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2022年08月01日大日乃光第2344号
日本の為に生涯を尽くされた安倍晋三元総理を悼む

日本の為に生涯を尽くされた安倍晋三元総理を悼む
 
人は四恩の抜済の為に生きるなり
 
皆さん酷暑の中、ようこそお参りでした。さて、先の七月八日は、私にとっては二重の意味で重苦しい一日でした。
 
ご存知の通り、安倍晋三元総理が凶弾に倒れ、所謂暗殺されたからです。享年六十七歳と、奇しくも先代真如大僧正様が御遷化なされたのと同じ年齢で、同じ七月八日の、しかもほぼ同じ時刻の事でありました。この為、二重の意味で大変辛い数日間を過ごしたのです。
真如大僧正様はよく、「人は何のために生きるのか?」という御法話をここ(本堂の法座)からされました。
 
父が二十歳前後の頃、高野山大学で弘法大師の「人は四恩の抜済のために生きるなり」という聖句に触れられて、「人は四つの恩に報いるために生きるのだ」と、人生の目標が定まったとよく話をして頂きました。
 
「四恩」とは一つには「父母祖先の恩」です。二つには「国土国王の恩」。三つには「一切衆生の恩」。そして四つ目には「一切三宝の恩」です。これは中国で成立した『心地観経』というお経に出て来る言葉です。ここで安倍さんの生涯を、この四つに照らしながら振り返りたいと思います。
 
戒名に込められた故人の人徳
 
実は、私は安倍さんのお母さんと奥さんには直接お会いした事が有ります。お母さんの洋子さんは十数年前に一度、奥之院にお参りされました。故岸信介首相の長女さんらしく、とても大らかな、そして厳しい目をしておられた事を印象深く憶えています。
 
奥さんの昭恵さんには東京でお会いしました。私が多くの仲間に呼びかけて戦没者の御遺骨帰國運動をやっていた頃、その成果がようやく実を結んだ平成二十九年に第四十八回社会貢献者表彰を受賞しました。この公益財団法人社会貢献支援財団の会長が安倍昭恵さんなのです。フロアで皆と歓談する中で、こんな素直で優しい人なんだという風に、昭恵さんの事をしみじみと思いました。
 
安倍さんのお父さんの晋太郎さんは将来を嘱望されながらも外務大臣で終られましたが、やはり六十七歳で癌で亡くなられています。
 
十二日に東京港区芝の増上寺(浄土宗)で行われた葬儀では、安倍さんの戒名は「紫雲院殿政譽清浄晋寿大居士」(しうんいんでん・せいよ・しょうじょう・しんじゅ・だいこじ)でした。
 
この「紫雲院殿」の「紫雲」は、皇円大菩薩様の直弟子の法然上人が大きな覚りを得られて、西空に紫雲を見て浄土宗開宗の決意を示された故事から、浄土宗ではこの言葉がよく使われています。
 
「院殿」は、昔で言えば殿様クラス以上にしか付けません。普通は何々院です。安倍家は山口県では熱心な浄土宗の信徒でした。「政誉」とはまさに政治の世界で名誉のある大きな事を成し遂げられたという意味です。そこで安倍さんが生涯に成し遂げられた事をいくつも思い起こします。
 
日本の平和と安全の為の実績
 
第一次内閣では教育基本法が改正されました。安倍さんの改正案には「わが国と郷土を愛する態度を養う」という、いわゆる愛国心を巡る表現がしっかり盛り込まれました。
 
それまでは国を愛するとか愛国心などの言葉を使えば、右翼だ!戦前回帰だ!!という短絡的な反応しかなく、教育の現場では殆ど使われていませんでした。しかし安倍さんは教育の憲法と呼ばれていた教育基本法を思い切って変えたのです。これによって教育を国民の手に取り戻したのです。これだけでも大変な事でした。
 
それから防衛庁を防衛省に昇格させました。ある高名な学者によれば、軍事的なアンバランスによって戦争の危機が高まるそうです。三十年前ならまだしも、今の中国は日本の防衛費の五・五倍もの軍事費を使っているのです。そういう中での防衛省への格上げはとても重要な事だったのです。
 
