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大日乃光






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2021年12月20日大日乃光第2325号
御心に適う生き方で苦難の中にも人生を輝かせよう

御心に適う生き方で苦難の中にも人生を輝かせよう

行動が大きく制限された一年半
 
いよいよ令和三年も残すところ、あと数日となりました。
 
今年を振り返ると、コロナ禍による緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置などにより、人々の行動が大きく制限された一年でした。
 
この約一年半で生活様式が大きく変わり、従来の当たり前が当たり前ではなくなりました。
 
マスクの着用、不要不急の外出自粛、ソーシャルディスタンスなど、これまで意識する事の無かった新しい行動規範に気を配らねばならなくなりました。そしてコロナ禍によって、様々な業種の方が打撃を受けました。
 
従来、奥之院では年間数百台の観光バスによる参拝が予定に組まれて来ましたが、その殆どが動きませんでした。ある時、久しぶりに観光バスが来たので運転手さんに話を伺ってみると、「半年ぶりにバスを運転出来ました。ですがこの先の予約が入っていないので、転職を考えています」などと、悲しい返事でした。
 
子ども達にとっても学校が休校になったり、修学旅行やスポーツ大会なども中止や延期となりました。学びや思い出作りの機会が、大きく制限されました。
 
そんな中でも誠に有難い事に、当山では月々の御縁日法要、節分星まつり、南大門春まつりの赤ちゃん土俵入り、皇円大菩薩様御遠忌法要(六月大祭)、奥之院大祭と、規模を縮小しながらもお勤めすることができました。
 
コロナ禍に誘発される心の病
 
私は普段奥之院の本堂にお勤めしていますが、参詣者からの悩み事の相談が増え、心のバランスを崩された方が以前より多くなったように感じています。
 
人は人と出会い、話をしたり食事をしたり、さまざまな行動を一緒に過ごすことによって、自然に心が充たされたり、ストレスなどが解消されているように感じます。
 
世界的には鬱病が増えているそうです。国内では子供の自殺者が年間四百人を超え、不登校者も十九万人以上と過去最多となり、女性の自殺者も十一年ぶりに増加傾向となりました。
自ら命を絶つ。これほど悲しいことはありません。
 
入院して手術を受ける必要があるにも関わらず延期になったり、病院で家族との面会も出来ずに、人生最期の瞬間をお一人で過ごされた方もおられました。
 
もちろんその全てがコロナのせいだとは思いませんし、感染対策を軽視してはいけませんが、過度な恐れや不安からの極端な対策は、社会や人の心を壊してしまいます。
 
周りに病気になった人がいたとしても、以前でしたら早く病気を治して元気になって欲しいと願っていたはずです。
 
しかし今回コロナにかかった人は、なぜか悪く言われる風潮がありました。特に地方ではその傾向が強かったようです。
 
日本人の国民性は、世界から高い称賛を受けていたはずです。しかし困った人を非難するような社会は、健全とは言えません。
 
非難よりも弱者への共感を
 
日本では国の方針で感染対策が定められていますので、それぞれの思いで勝手に行動することは出来ませんが、せめてコロナにかかった人を非難するのではなく、皆が少しでも早く回復されることを願い合えるような社会になれば幸いに思います。
 
有難いことに日本の陽性者数は、全国で百人以下となり、以前の日常が戻りつつあります。
しかし世界には、新しい変異株が発生し、厳しい対応に迫られている国もあります。
 
日本では海外との往来や隔離期間などが緩和の方向に進んでいましたが、これから再び入国制限などの規制が掛かるようです。
 
今後も緊急事態宣言や蔓延防止法などが発出される可能性は十分考えられます。そのような事態になった時に、どのような心構えで暮らして行けばよいのでしょうか。
 
弱者に寄り添われた興正菩薩
 
当山は真言律宗に属しております。「興法利生」と言って、お釈迦様本来の仏教に立ち返り、衆生を救うことを理念として、叡尊上人により興された宗派です。「興法」とは正しい仏教を盛んにする、「利生」とは皆を幸せにするという意味です。
 
