一般に寺院の構えでは、南に位置する大きな門が正門であり、「なんだいもん南大門」と申します。そして四天王門におまつ祀りされる四天王は「じこくてん持国天」「ぞうじょうてん増長天」「こうもくてん広目天」「たもんてん多聞天」と言い、仏法を守護し、四方を守護するインド伝来の神であります。
江戸時代にへんさん編纂された『ひごこくし肥後国史』によれば、今から約800年前の鎌倉時代、肥後の国玉名郡築地村(現在の熊本県玉名市築地)に、「たかはらやま高原山蓮華院じょうこうじ浄光寺」がこんりゅう建立されました。この寺には「南大門の扉を朝夕開閉する音、きちじざん吉次山(約15q離れた金峰山)に響きし」と伝えられるほどの壮大な山門がありました。
この事は「玉名市築地あざ字南大門」として、江戸時代の要路であるみいけおうかん三池往還(熊本→三池)に隣接する字名に残されており、その他にも寺院の名残りとして「れんげ蓮華」「たかはら高原」「じぞうもと地蔵元」「じんない陣内」などの地名が地元築地に残されています。おうじ往時、いかに大きな寺院がこの地にあったかを偲ぶ事が出来ます。
しかしこの大寺院も戦国時代に地方豪族の大野氏としょうだい小岱氏との間で続いた戦乱により、約400年前に焼失してしまいました。
蓮華院誕生寺は、先の蓮華院浄光寺のみょうせき名跡を継承して昭和4年以来80年の歳月を費やしながら、本堂、こうしょう洪鐘(梵鐘)、くり庫裡(僧坊)、五重塔(純木造)の再建と、着々とかつての蓮華院浄光寺のがらん伽藍を再興し、今ここに集大成として、平成23年春のらっけい落慶を目途に南大門の再建を進めています。
このたび再建される南大門は、高さ13m、横幅20m、奥行き10mに達する総木造のいりもやづくり入母屋造の二重門で、一層部分の四隅に四天王像がおまつ祀りされます。この四天王像は京都の大仏師、今村つくも九十九先生が心血を注ぎ製作中で、総高約4m程もあり、現在国宝・重文に指定されている四天王像と比較しても日本最大の四天王像となります。
去る1月10日には横綱白鵬関をモデルにこうもくてん広目天像の原型造りに取りかかり、そして来たる2月5日には横綱朝青龍関をモデルに四体目のたもんてん多聞天の原型の製作にかかります。これは両横綱をそのまま仏像に表すのではなく、どっしりと落ち着いた中にも静かな威厳をただよわせた白鵬関の体全体から発散している気を、広目天像の参考にするという事になります。朝青龍関の激しい中にも強い意志と包容力のあるその精神性を、多聞天像に込めるという事なのです。
また門自体の再建では、昔ながらの社寺建築の技術はもとより、使用する釘も地元で集めた砂鉄を用いて、古代の製鉄技術である「たたら製鉄」で精製した「たまはがね玉鋼」を造り、地元の刀匠松永源六郎清継師がわくぎ和釘と仏具(四天王が持つ刀剣など)を製作しております。
この南大門の再建にたずさわる宮大工、仏師、そして刀匠など全ての方々が、数百年後の国宝を現に造りつつあるという気概を持って、「現代の国宝」をけんげん顕現すべく努力しているところであります。
(宗教法人)蓮華院誕生寺
貫主:川原英照
副住職・広報:川原光祐
〒865-0065 熊本県玉名市築地2288
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