2025年04月08日大日乃光第2430号 貫主権大僧正様御親教
御本尊様への信仰生活を元に、子や孫達の意欲を高めよう
信者の皆さん、ようこそお参りでした。
こちらでは今日の気温が十四、五度程と随分暖かくなり、ようやく「春に入った」という明るい兆しが実感できるようになりました。 これは人によっては、まだまだ肌寒いと感じる方もおられるかもしれません。
かたや日本列島は広いですから、まだ雪に覆われている豪雪地域もあれば、つい先頃ようやく鎮火した山林火災でたいへん辛い思いをされている地域もあって、なかなか色んな不幸災難が続くという感じを持っております。
こういう時だからこそ、皆さんとご一緒に、辛い目に遭っている人々の心に寄り添いつつ、明るく元気な立ち居振る舞いや、思い遣りのある言葉遣いで周囲を明るく照らして行きたいと願っております。
子供の一生には大切な言葉
さて、今日はもうすぐ春休みに入り、やがて「暑さ寒さも彼岸まで」のお彼岸を迎えるタイミングでの御法話ですが、本誌が皆さん方のお手元に届く頃は四月中旬頃になりますので、皆さんのお子さんやお孫さん達にとっては新入学・新学年の時期を迎えています。
また新社会人になられた方にとっては、職業人としての新たな人生の門出を迎え、良い意味で緊張感に包まれている事でしょう。 そして日本各地でこの時期、若者達を寿ぐように、桜の花が変わりなく満開を迎えている事でしょう。
この時期が来る頃、新入学の一年生を持つご家族の方に、毎年必ずお伝えしている事があります。 それは進学先の学校や、そこで出会う先生方について、子供たちにぜひ伝えて頂きたい事です。 「あなたがこれから学んでいく〇〇〇学校は輝かしい伝統を持つ学校で、素晴らしい先生方がたくさんおられます。 担任の〇〇先生は素晴らしい先生です。 あなたは運が良くて良かったね!」 子供たちにこのように、元気づけるように語りかけて頂きたいのです。
私自身、最年長の孫が高校受験に合格し、晴れて地元高校の新入生として新たな一歩を踏み出しましたので、その孫に向けて、そのように言葉を掛けてあげました。
子供の学習意欲は傷つきやすい
私の父、先代真如大僧正様は佐賀の東妙寺におられた頃、子供会や少年研修館、また小中学校のPTA会長などを長年務められ、子供達の教育に大変熱心でした。 その経験から、新入学の保護者の皆さん方に、先のように、学校や先生方を大いに褒めて欲しいと常々仰られました。それは、 「教育の効果は、子供達が先生を尊敬する所から始まる」 という信念に基づくものでした。
ともすると、近年は先生より保護者の方の学歴が高かったり、人生経験が豊富であったりする事があるかもしれません。 学校の先生方ばかりではありませんが、何かと社会の指導的立場にある人達の不祥事が報道されている情況もあって、保護者自身が先生方を必ずしも尊敬しなくなってきているのも事実かもしれません。
しかし仮に、子供達の前で学校や先生方に批判的であったり、 「あ~○○先生が担任なの。それは不運だね」 などと言ってしまうと、子供達は途端にやる気をなくし、学習意欲も消え失せてしまうでしょう。
ずいぶん昔の事ですが、父が旧制中学校に入学した時、二つ年上の伯父から「○○科の先生は誰?」と聞かれて父が「□□先生」と答えると、「お前は運が悪いな!あの先生はつまらんぞ!!」と言われ、そのお陰で遂にその先生に習う教科が好きになれず、成績もあまりふるわなくなってしまったそうです。
先生方の気持ちを代弁しよう
この話を先代から聞いてきたので、私自身が母校(築山小学校)のPTA会長を務めていた時には、入学式で保護者の方々に次のような事をお伝えしました。
「子供達には、担任の先生の悪口を決して言わないで下さい。 逆にその先生を全く知らなくても 『○○先生が担任なの!それは良かった。あの先生は良い先生だよ。あなたは運が良いね!!』 と伝えて下さい。
もし万一、何か不都合な事があれば、その不満を担任の先生に直接向けるのではなく、まして子供に言うのでもなく、私達PTAの役員や教頭先生、校長先生に伝えて下さい。 その事がひいてはあなた方の子供達のためにもなります。この事をぜひお約束下さい」 すると式の後、校長先生がわざわざ、 「先程は私達が言えない事を、よく仰って下さいました。本当に有難うございました」 と、しみじみとお礼を伝えに来られました。
プラス志向が「功徳」に繋がる
また、これから新社会人として会社等に勤める人は、その勤め先から多くの事を「して貰おう」などと思わずに、逆に自分が勤め先に「どんな貢献が出来るのか」を、真剣に考えてみて下さい。