真言律宗の総本山西大寺は、奈良時代には東大寺と並ぶ大伽藍を誇っていましたが、叡尊上人が入られた頃には東塔、四王堂、食堂の三つのお堂を遺すのみとなっていました。
 
そこで戒律を守りながら、西大寺の復興に掛かられました。西大寺のみにとどまらず、数百ヶ寺のお寺の復興、再建に力を注ぎ、仏教の教えを多くの人に広められました。また衆生済度の面でも大きな功績を挙げられ、社会福祉の先駆者とも言われています。
 
叡尊上人は文殊菩薩を信仰されました。文殊菩薩は貧窮孤独の民に姿を変えて、信仰者の前に現れるとされています。「貧困」「孤独」「病気」などで苦しんでいる人々を文殊菩薩の化身と思い供養せよと言われました。
 
叡尊上人はハンセン病の患者を始め、多くの恵まれない人々に直接手を差し伸べられました。医学や科学の発展していなかった当時の状況を想像すると、その行動には強い信念と覚悟があったにちがいありません。
 
「中道」の教えが光へと導く
 
現在も、こういう苦しい時代だからこそ、仏教の教えが光り輝くはずです。
 
久修錬行されていたお釈迦様が、農夫の歌を聴いて「中道」という悟りを得られました。
その歌とは、「弦は強すぎると切れる。弱いは弱いでまたならぬ。程ほどの調子で締めて上手にかきならすがよい」というものです。
 
両極端に偏らず、その真ん中を歩みなさいとの教えです。今の言葉で言えば、バランスを意識した生き方といえます。
 
ある老人ホームの職員さんから聞いた話では、外出や人とのコミュニケーションが極端に減ったため、足腰が弱ったり認知症が進んだお年寄りの方が増えているそうです。
 
人混みに注意しながら散歩したり、電話で家族と話をすることは可能なはずです。出来ない事ばかり考えず、今の状況で何が出来るのかと発想を変えれば、生活の幅が広がって行きます。
 
当たり前の有難さに気付く機縁
 
以前の生活が当たり前ではないと気付く事により、一日一日、一瞬一瞬を大切に過ごせるようになります。毎朝目が覚める事だけでも、本当は有難い事なのです。
 
また多くの人々のお陰様で、自分自身が生きていることも感じ取れるようになります。たとえばゴミ収集の業者さんが、コロナで一週間休業されたとします。すると町にゴミが溢れ、違う病気がはやる事でしょう。
 
他にも道路を管理する会社が点検や補修をして下さるから、私たちはコロナ下でも安心して車に乗れますし、物流も滞ることがありません。農家の方も変わらずお米を作って下さるから、ごはんを食べることができます。
 
どのような状況になっても、目に見えない所で働いている人々によって、私達の生活や社会は成り立っているのです。
 
疫病の蔓延にもし何らかの意味があるとしたら、私達が見えない人々に支えられている事に、普段より一層深く思いを致す機縁となる事にあるのかもしれません。
 
皇円大菩薩様との「同行二人」を
 
またこういった機会は信仰を深めるチャンスでもあります。
 
四国霊場をめぐる際、お遍路さんは笠や白衣に「同行二人」という言葉を背負い、お大師様を側に感じながら巡拝していきます。常にお大師様と共にと。
 
当山の信仰に置き換えますと、皇円大菩薩様が常に近くに居られる感覚と思って下さい。
そのように考えると少しも寂しくありませんし、皇円大菩薩様の御心に適うには、どのような生き方をしなければならないのかを考えるようになります。
 
開山上人様は、「願いは叶わねばならぬ。願いが叶うには佛様の御心に適わねばならぬ」と仰いました。
 
皇円大菩薩様の御心に適うように生きる。そうすることによって、皆様のご先祖様の供養にも繋がりますし、佛様に必ず願いが届くことでしょう。
 
今後の予定と致しましては、奥之院では大晦日十二月三十一日、二十二時に開門し、二十三時より除夜の鐘を年を跨いで撞いてまいります。一月三日には、十時半より準御縁日法要・十二時半より功徳行を執り行います。
 
本院では一月十三日、十時よりけむり護摩を執り行います。新しい年の最初のご縁日となります。
 
お寺の中の者として、信者の皆さんが安心してお参りできるよう準備を整えてまいりますので、ぜひご参拝ください。心よりお待ちしております。合掌  



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