも、人から嫌われる人間はプロにはなれません。全てが備わってなければ目標を達成できません。
曼荼羅の佛様もお一人でも欠けるとダメなのです。全ての佛様が居られて始めて一つの世界が形作られています。金剛界曼荼羅は智慧の世界を表し、胎蔵界曼荼羅は慈悲の世界を表した世界と言われています。
この曼荼羅世界に特命全権大使のような立場と役割を果たしておられるのが当山の御本尊、皇円大菩薩様なのです。
「皇円大菩薩様と御縁を繋ぐという事がいかに有難い事か」と、よく貫主大僧正様は常々しみじみと仰っておられます。
これをオリンピックに譬えると、信者の皆さんは、すでに出場枠に内定した選手のような得難い立場と同じなのです。後は目標とするメダルに向けて、迷わず精進するだけです。
今日は曼荼羅の考え方というものを、今話題の大谷選手の目標達成シートを例に、少しだけご紹介しました。
信者の皆さん方が、心願成就への一つ一つの具体的な要素をよくよく考えて、よく目につく所に貼り付け、少しずつ実行して頂いて、着実に願い事が叶って行かれる事を祈念しており
ます。合掌
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