2022年01月05日大日乃光第2326号(2)
「世代交代を迎えるアルティック」
「世代交代を迎えるアルティック」
認定NPO法人 れんげ国際ボランティア会
専務理事 川原光祐
信者の皆さん、明けましておめでとうございます。
今回は、昨年入って頂いたアルティックのニューフェイスのご紹介と、事務局長の久家君と準教師の伊藤祐真さんによるインドでの活動視察について、お伝えしようと思います。
日本財団も認めた途上国支援の理念
ご承知のように、アルティックでは平野喜幸ミャンマー事務所長を中心に、現地での学校建設支援事業と、平野君の信念に基づいた人づくり、地域づくり活動を進めております。
これは佛教の思想、とりわけ鎌倉時代に社会福祉事業を進められた叡尊上人のお考えや、アルティックが長年国際協力支援活動を通して培ってきた理念に基づくものであります。
元々、日本には戦前からミャンマーと深いご縁があり、中でも日本財団は笹川陽平会長を中心にハンセン病患者への医療支援活動に始まり、累計約七十件もの人道支援プロジェクトを続けて来られました。その日本財団に森祐次常務理事という方がおられて、この方が貫主大僧正様のお知り合いだったのです。
かつて平野君は日本財団の関係でミャンマーの他の地域で学校建設に携わった経験があり、ミャンマーのイラワジ管区で学校建設を始めたいので、ぜひ今あなたの所に居る平野君の力を借りたいと、森常務から貫主大僧正様に電話で呼び掛けられたのです。こうして十年前に、平野君がミャンマーに赴任したのです。
まず最初に一年間現地調査をして、どの地区に学校を建設するかを決めて、日本財団に事業計画と事業予算を申請しました。その一年間の平野君の活動は、全てアルティックが信者の皆さんから託された尊い浄財によるものでした。そして二年目から、日本財団からの潤沢な資金も活用できるようになりました。そのおかげで、一番多い時には年間十五校建設できました。
現地の活動を引き継ぐ人材
その平野君ももうじき還暦を迎える年齢となり、事業を継続するためには後継者を育てなければならないタイミングを迎えています。
事務局長の久家君もやがて定年を迎えますので、アルティックではミャンマー現地と本部事務所で同時期に後継者を募集し、次の担い手として育てて行く事になりました。ところが募集を掛けても、当初は応じる人がなかなか現れませんでした。
一昨年になってようやく十数人の応募があり、厳正な審査によって、最終的に二人を採用しました。それが昨年四月十三日の御縁日に、本堂で皆さんにご紹介した鈴木謙君と工藤絢花さんです。
当時、世界を覆うコロナ禍に加えて、二月に発生した国軍によるミャンマークーデターで現地では緊迫した情勢の最中でしたが、本人たちの強い信念を尊重しつつ、どうか無事でいてくれとの思いを胸に、皆さんとともに拍手で送り出したのでした。
鈴木君と工藤さんは五月に現地に着任し、平野君の指導を受けながら、現地での活動を始めました。二人の内、工藤さんはアルティックの担う事業と本人の能力の相性が良く、長く勤めて頂けるように感じています。
ところが鈴木君は非常に残念でしたが、退職しました。当初から心配していましたが、やはり現地での政情不安やコロナ禍による外出制限、活動自粛などの事情が重なっての事でした。
現地と日本を繋ぐ若い才気
さて、九月の終わり頃からもう一人、事務局の久家君の後継者として、本田佳織さんを迎えております。
本田さんは大学卒業後、アフリカをはじめ世界各地で国際協力の現場に従事して来た豊富な実績を持ち、先の二人に勝るとも劣らない非常に有能な経歴の持ち主です。事業計画書を作成して申請したり、報告書を作成し提出した経験が豊富で、今進めている事業についても、持ち前の知識と経験を存分に発揮してくれています。
今回新規に採用した若者達は、皆優秀な人材ばかりで、これも偏に皇円大菩薩様の御霊力によるものと有難く思っております。また、本田さんと工藤さんで、奇しくもほぼ同世代の女性職員が本部とミャンマー事務所に加わった形になりました。
二人がアルティックの活動を発展させる大きな力になってくれるものと期待しています。
インド事業の視察
さて、冒頭で伝えたように、伊藤さんと久家君がインド事業を視察して来ました。十一月十三日の出発で、十二月八日の帰国ですから二十六日間の日程でしたが、帰国後もしばらくは空港近くで隔離されました。
当時、猛威を振るったデルタ株も落ち着いていましたが、二回のワクチン接種証明書や、PCR検査の陰性証明書が必ず必要でした。幸い当時のインドでは、その二つさえあれば入国後の隔離は必要ありませんでした。
インド事業とは、インドのチベット難民居留区の衛生環境の改善を目的にした、上下水道やトイレなどの設備の整備補修事業です。
今回は従来の民間団体としての直接的な支援ではなく、日本の外務省の「日本NGO連携無償資金協力」(N連)の資金援助による事業ですので、規定により現地のキュア(CURE)というカウンターパート経由で八ヶ所で九つの事業を進め、現地からは八割九割の進捗状況という報告でした。
本来なら去年の三月には終わっているはずでしたが、コロナ禍による制約で事業が大幅に長引いています。その上、外務省ODAの資金を用いた事業ですから、きちんとした報告書や決算書の提出が必要なのですが、キュア側の報告書が杜撰で、メールでのやり取りではこれ以上上手く進まないとなって、現地視察を兼ねて二人が赴くことになったのです。
工事現場の実態の把握や、三年後には外務省からの調査が入る可能性があるという事で、運用面の指導もする事になりました。外務省のN連には、インドでの二回目の事業も申請していますので、その現地での打合せもすることになっています。
また昨年、チベット亡命政府の首相が選挙で変わりましたので、今回の視察の重要な使命として、チベット亡命政府の新しい首相や厚生大臣、難民キャンプを管理する内務大臣、それから教育大臣との会合も含まれています。帰国後の報告が楽しみです。
活動の根幹にある慈悲行の実践
アルティックは、今や様々な団体からの補助金や助成金が活動資金の多くを占めるようになってきました。その全ては真如大僧正様の「慈悲行」の提唱に始まった信者の皆様方の浄財によって、長年地道に活動を続けて来た結果であります。外部の団体からもアルティックなら間違いないという信頼が高まっているという証なのです。今後とも、どうか皆様方のご支援の程を宜しく申し上げます。合掌
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