それから七年前の平和安全法制の成立。当時は「日本が軍国主義化する」などと大変な騒ぎになりました。しかし安倍さんは支持率を十数パーセント下げながらも、やり遂げました。これだけではまだ不十分ですが、それでも自衛のためですら何も出来なかった状態から脱却する事が出来たのです。
 
集団的自衛権についても、安倍さんが風穴を開けてくれました。こういった戦争の危機を少しでも防ぎたいという信念に基づく決断と実行力、それはこれまで他の政治家達の誰も成し得なかった事なのです。
 
また公務員や自衛官が立場上知り得た機密情報が、中国のスパイ工作によって漏れた事例が過去にはありました。日本は依然としてスパイ天国ですが、そのような事態を防ぐための法律を特定秘密保護法として成立させました。これも他に誰も成し得なかった事です。全ては少しでも日本を安全な国にしたい、という願いによるものなのです。
 
現在の日本では軍事技術に転用されかねない最先端の技術が外国に流出しています。また、コロナ禍での最初のマスク不足は記憶に新しいと思います。今も半導体の供給不足が深刻です。その上、ウクライナ戦争によって食料とエネルギーの供給態勢も懸念されています。
 
そういった国民生活や経済活動の不安を解消するために、今の岸田政権で経済安全保証推進法が先頃成立しましたが、これは外交と安全保障に心血を注がれた安倍さんによる政治的遺産のほんの一部なのです。
 
北海道や静岡県などで頻発した、外国資本による水源地や周辺地域の買収、乱開発等を規制するための法案も安倍政権下で推進され、それまで自治体任せで充分対処できなかった対策が、国による水循環基本法としてきちんと法律に定められて対応できるようになりました。
 
世界中から寄せられた故人への追慕
 
以上は国内における業績のほんの一部ですが、特にG7を始め世界中の政治的リーダー達からは、安倍晋三という人物が世界に対して大きな役割を果たしてくれたと称賛されてきました。しかしその事を、日本のマスコミはあまり熱心には取り上げて来ませんでした。
 
また日本の多くのマスコミは今回の事件を「銃撃事件」と称していますが、これもどう見ても「暗殺」としか言いようがありません。今回の事件と似たケネディ大統領暗殺事件の時、私は小学五年生でしたが、はっきり憶えています。子供なりに衝撃を受けた事件でした。
 
今回は、その何十倍もの衝撃を受けました。日本人の八割九割も、この衝撃と喪失感に大きな大きな悲しみを抱いています。この事は安倍さんが倒れた大和西大寺駅付近の現場を始め、縁のあった場所や、日本各地で開かれた記帳所に、花束を持った人々の行列が延々と続いている事にもよく表われています。
 
さらに海外の国や地域、機関や団体から夥しい数の弔意メッセージが届けられている事からも、いかに安倍さんの存在が大きかったかを窺い知る事が出来ます。まさに安倍さんは、国土国王の恩に報いて来られたのです。日本を愛し、日本という国を守りたい。日本の尊厳を守りたい。日本国民一人一人の生命を守りたい、という大きな使命感を元に、支持率を十パーセントも落としながらも見事にやり遂げたのです。
 
その後、それを聞いたトランプさんは、「おー晋三!お前はサムライだ!!」と叫んだそうです。
政治家として、支持率の十パーセント低下は大変な痛手なのです。にも関らずそれよりも大事な事、自らの使命を最後まで貫き通されたのです。
 
志を受け継ぐ人達への確信
 
また、安倍さんは総理として日本の憲政史上最も長い在任期間を務められました。この長期安定政権の恩恵は私達にとって計り知れない程でした。
 
今後、これ程の人物が現れるかと悲観する人が沢山いますが、私はあまり心配していません。
国を愛し、国土を守り、日本の尊厳を守り、そして将来の繁栄に向けて着実に手を打つ。そういう使命感に燃え、命懸けで実現するという政治家が、私は次々に現れると思います。この時代を経る中で、日本中がそれぐらいの根性、性根が育てられたと思っています。
 
