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2023年08月10日大日乃光第2377号
過去から未来に祈りを繋ぐ先祖供養の功徳力とは

過去から未来に祈りを繋ぐ先祖供養の功徳力とは
 
盛夏に命を輝かせる生き物達
 
この時期、蝉達が朝日の昇る前から大きな声で鳴いています。これから一週間鳴き続ける蝉もいれば、今日で命の尽きる蝉もいる事でしょう。彼らは何のためにそんな大きな声で鳴き続けているのかと言えば、まさに次の世代を残すためであります。そういった意味で、昆虫も動物も植物も、皆命を輝かせて懸命に生きています。
 
この夏の暑い盛りに護摩を焚かせて頂くと、その熱気の中に燃える命を実感し、しみじみと有り難さを感じます。今朝も開運厄除、健康増進、病気平癒、家内安全、夫婦円満…と、皆さん達の切実な願いの数々に祈りを込めました。
 
比叡山で屈指の学僧であられた皇円大菩薩様にあやかって、子や孫達の学業成就を祈願する方もおられます。子孫への思いは、生き物達の命の営みにも通じるものでしょう。
 
全ての生き物達は、次の世代を残すために今を必死で生きています。それに対し、近年の私達は今の自分の事だけを刹那的に考えるようになり、過去の御先祖様への感謝や、未来の子孫の事をあまり考えなくなって来ているようです。これは困った事だと思っています。
 
お盆は日本独自の先祖供養
 
そういった中で、命を受け継ぎ親となり、祖父母となり、また亡くなってからも子孫を守って行きたいと願う日本独特な死生観、宗教観が佛教と融合し、一緒になって「お盆」という行事が生まれました。
 
実は、お盆という行事はインドにはありません。中国では御先祖様を大事に敬いますが、この時期に御先祖様を拝み、供養をするという風習はないのです。そして春秋のお彼岸も、実は日本独自の風習なのです。
 
このお盆とお彼岸で年に三回。それに当山では「正月供養」を合わせ、年に四回、「四度供養」として先祖供養の日を設けております。
 
既に七月盆の先祖供養は終わりましたが、今寺務所では八月盆に向けて、まさに先祖供養を受け付けている最中です。
 
そういった中で、先祖供養にはどういう意味があるのか?という事を、現代の若い人達にも分かりやすいように、また皆さん達が子や孫達に話して頂くためにも、分かりやすいお話を考えてみました。
 
天皇陛下は日本人の総本家
 
ここで一つ皆さんに質問をします。皆さん方のご家庭では、ご先祖様を何代前まで遡れますか…?
 
一般のご家庭では恐らく四代か五代遡ると、その先はもう分からなくなる場合がほとんどでしょう。しかし今、ここに居られる方々の全員が、今日初めて出会われた方も含めて、同じ地域、例えば代々九州内に住んで来られた家同士でしたら、恐らくほとんどが数百年前のいずれかの世代で共通の御先祖様に辿り着き、繋がって行く事が想像できます。
 
そんな中で、世界中で最も血筋の明らかなのが私達日本の天皇陛下で、今上陛下まで百二十六代、二千六百年以上も遡ります。そこまで遡れば、実は私達の誰もが、天皇陛下の分家の分家の分家の分家の…?ぐらいには連なって行く事でしょう。
 
ですから天皇陛下は、私達日本人の総本家と言っても過言では無いのです。戦前、天皇陛下は全ての日本人のご先祖様の根本として、まさに神の如く尊く、人々は天皇陛下の赤子(子供)として親のように敬い、大事にしなければいけないという思いが社会全体に強かったのです。
 
八百年三十二代の御先祖様
 
ところで今年の六月大祭は、皇円大菩薩様の八百五十五年御遠忌大祭でした。そしてこの蓮華院というお寺がおよそ八百年程前に創建された事をご存知の信者さんは少なくないと思います。
 
八百年と言えば、一世代を二十五年とした場合、ちょうど三十二代になります。そこで一人の人の三十二代前までの直系の御先祖様を一人残らず数えると、一体何人になると思いますか?何と八十五億八千九百九十三万四千五百九十人という数字になります。これは現在の世界の総人口、約八十億四千五百万人を優に超えています。ちょっとびっくりするほど大きな数字ですが、一回子供さんとご一緒に、計算してみてください。
 
この約八十六億という膨大な数字は、いつの時代のどんな一個人であっても、その人が存在するために必ず必要な三十二代分の父親・母親(ご先祖様)の総数です。
 
しかしこの膨大な数は、過去の人口とは明らかに合いません。先に述べたように、その大部分がいずれかの世代で他人の御先祖様と同一人物である事で互いに繋がって行って、当時の実際の人口以内に納まるのです。
 
歴史ドラマを観ると分かりますが、昔は狭い地域での親戚同士の結婚や、貴族や武士など有力家系内での近親婚や同族婚等が多く、全く血の繋がらない家系同士の婚姻の方が却って稀な事でした。
 
