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2021年12月29日大日乃光第2326号
家庭から『ちかいの詞』を唱和して父母祖先や地域に報恩感謝しよう

家庭から『ちかいの詞』を唱和して父母祖先や地域に報恩感謝しよう
 
生の意味が研ぎ澄まされた言葉
 
全国の信者の皆さん、そしてご縁により本誌を購読されている皆様、明けましておめでとうございます。今年が皆様にとって、佳き一年になる事を念じます。
 
さて令和四年という事ですが、世間では「四は死に通ず」とも言われ、「四」はどちらかと言えば忌み嫌われがちであります。
 
では今年はどんな一年にすべきでしょうか?
私は敢えて、そんな年だからこそ、
「死と真剣に向き合う一年にしましょう」
と、申し上げたいと思います。
 
室町時代の禅僧、一休宗純が、
門松は冥土の旅の一里塚
 めでたくもありめでたくもなし
と言いながら、髑髏を杖の先に掲げて各家を托鉢された故事は有名です。
 
三十年前に先代が遷化(高僧が亡くなられる事)された直後に、無着成恭先生からこんなお便りを頂いた事があります。そこには、
「人の世に死がある事は良い事です。
なぜなら今ある命の大切さが解るから」
と書いてありました。
 
当初、「親を亡くした私に、何と言う事を仰られるのか?」と一瞬思いました。
しかし何度も反芻している内に、しみじみと深い意味が体の中に広がりました。
 
以来私は、この言葉を父親を亡くされた幾人かの友人に贈りました。加えて、
「男は父親を亡くして初めて一人前になる」
という言葉を何度か贈った事もあります。
 
信者の願いを叶える事を使命と見定めた祈りの日々
 

私達は亡き父母に深く思いを致す時、その生き方や生きた意味、目指された目標などが明確になります。そしてそれが、私達に新たな生きる意味や生き甲斐を与えて下さるのです。
 
新年の年頭に当たり「一年の計」を立てる事は大事ですが、それよりもっと重要なのは、人生の目的や生きる意味を改めて見つけて、定める事であるに違いありません。
 
私はこの三年間というもの、特に三年前の自らの生命の危機に瀕して、自分自身の命とその使命に真剣に向き合いました。そんな中でも、一日として毎朝の信者さんのための祈願を休んだ日はありません。
 
そして自らの信心をより深め、高めるために、毎日二万から五万遍の御宝号念誦を続けて来ました。既にその数は二千百万遍を超えました。
 
また朝の祈願と同様に、全国の信者の皆さんの平穏と念願達成を合わせて祈って来ました。その事が、私自身の病気平癒にいかに大きな支えになったかを実感しています。ここに改めて信者の皆様に篤く御礼申し上げます。
 
更には混迷の度を増す今日の国際情勢の中で、日本国家の安泰とコロナ禍の一日も早い終息も合わせて祈り続けています。
 
詩集の巻頭言に託した先代畢竟の篤き思い
 
その御宝号が二千万遍を迎えた頃、子供の詩コンクールの詩集に掲載する「巻頭言」を書きました。以下にその全文を掲載します。
 
平成二年から始まったこの「子供の詩コンクール」は蓮華院誕生寺の先代住職の最晩年から始まりました。それは先代故川原真如大僧正の人生の集大成とも言ってよい、青少年健全育成への思い入れの籠った運動と言えるでしょう。
 
先代は先の大戦で学徒動員の海軍特攻兵士としての猛訓練の中で終戦を迎えました。あと数ヶ月終戦が長引けば確実に戦死していて、私自身もこの世に生まれていなかったのです。
 
私は十代後半の反抗期の頃、そんな先代(実父)に「あの頃はどんな思いで特攻隊に志願したんですか?」と問い掛けると、
「自分が命を投げ出す事で、両親や祖父母、そして故郷が蹂躙されるのを一日でも長引かせることが出来れば本望と思っていた!」との答えでした。
その言葉に、その頃の反抗的な自分自身が打ちのめされる様な衝撃を、今でもはっきりと憶えています。
 
