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2023年04月22日大日乃光第2368号
六月大祭の「功徳行」で、御本尊様と最上の御縁結びを

六月大祭の「功徳行」で、御本尊様と最上の御縁結びを
 
本誌が皆さんのお手元に届く頃には、既に桜の花は散り、新緑となっている頃でしょう。今年の桜はまるで疫病退散を祝して、人々や社会の新たな門出を祝うかのように、全国各地で、また蓮華院でも本院・奥之院・御廟で見事に満開の花を咲かせてくれました。
 
さて、前回の準御縁日では宗務長から六月大祭についての発表がありました。それをさらに後押しする形で、六月大祭と、その前行としての「功徳行」について、私からも皆さんにお伝えしたいと思います。
 
身心を浄める入堂の作法
 
この本堂にはこれまで功徳行を修した事のない新しい信者さん方もお参りされていますので、その内容をお話し致します。
 
まず奥之院の寺務所で受付を済ませて着替え所に向かい、白衣に腰衣を着け足袋を履き、輪袈裟を着け手には数珠を持ちます。女性は白い頭巾を付けて頂きます。つまり略式の僧侶・尼僧の姿になって頂くのです。衣装が変ると自ずと心構えも変ってきますので、これも大きな意味があるのです。
 
全員が揃った所で行列を組み、五重御堂に向かって静かに進んで行きます。その時、功徳行者の一歩一歩の足の下には蓮華の花が咲いていると思って静かに歩んで下さい。仁王門をくぐる時、左右の仁王尊に拝礼し、門を過ぎると皇円大菩薩様の御霊廟(大佛様)と開山堂の開山上人様に向かってそれぞれ拝礼します。
 
そしていよいよ道場である五重御堂に入る時も「これから佛様の胎内に入って修行させて頂きます」という気持ちを込めて丁寧に礼拝します。
 
堂内に入ると一本ずつローソクと線香をお供えします。向かって右側から内陣に上がりますが、その時少量の塗香を授かり、両手で揉み、胸に少し当てて広げます。
 
いよいよ内陣に上る所で〝香象〟という香炉を跨ぎ、お香によってご自身を下から清めます。この香象を跨ぐのは、古代インドの高貴な儀式で行なわれていた作法です。このような作法は、私達日本人には少し「もったいない」気持ちにもなります。しかしこれは、日常から非日常の佛様の世界に入るために設えられた作法なのです。
 
こうして改めて厳粛な心が定まり、続いて佛様の智慧と慈悲によって浄められた浄水(洒水)を頭の頂に頂戴します。身も心も清めて「功徳行」が始まるのです。
 
五重御堂で修行をする意義
 
そもそも宇宙の構成要素である「五大」、つまり「地大」「水大」「火大」「風大」「空大」そのものが、大いなる宇宙の大生命を象徴する大日如来そのものなのであります。その後、弘法大師空海上人様がそれまでの五大に「識大」を融合されて、「六大縁起説」という真言密教の根本思想を打ち立てられました。この「識大」を象徴するのが私達の善なる意識であります。
 
つまり五重御堂内で私たちが菩薩の心を持って修行する事そのものが、六大を成就し、躍動的な大日如来に顕現して頂く事なのであります。これは人類の調和を超えて、全ての生きとし生けるモノの調和への大きな出発点ともなるのであります。
 
一層(地大)は受戒道場
 
では功徳行を具体的に説明致します。身も心も浄められた功徳行者は、一層の内陣へと昇殿し着座します。
 
一層は五大の内の「地大」、つまり基礎に相当します。佛道修行の基礎は「戒律」から始まります。その意味で、ここでは戒律を授かる、つまり「授戒」を致します。授戒は僧侶や尼僧になる得度式でも行います。
 
授戒の要点は「三帰」(佛・法・僧の三宝への帰依)、「三境」(三宝への帰依を確認)、そして「十善戒」の授与です。加えてこの功徳行が無事に終わり、少しでも信心が確立すること、更には様々な願いが成就する様に祈ります。
 
各層を上る時は、一歩一歩を踏み出す中、皆で「南無皇円大菩薩」と声を揃えてじっくり唱えながら登って行きます。
 
二層(水大)は写経道場
 
続いて「水大」に相当する二層に於いて、写経を致します。「般若心経」を自らの体を通じて書き写す事によって、お経に向き合い、お経と融合します。
 
人が様々な行動を行う時、その心のあり様で大きく三種類に分かれます。
 
一つには「岩に文字を彫り込む人」、次に「砂に文字を書き込む人」、そして「水に文字を書く様な人」です。
 
岩に強く彫り込む様に、思い入れが強く物事に強いこだわりを持つ人。それほど執念が強くなく、砂に書いた文字が崩れる様に時が経てばこだわりが消えてゆく人。そして水に文字を書いてもすぐに流れ去るように、一切のこだわりを後に残さない人の三種類です。
 
写経をする時は、こだわりを全て水に流す様に、淡々と書いてください。その事によって、佛様のお恵みがサラサラと滞りなく流れ込んで来るのです。写経に合わせて三層の護摩祈祷の時の、「添え護摩札」も書いて頂きます。
 