よしんば自分の働きが給料に見合っていない、自分は給料以上に働いていると思われるような場合には、それは未来のために良い功徳(陰徳)を積ませて頂いていると考えてみて下さい。 その見えない所に積み上げた功徳は、必ずや将来あなた自身に還って来て、あなたを助けてくれるに違いありません。
良き信仰生活を送る秘訣とは
この新入学の子供達と先生方の関係、または新社会人と勤め先との関係は、信仰の面における御本尊様と信者の関係にも似た所があると言う事が出来ます。 それは皆さん方お一人お一人が、御本尊皇円大菩薩様と、どの様なご縁を結ぶ事が出来るかに掛かっているという事です。
社会生活と同様に、御本尊皇円大菩薩様への全幅の信頼と信仰を、心にしっかりと持ち続ける事で、その方の生活と人生が変わって来るのです。 先代真如大僧正様はよく、 「皇円大菩薩様と恋愛するような気持ちで接しなさい」 と話しておられました。
私自身、求聞持法や八千枚護摩行などの様々な修行の時には、一歩一歩歩む時も、一呼吸一呼吸の中で常に御宝号を唱え、皇円大菩薩様に心を向け続けながら、修行の時間も日常の様々な時にも、四六時中、皇円大菩薩様を思い、皇円大菩薩様の霊波を感じるよう努めて来ました。
そんな中で、時に皇円大菩薩様の気配や温もりさえ感じるような時がありました。そのような時には何とも言えないような安らぎを感じ、大いなるエネルギーを頂いている事を実感しておりました。 皆さん方も少しでも多く、皇円大菩薩様の御宝号をお唱えしてみて下さい。 そうすると、必ずや偉大なお恵みを実感する事が出来るはずであります。
それと同じような気持ちで、子供が親を大切に思い、夫婦が互いにいたわり合い慈しみ合い、生徒が先生を尊敬し、新入社員が上司を尊重して行けば、全てにおいて円満な生活が約束される事でしょう。 子供達の学習意欲が高まり、成果が上がり、新社会人達も仕事に慣れ、ひいては成果も上がり、満ち足りた豊かな社会生活や学校生活が実現するに違いありません。
次世代に対し、範たるべし!
一方で、私達の方も子供や孫達から尊敬に値する人格であるように努めて行かなければなりません。 子や孫達の前では、いくつかの生活上の原理原則を率先して示し続ける事が大切です。 具体的には、私の場合は孫達とその日初めて会う時には、必ず丁寧に挨拶する事を心掛けています。孫達も丁寧にお辞儀をして挨拶を返してくれます。 そして別れる時には「さようなら」「お元気で」と、必ずこちらから別れの挨拶をするように心掛けています。
近年は、親子間や孫と祖父母の関係が友達同士のように打ち解けているのが、あたかも理想的な関係であるような意識が広まっているようです。 それはそれで良い所があるかもしれませんが、それだけではなく、私達祖父母や親達は、子供や孫達にとって人生の良き先達として、指針や規範を示す存在である事が、さらに大切な事なのです。
私の場合は父方と母方の二人の祖父を、とても尊敬しておりました。 父方の祖父、つまり開山上人様は、もの心ついた頃には巌(いわお)のように大きく、とても厳しい方といった印象を強く受けて育って来ました。 この事から「おじい様(開山上人様)の仰る事には絶対に逆らえない」という、厳然たるものを感じておりました。 この絶対的な祖父に導かれて、私は僧侶の世界に入って行く事が出来たのでした。
そこまで厳格な関係に行かなくても、子や孫達から少しでも敬意を受けるような生き方を、私達は後ろ姿で示すべきだと常々思っています。 また職場でも、後輩達に何らかの示唆や、良き影響力を与えられるような先輩でありたいものです。 そして人は子や孫達、後輩や生徒達から少しでも尊敬されるような人物でありたいと願って努力する事が、巡り巡って自分自身を向上させる大きなきっかけの一つにもなるのです。
新年度に当たり、新入学の子供達や新社会人を受け容れる側も、相手から「尊敬されるに足る人格者たるべし」という心構えをしっかりと持ち続けて行きたいものです。 大乗佛教には「上求菩提 下化衆生」という有名な言葉があります。 この言葉は自分自身が悟りを求めて努力を続ける一方で、苦しんでいる多くの人達を救済して行くという、菩薩様の基本的な生きる姿勢を表しています。
この言葉に示された菩薩様の姿勢に一歩でも近づくよう努力する事が、子や孫たちに対し、人生の良き先達、目標となるための一つの大きな指針となるのです。 若者の人生にとって大切なこの時期が、清新で豊かな良きご縁結びとなり、充実した日々を送られますように、心より念じております。 合掌

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