次の一切衆生の恩というのも、正に国土国王の恩と同様に、全ての日本人の未来が幸せである様に、そして人々が平穏に過ごせる様にという思いが、安倍さんは一際強かったのだと思います。そういう志のある人物の後を継ぐ人が次々に現れると私は確信を持っています。繰り返しますが、決して悲観はしません。
 
とは言え、民主主義の国では百人が百人、指導者に賛成、応援するという事にはなりません。必ず批判する人が現われます。この自由に批判出来るという事が民主主義の根幹であり、健全な社会を保っている証しでもあるのです。
 
しかし人間には品性、品格という大事なものがあるのを忘れてはなりません。亡くなられてまだ三日も経たず、初七日も済まない内に、故人を悪し様に発言するのは、あまりにも日本人としての品性に欠けるのではないかと感じながら最近の報道を見ております。
 
幸い、岸田総理は安倍さんの遺志を継ぐとはっきり言われました。この安倍さんが亡くなられた直後の記者会見を見て、その緊迫した顔つき、盟友を亡くした悲しみの表情で、安倍さんが心血を注ぎ、成し遂げられなかった事を引き継ぐと発言された時、「よし俺がやるぞ!!」という心意気を岸田総理から感じ取りました。私はこの方は変って行くと確信しています。
 
心の中の佛様の種を育て、佛様の光を周囲に反射しよう
 

またこれを機に、私達も日本という国に対して一人一人は微々たる存在ではありますが、何が出来るのだろうかと考えてみて下さい。日本の為に何が出来るだろうか。地域の為に何が出来るだろうか、もっと言えば家族の為に何が出来るだろうかと。
 
このように何かの為に生きて行くと考え行動する所に、人は何のために生きるのか?の疑問に対する答えがあり、何かの為に生きてこそ、自分の生きる意味があるのです。
 
自分の為だけでは、そこに本当の生き甲斐は生まれません。身近な人達、家族や学校の友達、恩師、仕事の同僚や仲間、地域の人々など、他者の為に行動する。
 
そういう人達の為に何かを成そうとする気持ちは一体どこからくるのでしょうか?これは皆が大なり小なり、心の中にしっかりと佛様の種を持っているからです。
 
安倍さんを殺害した彼の心の中にも、必ずやこの種があったはずなのです。未だ全容が分かっておりませんけれども、様々な悪因縁が重なり合って、あのような凶行に及んでしまったのだと思います。
 
私達は、それぞれが心の中に持っている佛心に水を注ぎ、光を当てて、少しずつ少しずつ大きく育てて行きましょう。そして直接的な自分の子孫でなくても、次の世代へと良き願いを伝えて行く。良き思いを周りに発信して行く。それが先月お話しした、「佛様の光を反射する」という事なのです。
 
自分を素透りする光であったら、それは自分に光が射している事にはなりません。逆に光を完全に吸収してしまい、周囲に反射しなければ、それも光を受けている事にはなりません。
もっと言えば、それは佛様を信仰している事にはなりません。
 
私達は御本尊、皇円大菩薩様が七百六十年もの想像を絶する苦難の修行に耐えて成就された衆生済度の御誓願を、燦然と輝くその大慈大悲の御心には遠く遠く及びませんが、たとえ何万分の一であってもその光を反射し、周りに広げて行きましょう。
 
安倍さんの逝去を機に、皆がそういう思いを共有し、手を取り合って次の世代にしっかり引き渡していく責任があるのです。
 
私は今、このように強く感じています。
 
心を一つに、国葬で菩提を弔おう
 
そして安倍晋三元総理の葬儀は国葬にするべきです。これ程の偉人をきちんと評価する事の出来ない国や、出来ない国民であってはいけない。
 
国葬をして国民が心を一つにして安倍さんの菩提を祈るという事は、未来の日本にとって、とても良い影響を与えると思います。(後日、九月二十七日に決定)
 
どうか皆さんも、この様な思いを共有して頂ければ有難いと思います。合掌




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