【第17回九州内観懇話会】
今回は、2月23日に大分市で開催された第17回九州内観懇話会の講演内容を要約して皆様にお伝えいたします。約60名の出席で、活発な質問や内観ミニ体験がありました。
(A)「内観(療法)とは」 (内観研修所協会会長 池上吉彦)
サンスクリットで「恩」のもともとの意味は、「お世話になった事を思い出す」という意味だそうです。米寿の祝いをしたので、やっと母にお返しした事ができたと思ったら、内観創始者吉本先生の奥様に「お母さんが長生きしてくれたお陰やなー」と言われた。
人間には我執がある。これは、悩みや心の病となってあらわれたりもする。内観は我執を具体化して、認識しやすくしてくれます。「内観は、おれ我、おれ我の我を削っていく。」のです。また、内観は一生懸命やらないと効果がないし、すべては自分の責任であるということに気付くと問題は解決に向かいます。
(B)「息子への内観」 (53才男性)
本人の自立心を育てられなかったことや、弱さや、イジメや、私が仕事や組合で忙しく、子供に少しも目をむけなかったことが、原因である。児童相談所の先生に「お父さんの生活をもう一度考え直して欲しいという、子供さんからの信号かもしれませんね。」と言われたが、最初その意味がわからなかった。
「ゲームをするな」というのを一ヶ月間言わないで見ましょうと、児童相談所の先生から提案され、やっとの思いで実行したら、それからは、言うこともなくなった。
また、息子にも私と同じ職業をという親の希望を、子供に押しつけていたように思う。今、息子は農業高校から専門学校に進み、土木造園関係を勉強している。夏休みには子供達の世話もできるようになり、知らない人は息子が昔不登校だったことを聞くと、びっくりするそうである。
不登校という事実を受け入れることが大事なのだが、それがなかなか難しい。「不登校はひとつの選択肢であり、不登校は未来を開く。」それぐらいの親のゆとりある大らかな気持が、問題解決には必要である。
(C)「企業文化と内観」 (大分トヨタ自動車株式会社 生野彰男社長)
社長になってから、「人間の考え方を一新するいい方法はないか」といつも探していた。知人から「内観」を聞き、「百聞は一見にしかず」と、先ず自分で体験した。平成3年4月に導入を決断し、上から順番に内観を受けてもらった。
私は内観から帰ってきたら、社員に「すばらしくいい顔になったなー」ということにしているが、次のような効果がでてきたと思う。
明るく活気がでてきた。心にゆとりができ、素直に人の話が聞けるようになった。自然体で行動できるようになった。コミュニケーションがスムーズになり、まとまりがよくなった。人から好かれるようになった。
企業は人である。会社は人間の修行道場であり、人材育成は社長の責任だと思っている。顧客の満足(Customer'sSatisfaction)ということがよく言われるが、当社では、すべてのベースに内観体験があるから、それが高いレベルで可能になったと考えている。お陰様で、大分県内で、当社の人気度や元気度は上位にランクされている。
「上司が変われば部下が変わり、部下が変われば企業が変わる。企業が変われば社会が変わる。」
(D)「自分の体との内観的な付き合い方」 (さかき診療所 高口憲章)
人間には、体と心の免疫機能がある。心の方の心理的防衛メカニズムは、他罰性と言われ、他人のせいにして自分を守ろうとすることが多い。
若い医者やマスコミは、減点主義で体をみる傾向があるので、いたずらに不安感をあおりすぎるきらいがある。
例えば、よくコレステロールは悪玉のように言われるが、コレステロールは細胞などの材料にもなる大事な栄養素であり、これが不足すると人間は生きられない。低すぎるのは、栄養失調やガン末期の場合であり、逆に高すぎると脳血栓や心筋梗塞になりやすい。コレステロールが適度にあった方が感染症やガンに対しては有利なのであり、両面を患者に話したほうがよい。
得点主義の見方はこうである。年をとると、特に女性はひざの関節がすりへり、変形や痛みを伴うことが多い。この時に、変形しているから、異常だと言うだけだと、患者は不安になり、自分の体を憎むこともある。それより、「あなたの膝はよく頑張ってくれていますねー。ひざにお礼を言った方がいいくらいですよ。」というと、自分の体に対する感謝の念が起こり、治療にいい影響を与えることが多い。
また、自分の体は親からもらった形見とも考えられるから、自然と親や祖先にたいする感謝につながり、また、自分の体に対する慈(いつく)しみもでてくる。
だから、私はお風呂で足指の1本1本をもみながらお礼を言ったり、気持ちよくいいウンコがでたら、喜んで体のその部分に感謝しています。体に対する内観を一ヶ月も続けると、痛みがなくなったケースもあります。
健康診断や予防チェックは必要ですが、自分の体や健康に対する余計な不安感はもたず、あるていど自分の体に任せるようにする。そして、得点主義の見方をし、体に感謝することも大事ではないかと思います。