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大日乃光






大日乃光

2022年02月28日大日乃光第2331号
『明るい表通りで』に見る幸福獲得法

『カムカムエヴリバディ』
 
現在、NHKテレビの朝の連続ドラマとして『カムカムエヴリバディ』が放送されています。皆さんもご覧になられている方が多いのではないでしょうか?
 
このドラマの主題歌『アルデバラン』をAI(アイ)さんが歌っています。そして、その他にもう一つよく流れる音楽がこのドラマを紡ぐ重要な役割を果たしています。その歌はルイ・アームストロングの歌う『オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート』"On The Sunny Side Of The Street"、直訳すれば、「通りの陽の当たる側で」ですが、邦題は『明るい表通りで』となっています。
 
この曲は一九二九年に始まる世界大恐慌の時、落ち込んだ人々を励まそうと作成されたもので、ジャズのスタンダード・ナンバーとして多くのミュージシャンに歌われました。その中でもルイ・アームストロングの歌ったものが有名です。
 
ルイ・アームストロングは別名「サッチモ」、あるいは、「ディッパーマウス」(大きな口)とも呼ばれました。あの大きな分厚い唇でトランペットを吹いたり歌ったりしたのです。ある女性シンガーがルイの大きな口を見て、「サッチ ア マウス」"Such a mouth!"(=なんてばかでかい口)と叫んだので、「サッチモ」"Satchmo"と呼ばれるようになったそうです。
 
『明るい表通りで』

コートを手にとり
帽子をかぶって
悩みごとは玄関前の階段に置いて
まずは歩き出だすことさ 
陽のあたる道へと

聞こえないかい、パタパタって音が? 
それは幸せに満ちた君の足音さ
人生は素晴らしいものになる
陽のあたる道にいれば

ボクはこれまで陽のささない道を歩いていた
憂鬱や不安を引き連れながら
けれどもう心配なんかしていない
放浪者はもうやめたから

もしも一文無しになったって
気分はロックフェラーみたいな金持ちさ
足下の塵だって金なのさ
陽のあたる道を歩いていれば
 
日陰とひなた
 
今年の正月奥之院での事です。お参りが終わり、行道しながら、冷たい風の中を客殿の方へ帰りました。五重塔を右回りに廻り、日陰から日向へと出たとたん、宗務長先生が「ああ、暖かい」と仰いました。きっとこの歌の作詞家も同じような経験をされたのだと思います。
 
ところが、世の中、この歌の中の若者のように、自分のこれまでの人生の暗い所、辛かった事、悲しかった出来事だけを見つめて、自分の不運を嘆き、世の中や周りの人びとを憎んだり呪ったりして、自分の体まで壊している人々が結構いる事に驚きます。ちょっと、通りを渡って、反対側の陽の射す暖かい方を歩けば、身も心も温かく、懐まで暖かく感じられるというのにです。
 
それでは、どうしたら、日のさす方へ移れるのでしょうか。歌詞の最初の方、「悩みごとは玄関前の階段に置いて、まずは歩き出だすことさ」に注目して下さい。人生、毎日色々な事が起きます。嫌な事や辛い事、悲しい事、頭にくる事なども起きるでしょう。でも、それらはいったん横に放っておいて下さい。そして、今日一日、自分の出来る事、やるべき事をやって、そのまま前進しましょう。過去でもなく未来でもなく、「今日一日だけを生きましょう」翌日はまた、その一日だけを生きていくのです。
 
下ばかり向いていないで、時には夜空の月や星を眺めて下さい。忘れていた夜空の美しさや無限の広がりを感じると、自分の悩みなどちっぽけなことに思えてくるでしょう。そして、一日の終わりには、三つの事を日記などに書き出して下さい。今日、「出来た事、楽しかった事、感謝する事」の三つです。小さな事でいいのです。
 
自宅で出来るEメール内観
 
自宅で出来る「Eメール内観」(一ヶ月間)という方法もあります。内観は、「してもらった事、してあげた事、迷惑かけた事」の三つを周りの人びとについて、小さい頃から現在までを何回かに区切って、思い出していくものです。そして、「相手サイドから客観的に」自分自身を観てみます。そうすると色々な事に気付き、癒され、立ち直っていけるのです。
 
内観すると、自然と、"Sunny Side"(陽の当たるサイド)を探す事になります。昔の幸せだった事や楽しかった事や愛された事を思い出したり、現在の身の回りの感謝できる事や体のまだ健康な部分などを見つけられると、温泉に入ったように体や心が温まり、ほぐれます。
 
今まで凝り固まっていた、ヘドロの様な冷たい心の固まり、恨みや憎しみや怒りや劣等感などが溶け出し、流れていきます。心がきれいに温かくなると、体の不調も改善します。そして、毎日を明るく楽に過ごせるようになり、人生も楽しくなっていくのです。
 