三層(火大)は護摩道場
 
三層では、まさに「火大」の象徴である護摩の清き炎によって、皆さんの悩み苦しみ、更には様々な悪しきこだわりなどを焼き尽くして頂きます。
 
護摩祈祷には二つの大切な意味があります。まず第一には「佛様の知恵の火によって私達の煩悩を焼き尽くす」いま一つには「佛様のお慈悲のお恵みによって願いを叶えて頂く」この二つです。
 
私達の心の中の良いも悪いも、全てを一度佛様の智慧の火で焼き尽くして清めて頂きます。そうすると同時に願い事が自ずから叶って行くのです。その様に真剣に、無心に念じてください。そうすれば自然に悪しきものは燃え尽き、新たな光とエネルギーが入って来て願いが叶うのです。
 
この様に熱烈な護摩祈祷の祈りを経て、四層の阿字観道場に向かいます。
 
四層(風大)は阿字観道場
 
「阿字観」は無念無想の座禅ではなく、有念有想とも言える密教瞑想であります。
 
呼吸という字が息を吐く「呼」、そして吸う「吸」の順に書く様に、まずは私達の心の中の良きも悪しきもすべてのこだわりを一度出し切ります。
 
具体的には吐き出す息と共に「あー」と声を長く出し、同行の皆で声を響き合わせながら息を吐き、新鮮な空気が自然に体内に流れ込む様に息を吸い込みます。
 
そしてゆっくりとした呼吸の中で梵字の「 」を観じます。「 」字は「阿字本不生」(あじほんぷしょう)と言われる様に、全ての命の大元を象徴しています。つまり「 」そのものが大日如来なのです。この「 」字を観じながら、自身の心の深い深層意識に目覚めるのが密教瞑想の阿字観なのです。
 
五層(空大)は法輪道場
 
そしていよいよ最上階の「空大」に当たる法輪道場でのお参りです。
 
皇円大菩薩様の御尊像に直接触れて佛様と一体になり、自らの願いを叶える「なで佛様」との対面です。皆で共にお参りしながら、御尊像に触れながらお参り致します。この「なで佛様」へのお参りで、これまでに数々の奇跡的な霊験談が生まれています。
 
杖をつきながらお参りされたある方に、五重御堂内で「どうぞ五層まで上り、『なで佛様』をお参り下さい」と寺内の職員が何気なく進めた所、その方は必至の思いで五層までお参りされたそうです。そしてその方は、帰りには何と杖をつかずに自分の脚だけで歩いて行かれたという話です。こんな事が何度もあったのです。
 
お参りの後は外の回廊に出て、眼下に雄大な景色を遠望します。雄大な景色を眺めていると、私達の日々の暮らしが大いなる自然の環境、さらには母なる地球のお陰で成り立っている事を実感する事が出来ます。この事が、さらに大いなる佛様のお恵みをも感得する事に繋がって行くのです。
 
信者にとって年に唯一の機会
 
その後、五層から一気に一層まで下りますが、この時も上る時と同じように御宝号を唱えながら一歩一歩と下ります。この階段は御縁日の十三日の奇しくも十倍の、ちょうど百三十段になっているのです。
 
その後、大梵鐘飛龍の鐘のお身ぬぐい式を執り行います。昔から梵鐘は座した佛様の姿を表し、その音声は佛様の御説法とも言われます。
 
開山上人様が「抜苦与楽、離業得脱」の心願を込めて造立された飛龍の鐘は、まさに御本尊皇円大菩薩様そのものなのであります。
 
大梵鐘のお身ぬぐい式は、十二月二十三日にも僧侶の手で執り行いますが、信者の皆さんが、その御身を直に浄布でお清めできる唯一の機会が、この六月大祭の「功徳行」の後だけなのです。
 
心を込めて清めた後、皆で大梵鐘を撞き、無事に行を終えた事への感謝の思いを皆で共有し、功徳行を終わります。
 
こうして前行としての功徳行を終え、翌日の本院での御遠忌大法要のお参りへと続きます。
 
六月大祭は最上の勝縁
 
今年の六月大祭では「百万遍大数珠廻し」も再開されます。満座の本堂での大数珠廻しの光景が今から楽しみです。
 
「奉納写経」も継続して行い続け、大祭当日には、御本尊皇円大菩薩様の御宝前にお供えします。
 
その中で皆さん方の真剣にお参りされるその姿そのものが、御本尊皇円大菩薩様への最上の報恩感謝となり、大きな功徳となるのです。また、その姿は子や孫達、身近な人々にも信仰の有難さと尊さを伝える事にもなるでしょう。
 
その意味では来たる六月大祭で、十二日の前行としての功徳行から参加されての翌十三日の御遠忌大法要へのお参りが、信者の皆さんにとって信仰の有難さを実感して頂ける最上のご縁となる事でしょう。
 
どうか一人でも多くの皆さんが、この勝縁に六月大祭にご参加下さい。皆さんのお参りを寺内一同、心からお待ち致しております。合掌




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