第23集 熊本県KS
母娘、仏様に救われて
不思議な夢
私の家は奥之院まで車で十分、本院まで十五分の所にあります。こんなに近くに住んでいながら、蓮華院のことはよく存じませんでした。
そんな私でしたが、以前不思議な夢を見ました。それは白い着物を着たお爺さんがお二人、お一人は長い白いひげを生やした方でした。何か宜しくお願いしますと話をしておられたのですが、その時は気にも留めませんでした。
ゼロからのスタートと学校でのいじめ
主人と二人で五年前に瓦屋を開業しました。その前は主人の叔母さん夫婦の瓦屋さんにお世話になっておりました。身内ということもあって、他の従業員さんより朝早くから夜遅くまで二人でよく頑張りました。けれどどんなに頑張っても、私たちは叔父さんから認めて貰えませんでした。
心身ともぼろぼろのまま、自分たちのゼロからのスタートと言い聞かせ、思い切って独立開業しました。
始めたばかりの頃は、仕事も思うように無く、手作りのチラシをポストに配ったり、知人を訪ねて回ったりしていました。そんな時に、娘が学校でいじめに遭っていました。いじめに遭うのは初めてではありません。小学校、中学校といじめに遭ってきました。高校では他の中学からも生徒が集まりますので大丈夫かな?と思っていましたが、入学して間もなく事件が起きました。
学校の正門の所で、同じ学年の女の子に目つきが悪いと打たれ蹴られ、顔は見事にはれ、口の中を七針縫う傷を負わされました。そのとき、他の生徒達は見て見ぬふりをしていたそうです。
重なる入院と死の覚悟
傷が治りかけた頃、娘は原因不明の腹膜炎を起こし、緊急手術を受け、しかも脊髄に管を入れていながら薬を入れ忘れるという医療ミスが重なり、本人が一番辛かったと思いますが、まわりの家族も見ていられませんでした。
退院後、学校に通い始めましたが、こういった色々な事が原因でうつ病になってしまいました。
私も勤めていた時の疲れや、開業したばかりの不安など、いろいろな事が重なり、私自身もうつ病になり、精神科に入院しました。その後、娘は私の入院が自分に原因があると思い込み神経内科に入院、主人の話ではその時祖母も入院していたそうです。「おれの方が入院したかった」と言っていました。
約一ヶ月後に私は退院し、娘も一週間遅れて退院しました。家族四人久しぶりに揃いましたが、皆腫れ物に触るみたいでギクシャクしていました。
少しずつ娘の顔にも笑顔が見られるようになった頃の夜、「ああもう前のような苦しみは経験したくない。良くなっている時に死んで終いたい」と一人外で泣きました。私がいない事に気がついた主人が「今日はゆっくり休まんね」と言って部屋に連れていってくれました。
御開山大僧正様に引き寄せられて
次の朝目が覚めると、なぜか奥之院に行ってみようという思いが心を過ぎり、何かに引き寄せられるように奥之院に行きました。
其の時の私の顔が尋常ではなかったのでしょう。圓海先生から 「少しお話しませんか」と声をかけて頂きました。
椅子に腰をかけてから、不思議に緊張の糸がほぐれたように涙をぽろぽろ流しながら、今までの事を次々に話し出しました。その時は天気がよい日なのに、参詣の方がいらっしゃらないのです。まるで私の泣き顔を誰にも見せないように仏様が気配りされているように思えました。
圓海先生が「特別指導を受けてみたら」とおっしゃるので、本院に行ったのですが、まず本堂にお参りに行ったところ、目が点になりました。夢でお会いした、あの白い着物を着て白い鬚を生やした方は、なんと開山大僧正様だったのです。
それから、お部屋に案内して頂いたのですが、特別指導の意味もよく理解せず精神状態も不安定のまま貫主様にお会いしましたので、意味不明な事ばかり話していました。とうとう貫主様から「何が言いたいのか分かりません。とにかく当分の間お参りに来なさい」とのお言葉をいただきました。
三々参りの始まりと娘の自立
その月から毎月三日、十三日、二十三日は本院にお参りに伺い、帰りに奥之院に立ち寄って圓海先生に話しを聞いて頂くようになりました。そうしていく内に、少しずつ自分が見えてくるようになって、いろんな行事にも参加させて頂くようになりました。
信者さんも良い方ばかりで、信者の吉田さんからは「初めは皆分からんとよ。分からんとがあたり前、一生懸命しよくといいとよ」と力付けて頂きました。
お参りに伺うようになると、仕事も少しずつ増えてきました。またお参りに行き始めて一年くらいの頃、家にこもりがちの娘に「奥之院で見る朝日はとっても奇麗よ、見に行かんね」と誘い、二人で奥之院に朝日を見に行きました。
このことがきっかけで、娘は奥之院にお手伝いに行きたいと言い出したのです。早速貫主様にお願いに伺ったところ、 「以前は何人もそういう方がいらっしゃったんですよ。いいですよ」と快く良いですよと言って頂き、お手伝いに行き始めました。
吉田先生を始め、多くの職員さんにご指導を頂き、娘は明るくなり人間的に成長させて頂き、今では喜んで毎日通っています。
安心して受けた手術と再出発の誓い
平成十五年一月二十八日、一年前から続いた不正出血が色々な治療の甲斐もなく、まったく止まりませんでした。そしてとうとう手術という事になりました。貫主様にお尋ねしたところ「大丈夫。安心して手術を受けてきなさい」とのお言葉でしたので、安心して手術をうける事が出来ました。
病気全快祈願のおかげで手術後の痛みも少なく、痛み止めの注射も、麻酔から覚めた時一回打っただけで、後は眠っていました。貫主様のお言葉通り安心して手術をうける事も出来ましたし、御祈願のお陰で痛みも少なくて済みました。術後の回復も良く、退院することが出来ました。今では前のようにとまではいきませんが、仕事にも復帰して毎日頑張っています。
今思うと、自ら命を絶とうと思い込んでいたあの時、開山大僧正様からのお導きが無ければ、また貫主様のご指導、職員の方々の暖かな思いやり、信者さん方の優しさがなかったら、今の私達家族はこの世に存在していないと思います。
私は蓮華院に来て、大自然に触れて、御仏様の心に触れて、人の優しさに触れて、もう一度生き直してみようと思いました。私はこれまで多くの人に助けられました。今度は私が他の悩める人達を少しでも手助けして、恩返ししていきたいと思います。合掌