『カムカムエヴリバディ』の三世代のヒロイン名は、「安子、るい、ひなた」となっています。どうか、皆さん、NHKの朝のドラマを見る時は、次のようなことも心に留めながら、見て下さい。「自分は、陽の当たる方を見つめながら生きているだろうか?」と。
 
それでは次に、実際にEメール内観で、暗い憂鬱な生活を脱して明るいひなたの生活へ転換できた方の、素晴らしい体験感想文をご紹介させて頂きます。
 
Eメール内観でうつ病改善
 
鬱病と診断されて二年。病院に通うもののなかなか良くならず、家庭内でも仕事上でも精神的に非常に追い込まれていました。日ごろお世話になっている蓮華院誕生寺様に相談の手紙をさせていただいたところ、内観してみるよう強く勧めていただきました。
 
一ヶ月のEメール内観に続き、フォローアップのEメール内観を一ヶ月行いました。まず母、父についてそれぞれ時期を区切って約十回ずつ振り返りました。この世に生を与え、大事に育ててくれたことから始まり、成人してからもさまざまな面で心配をかけ、支援を受けていたことを思い出していきました。
 
養育費の多額さは薄々感じていたものの、具体的な金額として積み上げてみると、あまりの多さに驚愕せざるを得ませんでした。母は長年にわたって蓮華院様に私のことについてさまざまなご祈祷をお願いしてくれていました。私がそれに見合うだけの人生を送れず、鬱病に陥って人生を駄目にしつつある現状を非常に情けなく思い、深く反省する日々が続きました。
 
してもらったことに比べ、して差し上げたことはあまりに少なく、とても釣り合いは取れないものでした。両親が不仲だったことは非常に辛く、母親につらく当たる父親を「ひどい人間だ」と思ってきましたが、両親への内観を深める過程で父親にもそれなりの理由や言い分があったのだろうと思うようになり、また夫婦のことは二人だけにしか分からない世界もあるのだと教えていただきました。
 
続いて妻、子供たちへの内観をしましたが、ここでもしてもらったことの方が多くありました。若いころから自分の置かれた状況に常に不満、愚痴を吐き出していましたが、妻はそれを長年たしなめてきてくれました。ですが、私はそれを真剣に聞いてきませんでした。過去の貪瞋痴が、自分自身を現在の苦境に至らせているということに気づかされました。
 
長年蓮華院様の信者であり、皇円大菩薩様のご加護をいただいて幸運にも恵まれてきました。しかしながら、感謝することが少なく、不満だけを常に抱えてきた自分が、非常に恥ずかしく、これまで支えてくれた両親や妻、子供たちをはじめ、皇円大菩薩様、蓮華院の皆様に申し訳なさがあふれました。
 
内観では、私の何事も暗い面、悪い面ばかりを見る長年の癖も改めて自覚し、指導していただきました。"On The Sunny Side Of The Street"という歌を教えていただき、陽の当たるところに目を向けるようにと、何度も何度も繰り返していただきました。
 
周りの人や今あるもの持っているものなどに感謝の言葉を発する、「ありがとう」と言い続ける。まだ心からとはいきませんが、とにかく「ありがとう」の言葉を口にする機会を増やすようにしています。それが「陽の当たる人生を歩む」ことにつながるのだと、指導してくださいました。長年にわたって染みついたネガティブ思考は一朝一夕には変えられませんが、行動を続けることで変えられると教えていただきました。
 
二ヶ月にわたる内観の途中では入院中だった父が死去しました。父への内観をしていたおかげで、まだ父が意識がしっかりしているうちに「これまで育ててくれてありがとう」と直接感謝の言葉を伝えることができたことは、大変ありがたかったです。生きている間に何も恩返しできませんでしたが、最低限の気持ちを伝えられたことで、気持ちが少し楽になっています。
 
二ヶ月の内観は、父母、私の家族のことを内観すると同時に、これまでの自分と向き合うことでした。自分の至らなさ、ふがいなさ、どうしようもない怠惰な性格などを見つめ直さざるをえず、非常に辛い日々でした。メールを書く気にならない日も多くありました。周囲からいただいたご恩に対し、自分の嫌な面、そして情けない現状を見つめる時、気持ちがどうしても沈みがちになりましたが、激励を励みになんとか乗り越えることができました。
 
内観を終えて、「だいぶ良くなってきました」と言っていただきました。これからの人生をしっかり立て直していけるよう、小さな感謝を積み重ね、貪瞋痴に逆戻りしないよう努めていきます。心の置きどころを『感謝』に変えると、人生が変わると教えていただきました。しっかり守り、陽の当たる人生を歩んでいきたいと思っています。
 
毎回愚痴を並べたような長文のメールを読んだうえ、丁寧なご指導をいただき、ありがとうございました。崖っぷちのところで引き戻し、お救いいただきました。心から感謝申し上げます。また迷いが生じたら内観に立ち戻り、ご指導を仰ぎたいと思います。本当にありがとうございました。貫主大僧正様を始め蓮華院の皆様にもよろしくお伝えください。合掌




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