故郷や両親、祖父母への思いなど全く心に無かった当時の私は、その後の父の生き方をそばで見ていて、父母祖先への恩返しや故郷にいかに貢献すべきか?などに集約された、父のその生き様は一つの道筋としてハッキリと見えていたのです。
 
『孝は百行の基』と言う父の世代の常識が見失われ、「親孝行」という言葉が死語となりつつある現代において、亡き父が目指した価値観をこの運動にしっかりと込めていきたいと念じております。
 
令和の時代の子供達が、これからも父母を詩作の中でしっかりと見つめ、両親の有難さや尊さをこの運動の中で実感してくれれば、より良き家庭、より良き人間関係、より良き地域社会に向けた一石になる事を念じつつ…。   合掌
 
家庭で親孝行を伝えていこう
 
幕末に松下村塾で多くの人材を育て、後の明治時代に大きな指針を与えた吉田松陰先生は、安政の大獄で処刑される直前にこんな辞世の歌を遺しておられます。
 
親思ふ こころにまさる親ごころ
   けふ(今日)の音づれ何ときくらむ
 
子供が親を思う心に比べて、親が子を思う愛情は、とても子供には思いも付かないほどに深いものがあります。
 
しかし現代では、そもそも子供達に「お父さん、お母さんを大切にしなさい」とか、引いては「ご先祖さまを大切にしなさい」とちゃんと教えているでしょうか?
とてもそうは思えません。
 
それどころか、戦後日本の国家の根幹であるはずの日本国憲法の中には、権利の主張は多々ありますが、この親を大切にする事、ましてやご先祖様を大切にする事、ひいては地域社会や国家を大切に思う事など、全く入り込む余地がありません。
 
先の詩集の巻頭言で、終戦間際に父が特攻に志願された時の思いをお伝えしましたが、そこには今日の学校教育からは決して窺い知れない、父母や祖父母、祖国への篤い思い、故郷への思いなどが込められています。
 
もちろん戦時中、しかも敗戦間際という極限的な時代背景ではありましたが、現代の私達も親の有難さや祖国の恩恵ぐらいは、熱烈とまでは行かなくとも、子供達にしっかり伝えても良いのではないかと思います。
 
これが今日の学校教育現場には望むべくもないのであれば、せめて各家族が家庭教育の中でしっかりと伝えて行ってほしいものです。そのような思いから、先代が「子供の詩コンクール」を始められたのです。
 
この様な先祖や父母、そして故郷への思いを正月休みの一時、是非とも子や孫達に自分なりに伝えてあげて下さい。
 
先代の遺訓に込められた願い
 
先代が信者の皆さんに残された大切な遺訓が、ご存知『ちかいの詞(ことば)』であります。
 
わたくしは、父母祖先、先生友だち、
そしてこの街この村この山河、
すべてに感謝し、
恩返しのできる人間になるために、
日々努力、精進致します
 
ここには父母祖先への感謝が明確に謳われています。さらには恩返しをも明示されています。まさにこの『ちかいの詞』こそが、先代の究極の人生目標であった事が偲ばれます。
 
「どうか全国の青少年達よ、世界の若い人達よ。父母や故郷を大切にし、更には恩返しをしてほしい!」と、先代真如大僧正様の畢生の願いと祈りの籠っている言葉に違いないと、私は確信しています。
 
これはまた日本、更には世界の若い人達だけではなく、人類全てにこの様な思いを持って欲しいと私は念じております。
 
一隅を照らす灯し火を掲げよう
 
年頭に当たり、本誌を読んで頂いている一人でも多くの方々に「父母祖先」や「故郷と国家」を大切に思い、そして恩返しへの思いを新たにして頂きますよう、切にお願い申し上げます。
 
それがいかに小さな行動であっても、一家から地域へ、そして祖国へ、更には世界に向けて、小さな小さな灯し火であっても、その灯し火を灯し続けて行きましょう。
 
そんな皆さんの後ろから、連綿と続くご先祖さま方が後押しして下さる事でしょう。そしてそんな私たちの行く手には、皇円大菩薩様を始め、無数の神佛が進むべき道を照らし、導いて下さるに違いありません。
 
本年も貴方様や、貴方のご家族様方の幸多からん事を心からお祈り申し上げます。合掌




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