これは海外でも同様で、ある遺伝学者が「地球上の誰もが、他の誰にとっても少なくとも五十番目のいとこである」と考えているほどです。
 
連綿と繋いで来た命の連鎖
 
例えば私から五代(六十二人の御先祖様)や十代(二千四十六人の御先祖様)ほど遡った時点で考えてみましょう。その中のたった一人の御先祖様が生まれなければ、または事故や病気で子供を生む前に亡くなったりすると、その後の世代が全て変って来て、私は生まれて来ないのです。違う親からは、私は絶対に生まれません。
 
逆に私が家内と出合わなかったら、今の三人の娘と八人の孫達も、確実に一人もいないのです。たった一人で歴史が変わって行くのです。
 
また未来に目を向けると、八人の孫達の内、何人かは結婚をして、子孫が飛躍的に増えて行きます。私達二人から三人が生まれ、三人がまた二人三人と生みました。すると御先祖様を遡ってみたように、八百年後、三十二代後の未来の一人から現在を見ると、約八十六億もの膨大なご先祖様達の中の一点に、私達がいるわけです。
 
こうして何百代も何万代も、人類以前に生命が地球で始まった時から途切れることなく繋がって、今に至っているのです。冒頭の蝉達も、最新のゲノム解析によれば、少なくとも数億年前から子孫を残すために鳴き続けているのです。
 
私達人間も、御先祖様達の遺伝情報を必ず受け継いでいるのです。私達の膨大な遺伝情報のどこかには、必ず御先祖様から受け継いだ痕跡があり、そういった形で必ず繋がっています。
 
そう考えると、ご先祖様をより身近に、親しく感じられるのではないでしょうか。
まさに現在に影響を与えていない御先祖様は一人もいませんし、未来に影響を与えない人も一人もいないのです。
 
子孫よ幸あれ!と願いを込める
 
私は毎朝信者の皆さんのための祈願祈祷を至心に勤めた後、三組の娘夫婦とそれぞれの子供達の生年月日を書いた仮札にも念を込めて拝んでいます。御先祖様を拝むと共に、子孫の事も毎朝拝んでいるのです。
 
皆さん達も、ふと孫達に「どうしているかな?」「元気でいてくれよ」と思われた時には、きっと朝夕の勤行でお参りしている事と思います。子や孫達に幸あれかしと、願わない人はいません。
 
私達は一人一人が過去から未来へと続く、時空を超えた祈りの結晶であり、結び目なのです。
そして私達の命は、過去の人びとの願いの結晶であり、それと同時に未来への原点なのです。
 
先祖供養の功徳とは?
 
ここまでは一般論です。
 
それでは先祖供養の功徳とは何でしょうか?それに対する一つの答えは、御先祖様方に、綺麗な結晶のように安定した状態になって頂く事です。それが「供養」の目的であり、それによって大地に支えられるように、安らかに平穏に支えられる事が、その最大の「功徳」なのです。
 
少し前には「守護霊」という言葉がテレビなどでよく聞かれました。命の危機に瀕した時に、祖父の顔が脳裏に浮かんだという話を聞いた事もあるでしょう。とても大変な時、危ない時に守って頂いたに違いないと。
 
また、例えば祖父母が亡くなった時に、どうか天国(極楽)で安らかに、私達を見守っていて下さいと願ったりします。ここで逆に、自分を見送られる立場に置き換えてみると、死後も子孫を見守って行きたいと、きっと強く願われるのではないでしょうか。このように子孫への思いが特に強い人が、死後、守護霊になるのです。
 
先祖供養は浄化の開運御祈祷
 
ところで守護霊とは反対の、負の意味で使われる背後霊という言葉もあります。これはどちらかと言えば生者の邪魔をしたり、足を引っ張るなど、陰鬱な雰囲気の霊です。
 
何かもう少しで成功するという時に限ってバタッと失敗したり、どうしてこんな風になるのかと思うほど運が悪かったりすると、何か悪い背後霊が憑いているのではないかと思う人がいます。
 
この背後霊とは、実は不成佛霊の事なのです。ところがそういう霊にも成佛して頂ければ、その中のご縁の深い霊が守護霊となって、守って下さるようにもなるのです。
 
ですから先祖供養をするということは、端的に言えば背後霊的にマイナスに働いてきた不成佛霊に対し、プラスに働いて頂ける守護霊になって頂くための開運祈祷でもあるのです。
私達が先祖供養をお願いするという事は、自分や家族を守って頂けるように、もっとお力を発揮して頂くように供養するという事です。マイナスに働いていた御先祖様に成佛して頂き、平安になって頂くことによって、そのお力で功徳を頂く。
 
そのために、蓮華院では歴代貫主の御祈祷を通じた御本尊皇円大菩薩様の無限の御霊力によって、皆さん方の御先祖様の成佛供養を修し続けているのです。
 
皇円大菩薩様を信仰し、御先祖様を供養し成佛して頂く事によって、私達は安らかに平安に暮らしていけるのです。
 
よく祖父母や親の代から長年信仰を続けて来られたご家族からのお手紙に、皇円大菩薩様のお力にくるまれるように守られて、全て安心しています、という表現をする方がおられました。
 
「拝み倒しの信心」とも言われるように、とことんまで信心を深めて、ぜひ御本尊様の御心に適う信仰生活にこれからも精進して頂きたいと念じております。合掌




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